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ウンブリア州トーディ(Todi):世界一住みやすい天空の街の歩き方

1. 世界一住みやすい街、トーディ

ウンブリア州ペルージャ県に位置するコムーネ・トーディ(Todi)は、人口
16,900 人、人口密度75.8 人/㎢(2012年)、標高400mの城塞都市。

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1990年代にアメリカ・ケンタッキー大学の研究チームが、都市機能と環境への優しさ、外観の美しさを基準に、「環境の整った町(città sostenibile)」としてトーディの町を選定した。



その標高と地形のために、晴れ、雨、霧、曇りと天気はころころ変わるが、運が良いと、大きな虹も見ることができる。

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筆者は、これまでに史料調査のために、2018年10月、2019年5月、2020年10月と三回トーディに訪れたが、通り雨の後、何度かこの虹を見ることができた。

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今回のnoteでは、空気が美しい天空の都市トーディのアクセス方法と見どころを紹介したい。


2. ちょっと難しいアクセス方法

最初に、アクセス方法を紹介したいが、このトーディには直接トレニタリア(trenitalia)やイータロー(italo)といった鉄道が通っていないために、ちょっとアクセスするのが難しい。


2-1. ペルージャからアクセスする方法

まずウンブリア州の州都ペルージャ(Perugia)からのアクセス方法。

2020年10月にトーディに訪問した時には、ミラノ→ペルージャ→トーディというルートを取った。

というのものちに言及するトーディ・ローマ間を結ぶFlixBusが減便されており、ローマからのアクセスが難しかったのと、ミラノ・ローマ間を結ぶ鉄道料金が値上がりしていたからである。

(2020年10月に検索したところ1ヶ月以上先の片道切符(ミラノ・ローマ)でさえ60-70ユーロという値段であった)

ミラノからペルージャへのルートは、時間とお金の節約を兼ねて、FlixBusを使用した(写真はまた別の路線のバス)。

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ミラノ市内にはいくつかFlixBusなど長距離バスの発着地点があるが、この時筆者が利用したのはランプニャーノ(Lampugnano)のバスターミナル。


ちょっと中心部からは離れているが、メトロやトラムでアクセス可能であり、ここからイタリアの各地方にバスが出ている。

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2020年10月に乗車した時、ミラノ・ペルージャ間のバスはとても空いており乗車率は20パーセントもなかったように記憶している。

夜22時半にミラノを経ち、5時過ぎにはペルージャのバスターミナルに到着した。


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ペルージャのバスターミナルにも一応待合室はあったので助かったが、チケット売り場は朝6時から。

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ペルージャ・トーディ間は、片道1時間半の直通バスが毎日運行している。

バスの名前は、バス・イタリア・ノルド(Bus Italia Nord)が運行するエクストラウルバーノ(Extraurubano)E012便。

朝から夜まで、1日10数本、トーディとペルージャをつなぐルートで運行しており、ペルージャのバスターミナルや街のタバッキ(Tabacchi)にて切符(片道6.3ユーロ)を購入することができる。

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朝6時半にペルージャを出発するバスに乗り、いざトーディへ。

1時間半くらい仮眠を取りつつ、ゆったりバスの中で過ごしていると、だんだん空も明るくなってきた。

ちなみにこのような強行スケジュールを取ったのは、移動のために前泊する手間とお金を省き、到着後、朝から行動したかったからであるが、やはり体力はかなり消耗した。

終点は、トーディのコンソラツィオーネ広場(Piazza Consolazione)。

この広場から、トーディとウンブリア各都市をつなぐバスが出ている。

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この広場から急勾配の坂を登りつつ、市街地に歩いて行くこともできるが、この広場と山の上の市街地を結ぶバスも運行中である。

運行時間は5分程度。

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山道もスイスイ走れる小型バスであり、朝に利用した時には、山の上の学校に通学する10代の学生たちが数多く乗車していた。


コンソラツィオーネ広場(Piazza Consolazione)

バスイタリア・エクストラウルバーニ・ウンブリア(extraurbani umbria)の公式サイト:fsbusitalia.it


2-2. ローマからアクセスする方法

首都ローマからは、Flix Busとバス・イタリア・ノルドを乗り継ぐ方法が一番安価で便利なようである。

筆者は、2018年と2019年の訪問の際に、ローマ経由でトーディに入った。

その時の情報をもとにローマ経由のアクセス方法を書いていくが、2020年秋現在、一部バスが減便されているようである。

そのためもしローマ経由で向かう際には、FlixBusやバス・イタリアの最新の情報を参照されたい。

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トーディとローマは結ぶFlixBusは、ローマのティブルティーナ駅(Tiburtina)そばのバスターミナルから出ている。

