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「クールジャパンはオムライスのパセリを提供すればいい」レディ・プレイヤー1評

日本国政府が主導で投資しているクールジャパン機構の結果が散々らしい。

「日本のアニメは評価されている」というのは間違いではないが、今後それらにお金を払う外国人はどれだけいるだろうか?そのヒントが「レディ・プレイヤー1」には隠されていた。


80年代カルチャーへのリスペクト

※ここからネタバレを含みます。

本作では、2045年のディストピアが描かれる。2017年に公開された「ブレイドランナー2049」のスチームパンクの世界には発展的な3Dビルボードが設置されていたが、この時代はそれ以上に荒廃した世界と言えるだろう。
※フィリップ・K・ディックのエレクトリックドリームの「Autofac」の世界に近い


人々は現実を楽しむよりも、VR空間に没入した世界を日常的に楽しむことになる。リアル×虚構の構図はインターネットが発達した以降は盛んに扱われる内容であり、マトリックスのような「リアルを生きろ」というような強烈なメッセージ性も本作品にはない。ただし、VR空間には誰もが知っている80年代のカルチャーが詰まっているこの作品は人々を懐かしさで熱狂させる。


本作の特徴はパロディの詰め合わせである。コンテンツのミクスチャーを世界を代表するオタク、スティーブン・スピルバーグがおこなっている。
冒頭は80年代を代表するサウンド、ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」をバックにキングコング、Tレックス(バンドではない)が登場してVR世界内のカーレースを盛り上げる。


ハリウッドの巨匠がミクスチャーに挑んだ

本作で注意したいのが、メインカルチャーとサブカルチャーが巧みにMixされているということ。スピルバーグはアメリカ人なら誰もが知っているキャラクターやパロディを散りばめ、自らも愛するサブカルチャーを巧みにMixしている。本作に登場するカネダバイク、メカゴジラ、ガンダム、三船敏郎(ダイトウのアバター)を愛しているという人は世界を土俵にした場合にはサブカルチャーと言える。


例えて言うのであれば、大人気シンガーが作った曲のA面とB面が存在し、A面に大ヒットソング、B面にローカルソングを取り入れたミクスチャー的なコントリビュートアルバムを前時代へのリスペクトも込めてスピルバーグが作り上げた作品とも言える。


クールジャパンはオムライスのパセリを提供すればいい

日本のレディ・プレイヤー1の宣伝では「スピルバーグが作った映画にガンダムが登場する」を謳い文句にしているが、アイアンジャイアントがオムライスだとしたら、ガンダムはパセリのような扱いにされているのが本作の特徴である。

日本は輸出大国ではあるが、コンテンツのグローバル輸出はゲームを例外として決して成功していない。本作が世界的な作品になるのも、キングコングやTレックスやシャイニングなどのメインが存在するから成り立つのである。


クールジャパン機構は供え物の詰め合わせで勝負していては、勝算は低いであろう。日本で生姜焼きを見つけるなり、アメリカのステーキを見つけるなりして総合的に調理をする力が求められる。2020年の東京五輪はもうすぐそこである。手塚治虫がタネを撒き、宮崎駿が花を咲かせたジャパニメーションを国家主導で世界的なものにできるのか?時間はあまりない残されていない。


追伸:リオ五輪の閉会式の安倍マリオはアヴェマリアを歌うべきだったと思う