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第二話 夕焼け空とパワーコード

部室という名の秘密基地を手に入れた安全ピンことnao少年。めくるめく青春の日々はだいたいここで過ごす事になるかと思いきや、そうでもないのだがそれはまた今度。
曖昧な記憶の自分語りは続きます。

部室には肝心の楽器がなかった。
片っ端から知人に掛け合ってクソボロいドラムセットと割れに割れてもはや反り上がったシンバル。あと幽霊部員の持ち込みで小さいギターアンプとベースアンプをゲット。
みんなも知っているであろう初心者セットについてくるあれである。

マイクは学校で先生が使うようなやつを使わせてもらった。音はほぼ出ないから地声がデカくないとやってられない。
この頃の機材に育まれたものはあるかもしれない。安全ピンは声がデカい。

揃ったとは言えないが小さいアンプには鳴らないシンバルがちょうどよかったり、最初はそれで満足していた。
ハイハットだけ割れてなかったから異様にハットがデカかった。

部室ではNirvanaやSEX PISTOLSの曲をギターで弾きまくる日々。結局ドラムは部室のラジカセからの音じゃ小さすぎて思いっきり叩けなかったからあまり触ってなかった。どうやら当時から音はデカかったらしい。あとやっぱ曲に合わせて演奏するのが好き。


そのうちグラウンドに響く下手くそなパワーコードを聴きつけて先輩たちがやってくるようになった。

合併で新しい高校になったが当時は新校舎が完成前で旧校舎に通っているから同じ校舎に学校に違う制服の先輩がいるのである。

楽器の心得がある先輩たちが部室にたむろするようになったがまぁ一人でいるよりは楽しかった。
よく来てたのが背が高くて髪はセルフカットが自慢のギターボーカルのセルフカット先輩。あと…とにかく優しいベースの温もり先輩。

知らない曲を先輩二人が演奏してたから適当にドラムで合わせたり、私はただ遊んでいる感覚だったのだが先輩はイケる!と思ったらしくライブを決めてきた。マジか、先輩なめてた。

その知らない曲の正体はチャコールフィルターのやさしさライセンスだったのだが私の初ライブはチャコフィルのコピーバンドという事になる。
当時は激しめのバンドばかり聴いていたので『やさしさライセンスて』と思ってたが今となっては大好きな曲。

同じ高校に入学した中学生の頃からシャカラビッツやSAM41などのコピーをして遊んでいたギターのやつも誘って何度か練習してライブに臨む事になる。

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