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海外ニュースから知る:遅れる日本のワクチン接種と緊急時に変われない自分たち

来る2021年7月23日から東京オリンピックの開催が予定されていること、それにも関わらず日本のワクチン接種状況は先進国中でも最低の状況にとどまっています。

これらワクチン摂取が遅れている要因はどこにあるのか?海外の記事を参考にその理由を紐解いてみます。

現在の日本のワクチン摂取状況は?

Japan,May 24, 2021,5.23%
https://ourworldindata.org/covid-vaccinations

2021年5月24日時点において、ワクチンを1度以上摂取した割合は日本において5.23%にとどまっています。インドが全国民に対して11%、ブラジルが18%、ヨーロッパ各国が軒並み30%以上の接種率を達成しているのに比べると、かなり他国に遅れをとっている状況です。

では、なぜこれほどワクチン接種の遅れが発生したのでしょうか。

【1】ワクチン承認プロセスの遅れ

From early in the crisis, the government has said it would not skip regulatory steps to ensure the safety and efficacy of vaccines. That means domestic clinical trials and reviews taking several months to complete.
Pfizer started its Japan trial in October, recruiting 160 volunteers to take its vaccine. AstraZeneca PLC (AZN.L), which is still being considered by domestic regulators, started its vaccine trial earlier with 256 subjects. read more
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/japan-vaccine-chief-blames-drug-approval-system-slow-inoculation-drive-2021-05-13/

コロナ危機の初頭から、日本政府は平常時と同様に、国内での臨床試験や調査を必要とする通常のワクチン承認プロセスをたどりました。

具体的にはファイザーが10月より160人のボランティアを対象に臨床試験を開始、遅れてアストラゼネカも256人に対する試験を開始しています。

But trials involving such small numbers of people are "really meaningless"
Global trials involve enough Asian subjects to ensure safety in their genotype
Some other countries have introduced emergency approvals to deploy vaccines faster.

ただ一方で、これほど少数の治験では正確な結果を得ることは難しく、ワクチン接種開始時期を遅らせてまで、国内で臨床試験を行う必要性があったかは疑問の余地が残るという専門家の意見も上がっています。

加えて、世界的に臨床試験はすでに行われており、その臨床試験対象には日本人と同一の遺伝子タイプを持つアジア人への臨床試験も十分に含まれていたこと、また海外他国においては緊急のワクチン接種承認プロセスを用い、ワクチン接種を早めていました。

これらを踏まえると、コロナによる危機的状況を踏まえた対応ではなく平常時と同様の承認プロセスを日本が重視したことが、結果としてワクチン接種の遅れにつながりました。

【2】海外からのワクチン取得が遅れた

Japan began its vaccination push in February, later than most major economies, and logistical hurdles, mainly manpower, has also slowed the pace of its campaign.
Japan imported 28 million doses of Pfizer Inc's (PFE.N) COVID-19 vaccine through late April
The first batch of the Moderna vaccine had already arrived and an estimated 30 million doses of the AstraZeneca shot are being prepared by its local domestic partners.
Japan has secured the largest amount of COVID-19 vaccines in Asia, as it gears up for the Olympics in the summer

日本は他国から遅れる形で2月よりワクチン接種を開始しました。

その後4月の終わり、ファイザーから2,800万回分のワクチンを輸入しました。続く形で加えてモデルナ、アストラゼネカからも3,000万回分のワクチン輸入を行い、アジア各国でも最大規模のワクチン輸入を行っています。

とはいえ、そもそものワクチン摂取開始時期の遅れ、その後も十分な回数のワクチン確保や輸送ラインの整備、摂取人員の確保などの遅れが海外各国と比べて遅れた要因と考えられます。

結局、遅れた一番の原因はなんだったのか?

これらにより、ワクチンの承認プロセスに加えて、その後のワクチン確保や摂取のための社会システム整備が遅れたことが結果的に日本全体のワクチン接種の遅れにつながったことが見えてきます。

でも、結局なにが一番遅れを生じさせたのでしょうか?これは「通常時とは異なる、緊急時の対応ができなかったこと」かと感じました。これは欧米各国と比較し感染者数や死者数が少なかったことも一つの要因にはなるかと思います。

とはいえ毎日増える感染者や死者、それに伴う緊急事態宣言により逼迫していく経済が重なっているため、「日本が平時の状況」というのは難しい部分があります。

それでも非常時の対応を行えなかった日本。いつもと同じ動きをしてしまった日本。そんな「すばやく変われない日本人」に一番自分自身がいらだちを覚えているのかもしれません。

そんな日本人は普段仕事をしている自分や、自分を取り巻く環境にも映し出されています。

そして、そんな遅れを経ていま「オリンピックを前にワクチン接種を急ぐ日本」は海外からの外圧なくして変われない状況を映し出しているようにも思えます。

ワクチンは本来「オリンピックのためではなく、一人ひとりの命を保護するためにある」ことが根本的な目的なのに、オリンピックを前にした国際社会からの視線を通じて急遽国全体が動き出しているようにも感じられる、そんな「変われない自分たち」の社会状況の中に自分も含まれていることが、少しだけ日本人であることを悲しくさせているのかもしれません。

読んでいただいた方、ありがとうございます。

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