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ムーンナイトの感想(ネタバレあり)

この感想はパスカル・ロジェ監督の映画作品「ゴーストランドの惨劇」のネタバレもしていますので、これから観ようと思ってる方はご注意をお願い致します

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」が日本だけ遅れて持ち越しになり個人的には今年の映画感ゼロだったので、2022年一発目のMCU作品という印象が強い。

先の読めない巧みな構成力

まず面白いと思ったのが客観的に引いたような目線が入らない所で、主人公であるスティーヴンとマークの目線でこのドラマは進んでいくのだけど、話が進めば進むほどこの二人の見ているものに対する信用度がなくなっていく作りになっていて、その安心感のなさがとてもスリリング。

だからこそ後半の精神病院のシーンが効果的だし、そこから最終話に向けしっかりヒーロー誕生物語に戻っていくのがとても面白くて、この脚本がめちゃくちゃチャレンジングな事をしていて凄いと思う。

一旦生死の境を彷徨う精神世界的な描写の「これまでのお話しは全て精神を病んだ男の妄想だった、、、」みたいなミスリードの入れ方が巧み。
破茶滅茶ファンタジーヒーロー物語が現実で精神病院の方が妄想ってオチはなかなか凄くて、普通こういうパターンだと映画「ゴーストランドの惨劇」みたいに自由を奪われ閉じ切った世界の中にある小さなアイテムとかを現実から逃げる為に空想の材料にしてたりするのだけど、(ゴーストランドの惨劇だと監禁部屋に飾られた写真や絵からイケメンの旦那さんと子供をイメージしたり)今作はマークが自分は精神を病んだ病人という自覚がしっかりある為、無意識的に治療の為、心の中に精神病院を作り出して、そこに現実を反映した人やアイテムを作り出しているのが、裏の裏をかかれたみたいで面白かった。

このぶっ飛んだ後半に至るまで第一話からさりげなく伏線張られまくりで、「そういえばそんな事言ってた、、、」とギリギリ受け入れられる様になってて、色んな要素の積み上げ方が上手い。

マーク&スティーヴン


第一話ではスティーヴン目線で話が進むのだけど、ここで既に世界から浮いてる感じがさりげなく分かるようになっている。
色んな人にめちゃくちゃ喋りかけるのに誰からも真剣に相手にされていないのがコミカル&この世界に居場所がない感じを示している。

特に静止したパフォーマーに自分の身の上話をしている一人相撲なやりとりと、後に分かる存在しない母親と電話で話すシーンが繋がっている感じで、スティーヴンの他者へのアクションがこの世界で一方通行で、全て自己完結している。

こういうそこまで異常じゃないけど、何となく浮いた感じの彼が主人格じゃないのは早い段階で何となく分かる。

そして、後半スティーヴンは主人格のマークが心を守る為に作り出した事が明らかになるのだけど、ラストにマークが母親に本当は言って欲しかった「君は悪くない、子供だったんだ」という言葉をかけるシーンがとても優しい。
その後マークが1人で天国に行く事を拒み、歪んでいるけどスティーヴンと2人だから今の自分がある事を認めるシーンがめちゃくちゃ感動するし、現世に戻ってから二人で協力してい敵とコンスを翻弄していく様な展開がめちゃくちゃ熱い。ラストにスティーヴンの部屋にあった水槽に魚が二匹泳いでいるのも、ひとまずのハッピーエンドとして良い演出。

演じたオスカー・アイザックの圧巻の演技力も堪能。
表情の変化やしゃべり方で三人の役を使い分けていて、誰が観ても今どの人格か分かるようになっている。第三話のカットを割らずマークからスティーヴンに変化した瞬間を表現していたシーンは笑っちゃう位凄い。

それに合わせた吹き替えの関智一の演技も素晴らしかった。スティーヴンとマークの使い分けがよりはっきり分かる様になっていてMCU映画でも屈指の名吹替作になっていたと思う。

コンス

完全にブラック企業の社長って感じで最後まで全く好きになれない神様。
僕は正直アメミットとどっちもどっちだなあと思った。
こんな短気で精神的に不安定な存在が人間を裁いているのが全く良い事に思えないし、コンスに言われてマークが今まで裁いたというか殺した人間もセリフで悪人だったって言われるだけなので微妙でモヤモヤする。
ラストシーンで登場したジェイク・ロックリーもめっちゃ病院関係者殺しててそれを良しとしてんだからやっぱりどっちかというとヴィランっぽい。

今後マークとスティーヴンとどういう関係になっていくのか気になるので、何かしらの続編のアナウンスが欲しい。

ジェイク・ロックリー

エジプトに入った辺りから明らかにマークともスティーブンとも違う人格が人を殺しまくっていたりするし、もう1人格があるのは分かってはいたけど、結局よく分からないまま終わってしまった。
おそらく精神病院シーンの前半でスティーヴンの他にもう一つあった棺桶の中にいるのが彼だったんだろうな。
マークやスティーヴンと違い、今の所コンスの希望をそのまま遂行する操り人形みたいな印象が強い。

ラストのダウン直前の状況からハロウを半殺しにした所を見るに、強さ的に2人とは別次元な感じ。
ただここの飛ばしシーンは別人格がいるのを示す為に必要だとは思うけど、正直最後のラスボス戦の決着の仕方としてはかなり拍子抜けな気はする。

お話し的に全てが明らかになって終わってる作品じゃないので、何らかの形でムーンナイトは再登場するとは思うのだけど、ロキみたいにシーズン2あり!みたいなハッキリした予告がないのがモヤモヤする所。
他のヒーローとの繋がりがほぼないし、5年間人々が消えた形跡とかもあまり感じないし、正直MCU世界の話なのか別のユニバースの作品なのかもはっきり分からないのがまた不安な気持ちになる。(他のヒーローと繋がりまくると単品の作品として不満になるし、繋がりが無さ過ぎるのも不安になるし、なかなかバランスが悩ましいけど)

ただ1人の苦悩した男が世界に居場所を見つける所で終わったのが、僕はとても感動的に感じたし、今後の展開も前向きに期待したい。
後で振り返らないとMCUの中でどういう位置付けになるか分からないし、アナウンスを待ちたい。

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