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フォードvsフェラーリの感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
4DX版もあったけどそれも納得の内容。
ただ内容の熱さが凄くて、体力がマジで消耗しそうなので僕は2Dで十分かな。

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ジェームズ・マンゴールド作品だけあってただの良い話で終わらせない感じが凄く好き。
誰の人生において襲いくる苦い抑圧の数々に、1人の人間の意地や純真さを掬いあげる様な目線がとても感動的。

パンフにも書いてたけどフォードの上層部と現場の人間の関係がそのまま映画製作におけるスポンサーと現場の関係と置き換え可能で、そういう見方をすると主人公2人の言葉がいちいち味わい深い。

ケンのレース最後の選択を肯定する様な描き方も名作と呼べない作品も含め色んな娯楽大作に関わってきたジェームズ・マンゴールドが撮ったと思うとより切ない。ああいう事いっぱいあったんだろうな、、、。

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苦みの部分ばかり先に書いてしまったけど、そんな暗い映画では全然なく観ている間は手に汗握るレーシング映画として一級の演出の数々に心の底から楽しんだ。24時間レースなので同じコースだし絵的に退屈になりそうな所を次から次に新しい事件が挟み込まれてくる展開が見事で全然飽きさせない。

それとコミカルなシーンもしっかり入っているのも良い。好きなのはシェルビーが直談判する為に副社長を部屋に閉じ込め社長と一緒にテスト走行する所。社長の恐怖と感動を同時に味わった結果、号泣するという反応が予想の斜め上で笑った。
その他ケンとシェルビーのおじさん2人の鈍重な喧嘩シーンも笑った。椅子持ってきて見物する奥さんカッコいい。

胸アツなスポーツドラマとしてももちろん重厚。僕はロッキーとかでお馴染みな、試合前日の夜にフラフラ主人公が下見に来るシーンが大好物なのだけど、この映画では主人公が二人とも来てしまうのが彼らの絆が強さを表している様で感動した。

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マット・デイモン演じるシェルビー。
今回の映画は基本的に彼目線の話。フォード上層部と現場の間で板挟みになる。すごく話し上手で営業向きな人ではあるんだけど、本人的にはレーサーであり続けたかった人だから痛い程ケンの気持ちも理解している。

冒頭で「まだだ、まだだ」とつぶやきながらレーサーとしてケンに感情移入し同一化していくシーンが、終盤もう一度繰り返される所で泣いた。

そんな感じでレーサーとしての自分をケンに託したからこそ最後に彼の命を失う事に繋がってしまい再び挫折を味わうのが観ていて辛い。
映画の終わりにケンの息子のピーターと本当に小さな救いの様な会話の後、それでも人生は続いていくしかないと車を走らせる後ろ姿で終わるのが苦いけどグッとくる。

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クリスチャン・ベールのケン。基本的にひねくれ者で本音を表に出さないのだけど誰もいない所で見せる無垢な表情が良い。

シェルビーが話を持ってきた時に、後々障害になる要因を挙げていて、すべて分かったうえで選択しているのが味わい深い。製作期間が無い事やお金の問題じゃなく、一番邪魔になるのはフォードの上層部であるのがもう分かっている。だから彼が仕事を受けるまでの考える時間が結構ゆったり長く感じるのも必然的だと後から振り返ると納得した。

シェルビーの演説を聞いてガッカリして断ろうとするのだけど、結局実際のレーシングカーのテスト品を見せられたのが決定打になり受けてしまう所で高揚感もありつつ、やっぱりこういう生き方しか出来ないという部分が切ないし、最期にいくにつれ「自分で選択したから」と、悟った表情になっていくのがかっこいい。こういう繊細さは流石はクリスチャン・ベールだった。

しかしこないだ観たのがバイスだったので「またこんな肉体改造して、、、」と心配になるのが定番化している。

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奥さん役のカトリーナ・バルフが凄く良かった。僕は全然観た事ない女優さんだったけど夫婦としてクリスチャン・ベールと対等に張りあえる存在感。登場時のイチャイチャコントからして最高。
序盤の車をぶっ飛ばしながら喧嘩するシーンも凄く良かったし、中盤メンバーから外されたケンを慰めにくるダンスシーンのお互いを理解しあっている感じにグッとくる。
あとケンが亡くなり悲しむシーンとかが無いのも大人なバランスで好きだ。ラストの道を挟んでマット・デイモンに手を振るシーンの微笑えむ顔に泣いた。

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あとジョン・バーンサル大好きなのだけど、今回の飄々とした雰囲気は新鮮だった。色々な人を焚きつけるだけ焚きつける一番の黒幕。

基本的に現場の味方という感じでもなく上層部にどっぷり媚びを売るわけでもない中立な位置の人(といえば聞こえがいいけど悪く言うと特に何もしない人)でも副社長の後ろでケンとシェルビーが何かやる度にニヤニヤしているのが面白いので好き。

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あと音楽も凄く良かったなぁ。ここまで気持ちを上げていく事のみに振り切ったテーマ曲も珍しい気がした。車運転中にずっとかけて気持ちを盛り上げている(危ない)

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