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バール・ルーチェ(Bar Luce):ウェス・アンダーソンが手がける、ミラノのプラダ財団美術館併設カフェ


ミラノのプラダ財団美術館(Fondazione Prada)の敷地内に映画『グランド・ブダペスト・ホテル』(The Grand Budapest Hotel; 2014)と『犬ヶ島』(Isle of dog;2018)の監督ウェス・アンダーソンがデザインしたカフェ、バール・ルーチェ(Bar Luce)がある。

プラダ財団美術館に入ってすぐ、右手にある建物が、ブックショップとカフェである。


こちらは、プラダ財団美術館敷地内の見取り図。

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カフェをデザインしたウェス・アンダーソンは次のようにコメントを残している:


「この空間に観念的な観点はないんだ。


現実の営みとして捉えるために、会話、読書、食事、コーヒーのために快適な場を設ける必要があった。


ここはそれをするのに最高の場だと思っているけど、映画を書くのにも相応しい場だとも考えているよ。


映画のようではなくいつも過ごしている午後のような一つの場としてこのバールを造ろうとしたんだ。」

そう語るウェス・アンダーソンは、自身のミラノに対する愛をこのバールに詰め込んでいる理由がいくつもある。

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まず一つ目の理由は、ウェス・アンダーソンが、このカフェの内装をミラノ中心地にあるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガレリアをモチーフに作っているということである。

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よく見るとガレリアのアーチや内壁のモチーフが、店内の至る所に見られ、そこはまるでミニチュア版ガレリアである。

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次に2つ目の理由は、店内のインテリアは、イタリアの1950年代から1960年代のポップカルチャー美学からインスピレーションを得ているとのことである。


また第二次世界大戦後のイタリアで始まったネオリアリズムの傑作として名高いヴィットリオ・デ・シーカ作『ミラノの奇跡』(Miracolo a Milano;1951)とヴィスコンティ作『若者のすべて』(Rocco e i suoi fratelli;1960)も、この内装に大きな影響を与えているという。


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1943年にムッソリーニが失脚し、敗戦国となったイタリアであったが、1950年代に入ると、経済的・文化的に奇跡の大復興を遂げた。


このような輝かしくも涙ぐましいイタリアの歴史の歩みの中で、イタリアの文化は息を吹き返し、映画スターや監督たちは生き生きと活動を始めた。


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設置されているポップなジュークボックスなど。

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カウンター席での値段は、エスプレッソ1杯1€と、市内のバールでの値段とあまり変わらない値段である。
(テーブル席では15%のサービス料が加算)

店内の窓際がテーブル席、

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店内中央のソファー席(座れたらラッキー)よりカウンター側が、カウンター席の値段設定となっている。

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またカウンター席には充電スポットあり。


館内鑑賞中に消費したバッテリーの充電にうってつけである。
(館内一部撮影禁止)

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カフェメニューも絵本のような装丁。

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食器や砂糖のパッケージも映画の世界観のような可愛さ。

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カフェ・コパンナは1.5€。

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またソイカプチーノは1.7€。

プラダの傘下に入ったマルケージ(Marchesi 1824)が提供しているというケーキは『グランド・ブダペスト・ホテル』に出てくるお菓子のような色合い。

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ジェラートやアイスも。

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甘いものばかりではなく、注文を受けてから作ってくれるパニーニ(野菜のパニーニ6.5€)。

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トイレもお洒落。

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確かに、限りなく細部にこだわったバールである。


しかしながらウェス・アンダーソンが述べる通り、ミラノでの普段の生活の中で時を過ごすことができるバールでもある。


プラダ財団美術館の入場料を払わず、バールだけの利用も可能。

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まずはコーヒー一杯から飲みに訪れたいバールでもある。


なお、2019年9月20日から2020年1月13日までの期間限定でプラダ財団美術館では、ウェスアンダーソンがキュレーションした特別展「トガリネズミのミイラの棺と宝物たち」( ”Wes Anderson e Juman Malouf
Il sarcofago di Spitzmaus e altri tesori”
) が開催された。

この特別展のレポートを記したnoteはこちら:

《前編》 プラダ財団美術館特別展、ウェス・アンダーソンの世界観あふれる驚異の部屋: Wes Anderson e Juman Malouf/ Il sarcofago di Spitzmaus e altri tesori(2019年9月25日付note)

《後編》プラダ財団美術館特別展、ウェス・アンダーソンの世界観あふれる驚異の部屋: Wes Anderson e Juman Malouf/ Il sarcofago di Spitzmaus e altri tesori(2019年9月28日付note)

とことんプラダ財団美術館と縁の深いウェス・アンダーソン。

これからもプラダ財団とウェス・アンダーソンのコラボレーションに注目である。

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(※バール・ルーチェについての記事は、2019年3月に一度こちらのnoteで書いたが、文章を大幅に修正・書き足した上、今回、2020年9月に改めてポストした)


Bar Luce (バール ルーチェ)

住所: Largo Isarco 2, 20139, Milano, Italy

営業時間:9:00-20:00(月・水・木)、9:00-22:00(金・土・日)、火曜定休

公式HP:fondazioneprada.org

アクセス:

・Centrale FS(中央駅)から:地下鉄M3(黄色線)Lodi (ローディ) T. I. B. B.駅より徒歩10分
・Duomo(ドゥオーモ)から:ドゥオーモ裏側Piazza Fontana(ピアッツァ・フォンターナ)発着トラム24番から10駅目Via Lorenzini (ヴィア・ロレンツィーニ)停留所より徒歩5分

(文責・写真:増永菜生 @nao_masunaga)




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