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徳島に住みたい

ぼくが生まれたのは、岡山県の片隅にある港町。
そこはどん詰まりの場所で、その町からはどこにも繋がっていない。
東と南は瀬戸内海であり、西と北は山だ。
店もほとんどなく、いまでは限界集落となっている。

ぼくはその町が好きではなかった。
ふらりと遊びに行くならともかく、住んでいた頃は毎日「ここから逃げ出したい」と思っていた。
海に囲まれているというと素敵な気がするが、瀬戸内海は内海であるから、目の前には大小の島がならび、遠くを見ても香川県の小豆島が壁の様に立ちはだかっている。
東は少々開けているものの、内海感はぬぐえない。
だからずっと、牢獄のような気持ちで子供時代を過ごしていた。

徳島は、大人になってから旅行で初めて訪れた。
じつはぼくの姓のルーツは徳島に多いと言われており、実際「徳島の方ですか?」と言われたこともある。実際は知らない。
徳島は生まれ故郷と同じ「どん詰まり」の地であるにも関わらず、大きな橋によって兵庫県まで“陸続き”である。
北の海を眺めると故郷の瀬戸内海の景色であり、南の海を眺めるとあれほど出て行きたいと思っていた外海の景色のハイブリッド。
西は険しい山が連なるが、東へ抜けられるという感覚は「故郷に似ていながらも閉ざされていない解放感」を与えてくれる。
ぼくは一発で徳島の景色、細かく言うと鳴門市の景色に魅了された。

人嫌いということもないが、余生は「海が見える丘の上の小さな平屋」でのんびりと過ごすことが夢だ。
もしかしたら先祖の遠い遠い記憶に焼き付いているかもしれない徳島の海を眺めながら暮らせたら、しあわせだと思う。

#一度は行きたいあの場所

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