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豆腐屋のひとり言 「手間をかけるという贅沢」

うち(南禅寺豆腐屋服部)の豆腐に「山椒が香るおぼろ」というのがある。
山椒の香味油をおぼろ豆腐に練り込んだ、多分うちにしか無い豆腐。

この豆腐を開発した時のコンセプトが「手間をかけるという贅沢」だった。
とかく省力化だ合理化だと叫ばれる風潮に対し、本当に手間をかけたからこそ造れる美味しさがあると伝えたかった。

かかる手間は半端でない。山椒は和歌山県産ブドウ山椒を使う。

山椒の収穫はすべて人の手で手づみされる。種を取り除くのもすべて手作業。どれほどの時間がかかるのだろうか。
丁寧に選り分けられた皮は石臼でひかれ粉山椒になる。

瓶に小分けされた粉山椒に米油を加え、じっくり加熱して香味成分を抽出する。大きな容器で造るとムラができるため小瓶で加熱するそうだ。
できた山椒香味油を練り込んで豆腐を造る。

ひとつひとつ形良くすくい、実山椒をトッピングして「山椒が香るおぼろ」ができあがる。

美味しいものを造るのに手間を惜しんではいけない。
「手間をかけるという贅沢」が生み出す美味しさがあるということをものづくりに携わる身として忘れずにいたい。
人の手でないと造れないものがある。豆腐屋のひとり言。

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