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パスティリエ・レオーネ(Pastiglie Leone):レジ脇で見かけるお洒落なアレは何?イタリア発の歴史あるキャンディー

1. あのレジ脇で見かけるお菓子は何?レオーネの歴史

イタリアに来たことがある方は、カフェやバールのレジ脇に並んでおり、「パスティリエ・レオーネ」(Pastiglia Leone)と書かれた小さい箱のキャンディーを見かけたことはないであろうか。

やけに種類豊富でお洒落なパッケージ、でもそれが何か分からず手が出せない。

筆者もその一人であったが、ある日のこと一つ買ってみてその歴史を調べてみたら面白かったので、今回のnoteに書いていくことにした。

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このように街のいたるところのバールやお菓子屋さんで綺麗に並べられている。

アール・ヌーヴォー(Art nouveau)チックなロゴやパッケージデザインが目をひく。

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こちらは缶バージョン。

余談であるが、缶入りのお菓子をもらった後、アクセサリーケースや小物入れに使えるため、缶のパッケージデザインが良いほど一番嬉しいお土産かもしれない。

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こちらは、チェリーソースで有名なイタリアの食品メーカー、アマレーナ・ファブリ(AMARENA FABBRI)とのコラボ商品のようだが、この商品が置かれている台にプリントされているカラフルなお菓子が、パスティリエ・レオーネである。

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その食感は、ラムネとキャンディーの中間のような感じと言ったらよいであろうか。

このお菓子の歴史は古く、19世紀にまでさかのぼる。

製造元のレオーネは、もとはサヴォイア王国統治下のアルバにて1857年に創業した(イタリア統一前)。 

最初に作られていた味は、シナモン、ルバーブ、ゲンチアナなど、甘いおやつというより薬のようなフレーバーがメインであった。

1861年、トリノへ拠点を移してからも順調に経営を行ったレオーネ。

公式HPには、「サルデーニャ王国首相カブール(Camillo Benso conte di Cavour;1810-61)はこのキャンディーのスミレ味がお気に入りだった」書かれている。

その一つの理由として、当時、このキャンディーのパッケージには、サヴォイア王国の軍旗が描かれていたからだとか。

その後、1934年に女性実業家ジゼルダ・バッラ・モネロ(Giselda Balla Monero)がレオーネを買収してからは、次々の新しいパッケージや広告が生み出されていった。


2. レオーネのフレーバー紹介

次に筆者が今まで食べたことがあるレオーネのフレーバーを紹介。

まずリキュールとハーブ系。

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左上から順に、

1)マルティーニ・ロッソ(Martini Rosso)

2)スピリッツ(Spritz)

3)ミント(Menta)

4)アニス(Anice)

5)シナモン(Cannella)

6)タッソーニ(Tassoni)

7)アブサン(Assenzio)

8)ルバーブ(Rabarbaro)


そしてフルーツ系は、左上より順にこちら。

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1)ラズベリー(Lampone)

2)オレンジ(Arancia)

3)ブルーベリー(Mirtillo)

4)スミレ(Violetta)

5)ミックス(Miste Dissetanti)

6)ベリーミックス(Frutti di Bosco)

7)レモン(Limone)

8)苺(Fragola)

9)マンダリンオレンジ(Mandarino)


フルーツ系のフレーバーの方が、リキュールやハーブ系に比べて食べやすいかもしれない。

いずれもこの紙のパッケージのものは、お店によって値段は変動するものの、1つ1.9-2.5ユーロくらいで購入可能である。


3. 面白・お洒落パッケージをピックアップ

最後に、レオーネのパッケージの中でも筆者がお気に入りのものを3つ紹介したい。

まず一つは、マルティーニ。

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マルティーニを片手に持つ、1920-30年代のフラッパーを思わせる女性が素敵である。


二つ目はスピリッツ。

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アペロール・スピリッツ(Aperol Spritz) とは、プロセッコか白ワインに、ハーブ系のリキュール・アペロール、炭酸水を加え、オレンジを添えたイタリアの代表的な食前酒である。

このカクテルの由来として、オーストリア人のリクエストからという説がある。

18世紀末のオーストリアの支配下のヴェネト地方。

駐屯・駐在していたオーストリア人にとって、北イタリアのワインが強過ぎたために、ヴェネト地方のバーでは、ワインを炭酸水で割ったものがオーダーされていた。

そこでワインを炭酸水で薄めたい際に、ドイツ語で”Spritzen!!”と言ってオーダーしていたために、このカクテルの名前がついたとのことである。


そして三つ目は、アブサン。

見るからに怪しい緑色のパッケージ。

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「アブサン」(Absinthe)とは、緑色の薬草のリキュールのこと。

「不在」(absence)を意味する「存在しないお酒」という哲学的な名前である。

ヨモギやアニス、ニガヨモギを原料にするアブサンが作られたのは18世紀。

スイス人医師ピエール・オーディナーレは、当初、鎮痛剤・解熱剤としてこのリキュールを開発。

ニガヨモギには向精神作用があるため、インスピレーションを生む酒として芸術家たちの間でもてはやされた一方で、そのあまりに強すぎる成分のために、副作用を引き起こすことも。 

「アブサン中毒」(absinthism)という言葉もあるほど、アブサン依存症になる人もいたらしい。
(画家のゴッホもその一人)

20世紀に入ってから、その中毒性のために各地でアブサンは製造を禁止されていく。

1981年に、WHOが成分に規定を設けた上で規制緩和、徐々に製造が再開されるようになり今に至る。

太宰治の『人間失格』にもアルコール中毒の主人公がアブサンを飲む描写があるなど、芸術家にとって魅力的だったお酒アブサン。

飲むと幻想が見えることから「緑の妖精」とも呼ばれていた。

そのために「アブサン/ Abisinthe」と検索すると、緑色の妖精のよこでぼんやりする人の絵などが出てきたりする。

もちろんこのレオーネのアブサン味を食べても幻覚などは見えないし、ちょっと苦味があるラムネという感じであった。

※追記(2023年1月)

レオーネから12星座モチーフの可愛らしいシリーズが出ていたので思わず撮影。


値段は2-2.5€くらい(販売店によって異なる)。

このようにレオーネでは時期によって色々な期間限定商品も扱っているので要チェックである。

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以上、パスティリエ・レオーネの歴史や種類を紹介してきた。

中には期間限定のフレーバーもあるため、扱われていないものもあるかもしれないし、新たなフレーバーもあるかもしれない。

またこれは筆者の個人的な見解であるが、「飴」や「キャンディ」というお土産は、もらって嬉しい人ともらっても食べずにベタベタになるまで余らせる人に分かれるものだと思っている。

このレオーネは、フリスクのような軽さとキレがあるわけではないが、ラムネよりはしっかりしている一方で飴よりはサクサクとした食感である。

ヨーロッパのパッケージデザインが好きかつ飴を日常的に食べている人にはうってつけのお土産であるため、イタリアのお店で探してみることをお勧めする。

公式ホームページ:パスティリエ・レオーネ(Pastiglie Leone)

(写真・文責:増永菜生

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