末広がり
2022.11.3
出られません。
ここから先は知らない世界。
あったかい便座に触れている間、
どうしてこんなに緩んでいられるのだろう。
ここも誰かも跡が残っている場所。
スマホを見ながらタイピングをして時間が過ぎ去ることを待った。休憩時間になって、ここにきてご飯を食べながらイヤホンを片耳にして、Netflixをさぞあたりまえに開いている。『架空OL日記』と同じ立場にいながらも、同じような場面に出会えなくて安心をしていた。架空であるもの。そんな暗示をかけているから、灰色となった世界を今日も見ていられる。
何かが割れた音とともに、隣から悲鳴が聞こえた。
知らないふりを通すつもりで、足をひょっとあげた。
これでここにはいない。
そんなフリ
しても意味がないことを、同党とすることはできる。そんなことをして自制しているの、
守ることはワタシを強くする。
守ることは弱い部分を見せたくないから
今日もワタシは
出られません。
引き戸でした。
TOILET End. ___
2024.9.7
アイスクリームを持ったサンタクロース。
クリスマスイブに入った単発のバイトで、変なやつと思っていたやつが今、目の前に現れた。東京という街は不思議で、同じ街のなかをいるだけで会ってしまう。これだけの人と、これだけの障害物を抱えているのに、これほど世間は狭くて、自分がどうにも小さいモノであることを自覚させるようだ。最後の記憶。そいつとの最後は、酔って頭から缶チューハイをふっかけたことだった。(気がする) 最悪であった。幸いに目があったが、無視された。それもそうであるから、安心して走った。道玄坂を駆け上がり、知らない道を曲がって知っているライブハウスの前に着いた。でもそこには用がなく、また歩く。道を戻るようにして、LINE CLUB SHIBUYAの前まで出た。ファミマで麦茶と、タオルを買った。止まらない汗に歯止めなんてものはない。湿っている空気といっしょに過ごすと、なんだかうるさい。代々木公園のベンチにて落ち着いた。人と会うことと、逃げることを同時に行うと人は現実的な判断から遠くなる。以上
2030.9.3
平均気温が40℃をかるく越すようになってから、水泳部は全国的に廃部になった。
教室内でそれを知る。4時間が終わって突っ伏していると校内放送から聞こえる声が耳に入った。
感激も感嘆も高鳴る烏合の空襲の中で私が孤独に思考する。
濁った水を前にして、立つ。
風によって揺られるみなも、
みどりの床と壁が映る。
どこかから来た鯉に目をやるが、
すぐに汚い元へと行ってしまった。
文化祭で使うことになったからプール掃除をする。
有効活用という言葉でキレイにされているが、生徒にやらせておけとも捉えられることだった。
日傘を肩にやり、座り込んで道具の準備をしていると空から水が落ちてきて、雨傘へと変化した。ペットボトルを頬に当てられて、ひやっとした拍子に手を離してしまった。人が走っている様子を、ただ眺めているけど私も濡れていた。肩のあたりからだんだん、透明になっていった。
また、濁った水の前に立ちたかった。
あれからまた雨の日が続いて、水が溜まってまた新しい魚がいた。あれからプールには柵が取り付けられるようになって、門には鎖で閉められるようになった。それを3階の遠くから見ていた。生い茂るみどりはときに焼かれ、それでも再生して本の形を保とうと必死であった。
教師からの指名を聞かないで、何もかも嫌になった日に戻りたい。それからどうにかして、プールに入ってふたりになったらしあわせであったと信じたい。いっそ、ひとつになりたい。溶けて私と、あなたの境界線なんてどこかへ捨てて
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