ローマの中心にあるテルミニ駅(Termini)と間違えないように注意したい。

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1日2本しかないが、バスの運賃もかなり安価なことが分かる(2019年4月時点の情報)。


しかしながら、このトーディ・ピアン・ディ・ポルト(Todi Pian di Porto)という停留所は、名前にトーディ(Todi)と入っているが山の上にある市街地ではない。

ちなみに19:15ローマ発/ 20:55トーディ・ピアン・ディ・ポルト着のバスを利用しても、20:55以降は、トーディの市街地(centro storico)に行くバス・イタリアは運行していない。

誰か迎えに来てくれる人がいるならば良いが、ローマからバスを乗り継いで行く場合は、12:55発のFlixBusに乗った方が安全である。

またピアン・ディ・ポルト(Pian di Porto)は、バス停というには寂しい場所であり、本当にこんなところにバスは来るのかと不安になるようなところでFlixBusは停まり、降ろされる。

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休日は本数が少なくなるからさらに注意が必要だが、この寂しいピアン・ディ・ポルト(Pian di Porto)で待っていれば、バス・イタリアが来る。

運賃は車内で切符を買うと2€(事前に買うと1.5€)。

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もう一つ注意したいのは、Flix Busの進む方向と、逆の方向から、市街地に入るバスが来ることである。

車線の方向に、注意してバスを待とう。


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公共交通機関を利用したアクセス方法を書いたが、車を利用できる人はモッっと簡単にアクセスすることができるであろう。

もっとも、地元の人も、車の利用率が高い。

「環境の整った街」なんて、車持って初めて成立する評価じゃないかと思うかもしれないが、なかなか来ることができない石造りの城塞都市を歩くのはやはり楽しい。

最初にアクセス方法で長く書いてしまったが、次に、見所をいくつか紹介する。

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3. トーディ大聖堂(Concattedrale della Santissima Annunziata)とポポロ広場(Piazza del Popolo)

3-1. トーディ大聖堂(Concattedrale della Santissima Annunziata)

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まず、トーディの中心に建つ聖堂(Duomo; Cathedral)。

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その歴史は古く、1000年頃に建てられ、一度破壊されている。

今の聖堂は、14世紀に再建され、何度改築されたものである。画像16

中のフレスコ画は、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画に影響されたローマの画家フェッラウ・フェンツォーニ(Ferrau Fenzoni; 1562-1645)によるもの。

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また正面一番奥の至聖所に掲げられたキリストのはりつけ像は、13世紀半ばにまで遡るもの。

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ジャンニコラ・ディ・パオロ(1460-1544)作、『死せるキリスト』(Cristo morto tra Nicodemo e Giuseppe d'Arimatea)と『聖母子』(Madonna col Bambino tra i Santi Caterina d'Alessandria e Rocco)。

1460年ペルージャ生まれのジャンニコラ作のこちらの作品は、1925年に修復された後、ベネディクト会修道士である聖パンクラツィオ・ディ・コッレペペ(S. Pancrazio di Collepepe)によって、トーディに移された。

保存状態がかなり良いと言える。

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その他、カラフルなステンドグラス、ゴシック様式の扉、フレスコ画など、少しずつ手を加えられながらも今に至るまでその姿をとどめている。

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筆者が初めてこの大聖堂を訪れた2018年秋の夕刻は、日は暮れ始めている上に雨が降っており、聖堂の中が薄暗かったのでかなり怖かったのを記憶している。

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トーディ大聖堂(Concattedrale della Santissima Annunziata)

住所:Piazza del Popolo, 1, 06059 Todi, Perugia, Italy

開館時間:9:30-17:30(月曜から金曜)、9:30-18:30(土曜日曜)

公式ホームページ:chiesatodi.it


3-2. ポポロ広場(Piazza del Popolo)

この聖堂が建つポポロ広場(Piazza del Popolo)は、中世以降の政治の中心地あった。

ドゥオーモからのぞむ広場。

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そこには大聖堂を奥にして、市庁舎が並ぶ。

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ちなみにこちらは現在も観光案内所や美術館、そしてコムーネの役場として機能している。

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日本に例えるならば、14-15世紀のお城がそのまま市役所として使われているといった状況なのである。



ポポロ広場(Piazza del Popolo)

