誹謗中傷と対決する法~名誉棄損と表現の自由~
こんばんは。Naoです。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
さて今回は、誹謗中傷について法的にどのような問題があるのか確認していきたいと思います。
ご承知のとおり、SNS等を通した誹謗中傷事件が絶えません。
こうした行為をする人たちを非難する声は多数ありますが、ややもすれば、感情論になりかねません。法律に書かれていない道徳も重要ですが、まず法的にどう捉えればよいのか知ることが重要です。
予め断っておくと、私は弁護士でもありませんし法学者でもありません。ですから、私の言うことが法解釈として正しいものであるという保証はありません。但し、きちんと根拠となる法令を示しながらお話しますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
(1)はじめに
誹謗中傷という行為は今に始まったものではありませんが、SNSの普及で他人とネット上でつながりやすくなったせいで、匿名の何者かから、悪意あるメッセージが直接届きやすくなりました。
軽い気持ちで誹謗中傷する人たちの気持ちはよく分かりませんが、中には「表現の自由だ」と訴える者もいます。しかし、他人を安易に傷つける言葉を投げつける行為が許されるはずもありません。
本稿では、表現の自由とは何かを確認し、誹謗中傷に対する法(名誉棄損)についてお話します。
(2)表現の自由
表現の自由は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と、憲法で保障されています(第21条)
憲法は、言わずもがな国の最高法規です。いかなる下位規定もこれに反することはできません。
最高法規にて個人の言論の自由は保障されているわけですが、ご承知のとおりこれは無制限ではありません。国民は、これを濫用してはならず、常に公共の福祉のために利用する責任があります(同法 第12条)
(3)名誉棄損
1.名誉棄損とは
刑法第230条に「公然と事実を摘示(てきし)し、人の名誉を棄損した者は、その事実の有無に関わらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」とあります。ここで、名誉棄損に当たるか否かを見極めるポイントは以下の3点だと思います。
① 公然と⇒広く社会に広まる可能性ある方法を用いたか。
② 事実の有無に関わらず⇒嘘か本当かは関係ない。
③ 名誉を棄損⇒言われた相手の社会的な評価を下げる
したがって、例え事実であっても、SNS等で無限定に広まる形で相手の評価が下がるようなことを迂闊に書き込めば、名誉棄損に当たる可能性があります。一方で、相手に口頭で直接伝えるなど、関係者の内だけで収まる環境で非難する分には問題ないでしょう。
2.名誉棄損の例外
上記に該当するものであっても、名誉棄損にならない場合があります。
それは、
① 公共の利害に関する内容である。(例:犯罪行為についての事実)
② 公益を図ることが目的である。
③ 事実であると証明される
という3点がすべて成立する場合です。(同法 第230条の2)
おそらく、公益通報を踏まえた例外でしょう。
ちなみに、名誉棄損で罰するには、被害者からの告訴が必要です(同法 第232条)
3.民法上の取扱い
たとえ名誉棄損罪で相手を罰せられても、すでに拡散され、失った名誉が回復されるとは限りません。
そこで民法では、被害者の請求により損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を裁判所は命ずることができるとしています。(民法723条)
(4)まとめ
誰もが自由に自分の考えを表現できることを法で保障することは、個人が人間らしく生きるためにも、社会を発展させるためにも必要なことですが、それを武器に変えて他人を傷つけることまで認めてはなりません。
相手を批判してはならない、というわけではありません。しかし、どこで、誰に、何を、どのように、5W1Hをわきまえず非難してはなりません。
特に一度ネットで拡散されたものについて原状回復するのはほぼ不可能でしょう(しかし、原状回復の責任は加害者にあります)。
情報が拡散されやすくなったからこそ、気を付けなければならないのは、非難を受けるであろう側ではなく、加害者になりかねない側なのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?