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ぼくのゲームデザイン[1]:音楽

ゲームを作るうえで、考えていたことや気を付けたことなどをパートごとに紹介していきます。何かの参考になるかもしれないし、ならないかもしれない。「これが正しいんだ」なんて言うつもりはありません。ただ、ぼくはこういうことを考えた、というお話です。
第1回目は「音楽」のお話。

ゲームの音楽であることを考える

ゲーム音楽には2種類あります。
メロディアスで一回聴いたら忘れないような「楽曲」と、バックで何となく鳴っている「BGM」です。
どちらがふさわしいか、という議論はよく見かけますが、あくまで個人的好みでいうと、後からサントラだけ聴いたときにゲームの内容が思い出されるものがいいなーと思っています。そういう意味では「楽曲」でしょうか。

「楽曲」といっても、すべてがコンピューター制御された中で鳴るものですから、ただ「再生」するだけじゃつまんないと思います。
プレイヤーの操作に合わせてインタラクティブに変化するなどの工夫があるといいですね。
レースゲームでは、車のスピードに合わせてトラックが重なっていったりBPMが変わったり。
『ワンダと巨像』では主人公が巨像に上っていくと音楽が勇壮になって盛り上がります。この切り替わりが完全にシームレスで素晴らしいです。
『ドラクエ』で、ダンジョンを下に行くほど低く遅くなっていく曲とかが有名ですね。昭和の時代にやっていたことが今日に活かされていないのは情けないことだと思います。どんどん取り入れたいですね。

あくまで引き立て役

とはいえ、音楽はあくまで引き立て役です。
オペラのオーケストラピットが舞台下の邪魔にならないところにあるように、曲ばかりが主張しては本末転倒です。(そういうゲームデザインであるものを除き)
プレイヤーが物語などに入り込む助けとなるものが最高のゲーム音楽だろうと思います。

そういう意味で、ぼくが気を付けていたことは2つです。

1.主題を決める

クラシックなどでは主題と呼ばれるフレーズがあり、それが繰り返し出てきます。主題はその名の通り楽曲の中の芯です。ブレではいけません。
が、ここでいう主題とは、ゲーム全体としての芯です。
例えば『メタルギアソリッド』シリーズをプレイしたことがある方なら、ぱっとメインテーマが浮かぶのではないでしょうか?(事故があって途中で変わりましたが)
映画などでも、その映画といえばこの曲!っていうのがありますよね。
まずはそれを決めるのです。
曲を作る際には、要所要所でその主題をアレンジを変えて登場させ、雰囲気の異なる曲でも一貫したテーマを伝えます。
これによって、プレイヤーはゲーム中で常に主題を意識でき、芯の通った物語を感じることができます。

2.無音を活かす

もうひとつ大切なことが、無音状態を作ることです。
これも映画では当たり前ですが、ずっと音楽が鳴っているものなどありません。ゲームにおいても常に音楽が鳴っているとメリハリが生まれず、逆に雰囲気をぶち壊してしまうことも多々あります。
『ドラクエIII』の冒頭なども無音を活かしている好例ですね。
特に不安な場面、嵐の前の静けさなどを表現するには無音が最適です。
また、音楽は無しで環境音(雨の音、風の音、草の音など)だけが鳴っているものも見かけますね。

グラフィックとの一体感も大切

PCエンジンのCD-ROMで『イース I・II』が出た時に、友人がこう言いました。
「音だけリアルで不自然だ」と。

それまでぼくは、「生音すげー」って単純に思っていただけに、この発言はその後ずっと心に残りました。
まあ『イース I・II』はローランドのSC-55並みのMIDI打ち込みがメインなのでそこまででもないかもしれませんが、やはりグラフィックと音楽のレイヤーは揃っているべきだろうと思います。
実写さながらのグラフィックにPSG音源は合いませんし、80年代のSFCやPC-88レベルのグラフィックに生演奏は合いません。
その整合性をきちんと取ってあげることは、ゲームを伝えるために大切だと思います。

ということで、ぼくのゲームデザイン第1回目、音楽編をお送りいたしました。
それでは!

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