公式ホームページ:corsodirezionetodi.it


4. ガリバルディ広場(Piazza Garibaldi)からのぞむ虹

市庁舎の脇、ガリバルディ広場(Piazza Garibaldi)には、イタリア建国の父ガリバルディの像があり、そこからは、ウンブリアの美しい景色が広がる。

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運が良ければ冒頭でも紹介した虹を見ることができる。


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(2019年春の風景)


虹がなくとも、緑豊かなウンブリアを遠くまで見渡すことができ、絶景である。


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(2020年秋の風景)

また、この広場からマッツィーニ通り(Via Mazzini)に抜けると、ホテルや劇場がある。

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イベント以外は入れないが、立派な小劇場である。


ガリバルディ広場(Piazza Garibaldi)

住所:Piazza Giuseppe Garibaldi, 06059 Todi, Perugia, Italy



5. サン・フォルトゥナート教会(Chiesa di San Fortunato)

さらに歩いて行くとサン・フォルトゥナート教会(Chiesa di San Fortunato)が見えてくる。

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この白くてシンプルな教会の起源は、12世紀末にも遡る。

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2019年5月の時点では、中で大々的な改修工事が行われていた。

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天井はとても高く、フレスコ画が並ぶ。

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ドゥオーモのような華やかなステンドグラスはないものの、細部までこだわった教会である。

ちなみにこの教会のすぐそばに筆者がいつも調査の際にお世話になる図書館と文書館がある。

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図書館に続く道では、猫を見かけることが多く、そのうちの一匹が普通に図書館の入り口で入ったり出たりしていた。

餌も定期的にもらっているらしく、愛されている野良猫たちである。



サン・フォルトゥナート教会(Chiesa di San Fortunato)

住所:Piazza Umberto I, 6, 06059 Todi, Perugia, Italy


開館時間:10:00-13:00/ 15:00-17:00(火曜閉館)


6. ワインやプロシュートなどを扱うお土産屋さん

こちらは、名産品の陶器やワインなどを扱う老舗のエノテカ兼お土産屋であるジョヴェナーリ・プロドッティ・ティピチ・ウンブリ(Giovenali Prodotti Tipici Umbri)。

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よく見ると創業1920年と書かれており、かなりの老舗である。

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寡黙なおじいさんが経営しており、生ハムを好きな量だけ切ってくれる。


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エノテカで購入した生ハムを使い、宿泊先のキッチンでサラダにして食べたがとてもしっかりした肉質で美味しかった(大麦のサラダがパックのままなのは見逃して欲しい)。

ちなみに、トーディの中心部では、大型スーパーが徒歩圏内になく、行くには山を下らなければならないい。

一応、市街地には、にコナード(Conado;イタリアの大手スーパーの一つ)の商品を扱った小さな食料品店があり、そこで水や野菜、肉、チーズなどを買うことができる。

ここだと坂道を降りなくても食料品を買うことができるが、少し割高である。


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またカラフルな陶器を扱うお店は、至る所にあるので、持ち運びに注意して、お気に入りの一点を選びたい。

その他、今回写真はないが、ポポロ広場にもプリンチピ・フロロ(Principi Floro)というエノテカが一軒があり、ここのプロシュートも脂のり方がちょうどよく美味しかったのを記憶しているのでお勧めである。



ジョヴェナーリ・プロドッティ・ティピチ・ウンブリ(Giovenali Prodotti Tipici Umbri)

住所:Corso Camillo Benso Conte di Cavour, 06059 Todi, Perugia, Italy





7. トーディでお勧めなカフェ

トーディにはいくつかレストランはあるのだが、過去の滞在で筆者は、エノテカでプロシュートを買い、宿泊先のキッチンで自炊することがほとんどだっため、レストランには一度も行っていない。

量り売りしてもらえるプロシュートがあまりにも美味しかったからという言い訳をしつつ、ここではトーディのカフェとランチスポットを紹介したい。


7-1. グラン・カフェ・トーディ(Gran Caffè Todi)

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ポポロ広場の前のクラシカルなバール、グラン・カフェ・トーディ(Gran Caffè Todi)。

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こちらは朝から空いている上にフリーWi-Fiが使えるので、文書館に行く前にちょっとパソコン作業をしたい時に30分ほどカプチーノを飲みつつ利用することがよくあった。

またビスコッティなどのも充実しているので、おやつタイムにも最適である。


グラン・カフェ・トーディ(Gran Caffè Todi)

