アンティコ・カフェ・グレコ(Antico Caffè Greco):文豪たちの憩いの場、ローマ最古のカフェ
映画『ローマの休日』の中で、アン王女がスペイン階段にてジェラートを食べる定番シーンがある。
そのスペイン階段の近くには、アンティコ・カフェ・グレコ(Antico Caffè Greco)というローマ最古のカフェ・バールがある。
ちなみにイタリア最古かつ世界最古のカフェは、ヴェネツィアにあるカフェ・フローリアン (Caffè Florian)である。
カフェ・グレコの創業は1760年と、フランス革命のおよそ30年前である。
因みに、ミラノ最古のカフェ・コヴァ(Cova)は、1817年創業であるため、カフェ・グレコは、コヴァよりも半世紀以上前から営業していることになる。
まず店内に入ると、左手にはシックな赤の内装のショーケース、右手にはコーヒーを楽しめるカウンターがある。
オリジナルグッズも並んでいる。
イタリアの通常のバールと同様、カウンター席は、リーズナブルにコーヒーを楽しむことができるが、バロック調の凝った装飾が施されたテーブル席も魅力的である。
カフェ・グレコという店名は、ギリシャにルーツを持つオーナーからその名前が付けられたという。
カウンターで飲むエスプレッソは、一口チョコレートは付いているが相場より高めの2ユーロ。
とても重厚感のあるカウンターである。
このローマの中心地にあるカフェには、稀代の色男で知られるカサノヴァ(Giacomo Casanova;1725-98)や詩人ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe;1749-1832)が足繁く通ったと伝えられている。
その他の常連客として、バイロン(Lord Byron;1788-1824)、キーツ(John Keats;1795-1821)、メンデルスゾーン(Mendelssohn;1809-1847)、ディケンズ(Charles John Huffam Dickens;1812-1870)、ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner;1813-83)、マーク・トウェイン(Mark Twain;1835-1910)、オーソン・ウェルズ(Orson Welles;1915-85)などといった文化人や芸術家などが挙げられる。
店内には、クラシック音楽が緩やかに流れ、絵画や彫刻など、見応えのある作品もディスプレイされており、まるで美術館の展示室のようである。
なお1953年にこれらの美術品は、イタリア政府によって保護されることが決定された。
ところが2017年、カフェ・グレコの店舗の当初の賃貸契約の期間が切れ、貸し手の方によって賃料の値上げが要求されたという。
カフェ・グレコのオーナーは、店の存続のために、値上げに応じる意向を見せたものの、そのあまりの額の値上げに憤慨しているとも伝えられている。
2021年現在、イタリアの小売業や飲食店も大打撃を受けているが、この老舗カフェが存続できるのか、その後の成り行きは見守るより他ない。
少し暗い話になってしまった。
確かに普通のカフェより、カフェ・グレコは割高かもしれないが、世界に名を残したアーティストや文化人たちもコーヒーを楽しんだというお店に来れた嬉しさの方が大きい。
ロンドンのコーヒーハウスは、17世紀半ばにはあったとのことだが、このようにコーヒーを飲める場所は、芸術家たちの社交場となり、様々な議論が交わされたに違いない。
気軽に海外旅行に行ける日がいつ戻ってくるか、2021年の時点では先行き不透明であるが、このような個人営業の老舗カフェには頑張って欲しい。
次にローマに訪れた時には、また歴史を感じるこのお店の姿を見ることができることを願うばかりである。
アンティコ・カフェ・グレコ(Antico Caffè Greco)
住所:Via dei Condotti 86, 00187, Roma, Italy
営業時間:9:00-21:00
公式ホームページ:http://anticocaffegreco.eu/
参考:
・"The most important people have been here: Rome's oldest cafe fears closure", The Guardian(2019年10月18日付記事)
・"Antico Caffe Greco- Rome’s Oldest and Most Enchanting Coffee Bar", Coffee Sphere(2018年8月19日付記事)
(文責・写真:増永菜生 @nao_masunaga)
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