トルコで絨毯詐欺にあった話⑤
「それらの絨毯は普通は20万円はするけど今回は特別に2万5千円で譲るよ。みんなカードを出して」
お酒も飲み、正常ではない。さっきの発言は聞き間違いだったかな。Uさんにはお酒と食べ物をたくさんごちそうしてくれた。さらに、Oさんに街で出会ってからここまで7時間以上は経ち、だいぶお世話になった。買わないとはいえない。
安い買い物ではないが、正当な値段からしたら安いのかもしれない。
せっかくトルコまで来たから何かお土産が欲しいと思っていた。これは思い出にもなるしまぁいいか。
僕らはカードを出し、一括で買おうとした。しかし、ここで事件が起きた。
友だちのTが
「僕は結構です」
断った。しかし、彼には事情があるのを僕らは知っていた。彼はトルコに来る前、8万円入っていた財布を無くしていた。幸い、クレジットカードは別の財布にしまっており無事だったが、8万円は大きい。
だから2万5千円の絨毯は彼にとっては痛手だ。
「お金がないなら、俺が出してやるよ!」
友だちのHが言う。するとUさんは
「Hはかっこいいね。人のためにこんなこと言える、Hに惚れたよ。」
Tは人にお金を借りてまで買いたくないと言う。
僕もYも、説得する。せっかくここまできたし、いかんせんUさんやOさんに悪いと思った。
しかし、Tは
「ほんとは買いたいんですけど、申し訳ないけど遠慮させていただきます」
そういって、Tは本当に買わなかった。
Tを除いた、僕ら3人は2万5千円の絨毯を購入し、包装までしてもらった。
そうして、会社を出た。帰りに、ケバブ屋さんによった。
ケバブ屋で、僕らは今日のことを話し合った。UさんやOさんの日本語の上手さに驚いたこと。現地の人だから知るケバブ屋さんやトルコ珈琲屋さんを教えてくれたこと。お酒までごちそうしてくれていい人たちだったね、と。
その後、僕たちはホテルに帰った。ホテルにはWi-Fiがあり、インターネットが使える。
「ART HOUSEってホントにあるのかな?これでなかったら面白いね」
冗談交じりに言ってみた。検索画面に「トルコ ARTHOUSE」と入力する。
目を疑った。全然出てこない。調べても、調べても出てこない。
みんな検索するも、出てこないと言う。だんだんみんなの顔が青ざめていく。
そして、「トルコ U」と打つと予測検索に
「トルコ 絨毯詐欺 U」と出てくる。
やられた。検索した中には、同じような手口で詐欺にあった人がいた。もっと悪い人でザクロティーに睡眠薬が入っており、レイプされた人までいた。
振り返ってみればおかしいところがいくつかあった。見ず知らない僕たちに、異常に親切にしてくれたこと。日本人以外のお客さんがいなかったこと。トイレに行くのに、Oさんについていくように指示していたこと。おびただしい数の防犯カメラ。
全ては、絨毯を買わせるため。僕らをあそこから、逃がさないためだったのだ。お酒を飲ませたのも判断力を鈍らせるため。
検索するまで詐欺と気づかせない彼らは、本物の詐欺師だ。
Tが買わなかったのは賢明な判断だった。あそこで、Tの分をHが買わなくてよかった。
そもそも、騙すためにOの日本人彼女とのエピソードや、Uの仙台で牛タンとテールスープを食べたり、伊勢谷友介と友達のこと。ディティールがこまかすぎる!
しかも、伊勢谷友介とか絶妙なところをついてくる。
僕らは返品しよう!大使館に訴えにいこう!と話した。
しかし、Yが言う。
「これは本当に詐欺にあっているのか?」
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