住所:Piazza del Popolo, 47, 06059 Todi, Perugia, Italy

公式Facebook:@grancaffetodi



7-2. カフェ・リストランテ・デッラ ・コンソラツィオーネ(Caffe' Ristorante della Consolazione)

こちらは、コムーネ広場や大聖堂からは坂道を降らなければならないが、ペルージャやローマからのバスが発着するバス停コンソラツィオーネの目の前にあるカフェレストランである。

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朝の6時とかなり早い時間から空いているので、早朝にバスが到着した場合でもここで待つことができる。

また街中でも起伏が激しいトーディは、Google マップに出てくる徒歩での所要時間よりも時間がかかったりするので、ペルージャ・ローマ行きのバスに乗るには、早めに待っているのがお勧めである。

そんな時も、こちらのカフェはとても便利なのであった。


カフェ・リストランテ・デッラ ・コンソラツィオーネ(Caffe' Ristorante della Consolazione)

住所:Viale Abdon Menecali, 2, 06059 Todi, Italy

営業時間:6:00-24:00(月曜から金曜)、6:00-2:00 am(金曜)、6:00-1:00(土曜)

公式ホームページ:autenticotodi.com



7-3. ウン・バッチョ・ア・トーディ(Un Bacio a Todi)

こちらはジェラートが美味しいお菓子屋さん。

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大聖堂の目の前という抜群の立地である。

種類豊富なジェラートのほか、クッキーやパスティチーノなども各種揃っている。

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筆者が食べたのは、ジェラートではなく、フローズンヨーグルト。

トッピングも自由にできるということなので、ピスタチオフレークとホワイトチョコソースをかけてもらったが、フローズンヨーグルトの冷たさでチョコがパリパリに固まりとても食感も良い仕上がりとなった。

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ウン・バッチョ・ア・トーディ(Un Bacio a Todi)

住所:Piazza del Popolo, 14, 06059 Todi, Perugia, Italy


営業時間:7:30-1:00am

公式ホームページ:unbacioatodi.it



7-4. ル・ルワ・ドゥ・ラ・クレープ(Le Roi De La Crepe)

唐突にフランス語であるが、クレープの王様という意味のクレープ屋さんである。


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甘いクレープもあるが、どちらかというとプロシュートやチーズ、チキン、牛肉、野菜などをたっぷりした食事系クレープが充実している。

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一つ6-8ユーロとわりと高価であるが、このように片手で持ち切れないほどたっぷりの具材を入れてくれるので食べ応えがある。

お店のおじさんは、いつも優しく、おじさんがクレープを焼いている時にカメラを向けると、ちょっとしたパフォーマンスもしてくれる。

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こちらはお店ではなく宿泊先のキッチンに持ち帰って食べている様子。

たまたま予約した宿泊先には、このような素敵なウンブリアのお皿が揃っており、その色鮮やかさに思わず食器が欲しくなってしまったほどであった。

このようにトーディ滞在中は、お昼は何度かこのクレープ屋さんに通い、夜はエノテカで買ったもので済ませるということが多かった気がする。


ル・ルワ・ドゥ・ラ・クレープ(Le Roi De La Crepe)

住所:Corso Camillo Benso Conte di Cavour, 37, 06059 Todi, Perugia, Italy

営業時間:11:30-1:00 am




また2019年4月に訪れた時には、ここで紹介したお店は、軒並みカードが使えなかったので、合わせて注意したい(レストランでは使えるかもしれないが)。

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この街は、他のイタリアの都市に比べて、簡単に行けるわけではない。

しかし行ってみることで、住みやすい街の秘密や現地の人の日常を体感することができるであろう。

とにかく坂が多い街であるが、ふとうっとりするような景色を目に出会うこともある。

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石造りのごつごつとした建築物にも歴史を感じる。

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(ウンブリアで活躍した傭兵隊長の名前がついたバルトロメオ・ダルヴィアーノ広場(Piazza Bartolomeo D'Alviano)の噴水)


まるで絵画のようなその景色に、ついついシャッターを切ってしまう。

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時々、何か胸に迫ってくるものがある、物寂しい風景にも出会うことがある。

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この都市の細部を一つ一つ見ていると、その歴史の厚みに背筋がぞくぞくする。

何回行っても、ミラノへ帰ってきた時にはほっとしてしまう、それくらいハードな街でもあるのだが、またしばらくすると再びその風景を見たくなる街でもあるのだ。


(写真・文責:増永菜生 @nao_masunaga





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