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THE BATMAN-ザ・バットマン-の感想(ネタバレあり)

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム以来の映画館での鑑賞。
久しぶり過ぎて3時間近い上映時間に耐えられるか不安だったけど、そんな心配も忘れるくらい最初から最後までずっと面白くて、とても楽しめた。

新たなバットマンシリーズ

バットマンになって2年目というのか絶妙で、信念を持って始めた自警活動のやりがいはなくなり街が一向に良くならない絶望に疲れ切っている。
若さ故にヒーローとしての円熟味もまだなくて精神面もグラグラな感じが今回のロバート・パティンソンの雰囲気にバッチリ合っていた。

バットマンが使っている発明品の数々もどことなく廃れた雰囲気で、マーベルの作品とかと比べるとかっこいいガジェットを使ったシーンの高揚感がない。コンタクトに埋め込まれたカメラとかスパイグッズのアイデアとして新しいのに、画面のモノクロ感とかノイズとかでレトロな気すらしてくる。
警察署から逃げる為に着たウイングスーツも華麗さゼロで着地とか痛々しくて生々しい。

この常に漂う希望のない空気感が、観客のDCEU以降企画が頓挫してグズグズしているバットマンの映画化に対しての期待値の低さと微妙にリンクしている感じがした。
でも今回はMCUスパイダーマンとかもそうだけど、短期間に何回も実写化されたことで「みんなもうお馴染みでしょ」という事で、どういうヒーローなのかという説明はバッサリ短縮して話がスタートしていくのがまどろっこしくなくて良い。

バットマンというヒーローが悪人達にとっていかに恐怖を与えているのかというのを示す、空に移るバットシグナルを見た途端そこにある暗がりを怖がる描写は完全にホラー描写で凄くゾクゾクした。
でもここで分かるのは、彼が街を支配しているのが暴力と恐怖であって、ヒーローと呼べる雰囲気ではなくほとんど犯罪者のヴィジランテ活動という感じ。それを決してヒロイックに描かず、あくまで精神的に問題を持った異常者というアプローチで彼を映していくのが今までありそうでなかったけど、バットマンというヒーロー誕生物語として正しい感じがする。

僕はバットマン作品ではレゴバットマンが1番好きであちらがバットマン映画の暗さを逆にコメディに昇華して、そこからレゴだから出来るバットマンへの救いを提示しているのがとても感動的だったのだけど、今作は暗くてシリアスな方に振り切っているのが逆に成功してた。
おそらくこれが作れたのはホアキン版のジョーカーの成功が大きいと思う。

バットマン

今回のバットマンは「復讐者」とも呼ばれているのだけど、そういう私怨の復讐から目覚めヒーローとして立ち上がる話だったと思う。
ファルコーネが怪しいけど、今回は親を殺した犯人が最後までよく分からないまま終わっていて、それが彼の復讐の虚しさみたいなものを表現している気がして、テイラー・シェリダンの映画みたいな切なさを感じた。

あと、バットマンもキャットウーマンもそうなのだけど、実はその親の悪行や過ちが呪いにもなっていて、2人ともそれを乗り越え自分の生き方を選びとっていく。

だからラストに汚職をした市長の息子に自分を投影したバットマンが手を差し出す所にすごくグッときた。
冒頭の闇で恐怖の象徴となっていた彼が、赤い光で皆を先導する希望の象徴に変わろうとしているのがセリフじゃなく画として見せていて、とても映画的な感動があった。

リドラー

窓の外から誰かを望遠鏡で覗き込むシーンなど、意図的にバットマンがやってる事とリドラーがやってる事を被せる様な撮り方をしてる所が多くて、2人が同じ狂気を持っていてコインの裏表というのを示している。

演じたポール・ダノ、ほとんど顔は見えないけどマスクの隙間からのやばい眼の演技が素晴らしくて、とても楽しそう。
ラスト、バリー・コーガンと友達になっているシーンとか観ると続編あるなら期待しちゃう。

ペンギン

ペンギンも良かった。特殊メイクやり過ぎでコリン・ファレルの原型あんまりないと思ってたけど、オーバーめな表情の変化を観てるだけで楽しい。

あと何といってもペンギンとバットマンとのカーチェイスシーンが本当素晴らしかった。

DCはマーベルよりアメコミ的な画の美しいシーンへのこだわりが強い印象があったけど、映画的にもアメコミ的にも恍惚となる美しさでここだけでお金を払う価値があった。
雨の中でちょっと思い通りに走れない中での追いかけっこがとても緊張感があったし、炎の中からバットモービルが飛び出してくるカッコよさ、炎をバックに車からマントをなびかせながら近づいてくるバットマンのシルエットの美しさ、それを見るペンギンの表情、暗めなスリラー的な印象が強かっただけにここで一気にケレン味が爆発してる感じがしてここのくだりは、この映画の白眉だと思う。

キャットウーマン

キャットウーマン役はレゴバッドマンから引き続きのゾーイ・クラヴィッツ。
親との確執に囚われていて彼女もバットマンと似たもの同士。お互いそこから抜け出しラストで別々の道に行くシーンが切なくも美しい。

リドラーもそうだけど、環境のせいでタフに生きるしかなかったので、やっぱりバットマンのスーツみたいなアメコミ感はなくて、それ故にバットマンの異常さがより増してくる様なバランスが好き。

そういえば猫一匹しか連れて行かなかったけど、他の猫ちゃん達はバットマンが里親ちゃんと探してあげたのかしら。

DCは今後エクステンデッド・ユニバースにこだわらず作品を作ってく方向にしたらしいけど、こういう形で単品の作品で今後も面白い作品を作ってくれる方が嬉しい。
バットマンといえばフラッシュの方でマイケル・キートン出るらしいのでそちらも楽しみ。

そして色んな種類のバットマン映画沢山作って、溜まってきたらレゴバットマンでまたイジって欲しい。

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