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180円


2024.7.31


甘ったるいジュースを片手に持って、自販機の前に立っている小学生のご一行。
お金を入れて出てきたアイスを食べている。
それを離れたベンチから見ていた。


数日後に、同じ自販機の前に立って見つけている。
高い。180円。小学生のときは150円程度だった気がした。スイミングスクールの2階にあって、帰りのバスに乗る前にひとつ買っていた。少ないお小遣いから出していたから、特別なもののようだった。今になって、この値段によって特別なものになりそうであった。

買ってみる。
ごとん、と落ちる音。
取り出し口から出てきたのは、ベトベトになったアイスだった。前のアイスが入っていた。この炎天下のなか、お金を入れてボタンを押して、取り出すことだけをしなかった人がいる事実がワタシの中へと入ってきた。

汚れた手を浮かべたまま、駅にあるトイレで手を洗った。
洗っても簡単に落ちないベトベトの感覚。
服に触れていなかったことが幸いなことだった。
そのまま帰ってきてしまった。これから行こうとしていたのは、別に今日でなくてもいいしいつでも行けるし。でも洗顔は必要だから、薬局にでも行こうかな。


あれ? アイス忘れてる?



2022.9.31


向かいに座っている女の恋愛話がうざったかった。
昔から声が大きくて、注目をされようとする人間が嫌い。
マジョリティを無自覚に殺していくように、自覚してしまったから一度記憶してしまったことが離れていかなかった。


隣に座っている人を見ている感じ、共感が大事なんだと思う。
好きに、好きで返すこと。
好きに、嫌いでも好きで返すこと。

自分には同意をする気持ちがないのか、余裕がないのか。

「わかる。」 「でも、ワタシは・・・」

「わかる」のあとに逆説を言っていいんだ。
「わかる」ことってそんなに必要?
きっと疑問に思ってしまってはいけないから、口に出すことを避けている。共感することは別に大した奇跡じゃないよ。一言だけで済む奇跡に、何度も踊られている。きっと自分だって


最後、「ワタシって普通じゃないのかな ???? 」って特大砲を放った。
そうだよ、と伝えてみたら怒るのかな。そう思うけど、関係ない人が知っている口を語ってはいけないよ。と言い聞かせる。踏み込んだことは言いたくなっても、踏み出さない一歩の方がのちのち「うん。」となることが大抵である。


「そうだよ。」
強い意志を持ったつぶやきが、そっと聞こえたような気がした。





2024.3.9


「光」

ブルーな天気ではじまる。
花火大会の中止を知らせる町内放送が流れる。

近くの教会にある十字架が照らされている。中からオルガンの音が聞こえる。
大学で宗教学について学んでいた。祈りを捧げるようになったのは、不安をなくすためでもあるみたい。同じものに対して希望をもつことが最後まで理解できなかった。単位は取れたけど、評価は悪かった。わたしはどうだろう。わたしは、温泉とか行きたいかも


もう会うことができない人の声がのった動画を見て泣きそうになっているけれど、泣くことができるようになったことがうれしかったりした。
泣けることは、まだ笑えることだろうからまだやっていけると少しずつ自覚できた。下を向きながら、顔につたらないようにした。日差しが当たって視界で髪が揺れる。
いつもの待ち合わせ。
いつもの喫茶。
いつもの隙間風。

遠くから聞こえたはずの声に、ふりかえってみるけど、
誰もいなかったとき、わたしはひとりになった街を感じる。


夜が来る。


バイト先を出てから、歩いて今日あったことを人に送った。
日を越えている時間だったのに、「今日頑張ったごほうび???」と即座に返答があった。自然と口角が上がって、ふふッと笑みがあふれた。



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