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混乱の時代が与えてくれた「空白」というプレゼント

緊急事態宣言の発令により、外出自粛が要請される今 ーー
新型コロナウイルスの感染拡大はとどまることを知らず ーー

仕事の記事で、何度かこんな感じの導入を書いた。書く内容からすると触れずにはいられないのだが、あまりの紋切り型に少しげんなりしている。これらの導入を書き飽きたと言いたいところだが、現状は書くことを止めてはくれない。

読み手としてもまた、新型コロナウイルス関連のニュースに毎日触れることになる。4月に入ってからニュースとの距離の取り方を少しはうまくコントロールできるようになったが、それでも刻々と変わる状況を常に把握しなければならない、強迫観念じみたものはまだ抜けない。

その一方、「新型コロナ時代の希望」を語る機会がここ最近何度かあった。

オンラインイベントに参加するなかで、ほとんどの参加者が共有する話題だからか、やはり新型コロナに関する話になる。みんなそれぞれ苦労や葛藤があって、「今この瞬間」は悲観的に捉えざるを得ない部分もあるが、意外なことにある一部分は楽観的に捉えていたり、その先の未来に希望を見出している人が多くて驚いた。

空白が与えてくれるもの

と言いながら、私は私自身の現状や未来に関しては楽観視している方だ。むしろ、去年の今頃よりも心の内は穏やかである。3月にヨーロッパから帰ってきた身であり、フリーランスとして働いている私は、安定からはほど遠い場所にいるにも関わらず、だ。

その理由は、「空白」の価値をいくらか知っているからだと思う。

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昨年、社会人半ばにしてフルタイムの仕事を辞め、デンマークの学校に留学した。ここで、キャリアの空白が生まれる。さらに留学先の学校では、授業以外にたくさんの自由時間があった。つまり、たっぷりと用意された時間的な空白とも向き合うことになる。

日本ではプライベートの時間もほぼ仕事をしていたので、私は最初久しぶりに与えられた自由な時間を持て余した。一日中のんびりしている休日に罪悪感を覚え、ムズムズした。キャリアを積み上げている元同僚のSNSを見て「このままではいけない…」と焦りもした。しかし同時に、たっぷり睡眠をとり、3食しっかり食べる生活を続けていると、明らかに体調が良くなっていることも感じていた。

どうせなら空白の時間を心ゆくまで楽しんでしまおう。今は自分のために時間を使うと割り切って、自分を解放することにした。時間を気にせず友人と語り合う。興味のなかった音楽に耳を傾け、芸術に触れてみる。何日もかけて自分の過去を振り返り、見て見ぬふりをしていた違和感や、心が踊ることを言葉にしてみる。

そうすると、自分の「好き・嫌い」の価値判断が少しずつ明確になって、何を決めるにしてもラクになっていた。自分の志向を軸に、フリーランスの仕事も整理して、挑戦したいことに少しずつ取り組めるようにもなった。「空白」の時間は、これからの自分に本当に必要なことと、過去に置いていくべきことを識別するチャンスを与えてくれたのだ

新しい時代を迎えるまで、私たちができること

今、新型コロナウイルスにより仕事に影響が出ている人も多いだろう。在宅ワークへの移行はまだしも、仕事が減ってしまったり、進行中のプロジェクトが止まったり、一時的に仕事を失った人もいるかもしれない。もちろんそれ自体は大変なことだが、ぽかんと空いてしまった時間はこれまでの生活や価値観を見直すチャンスでもある。

━━ 本当に対面でミーティングをする必要があったのだろうか。なんだ、意外とオンラインでまかなえるじゃないか。

━━ 平日の夜は残業か飲み会ばかりだったけど、家族と過ごす夕食の時間がこんなにあたたかいものだったなんて…。今までどうして大切にしてこなかったのだろうか。

━━ これからも今の仕事に取り組みたいのだろうか? もしかしたら今が潮時なのかもしれない…。

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今回のウイルスは、私たちの生活を半ば「強制シャットダウン」した。先行きの見えないなか、混乱と恐怖の日々はしばらく続くかもしれない。だが、私たちは生活を再起動するためエネルギーを貯めている最中だとも考えられる。

医師や看護師、スーパーやドラッグストアの店員さんなど、最前線で仕事を続けてくださっている方々に敬意と感謝の念を抱きつつ、青天の霹靂で訪れた空白期間をしっかりと受け止め、活かす。今はできる限り体をいたわり、自分や家族にとって大切なものを見極め、次なる道を見定めていく時なのだ。

どうせ時代が変わるのであれば以前の古いOSではなく、新しいOSを選択してアップデートしようではないか。

「書く」を学び合い、「書く」と共に生きる人たちの共同体『sentence(センテンス)』にて実施中のコラムリレーに参加しています。今回のリレーテーマは「希望」。希望をつなぐ次なる走者は くらげ さんです。お楽しみに!
#書くと共に生きる #sentence #希望

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