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教養としての歴史小説:今村翔吾著

今村先生の直木賞受賞作「塞王の楯」は引き込まれて読んだいたので、「歴史小説に学べ」「ビジネスパーソン必読の書」のキャッチから、購読しました。

ビジネススクールでも、理論的なことや分析手法の教科とならんで、ケーススタディがあります。ケーススタディは、ビジネスの実録の歴史書ともいえるので、今村先生の「はじめに」が心にささりました。

私は、教養を高める最も有力な手段は、歴史に学ぶことだと思っています。

「教養としての歴史小説」今村翔吾著 p4

年号の暗記などの教科書的な歴史は「つまらない」と感じて離脱してしまう。たしかに私もその一人でした。そこで「歴史小説」。

たとえば、どうして明治維新が起きたのかというのを、歴史の教科書を読むだけで理解するのは至難の業です。そこで親切なガイド役となり得るのが小説です。小説には魅力的な主人公がいて、・・・一緒に歩いていくことで、その時代にタイムトラベルしたような視点で歴史の出来事を理解できるということです。

「教養としての歴史小説」今村翔吾著 p40

スタートアップやグローバルのビジネスの世界では、「失敗から学ぶ」こと、「失敗から学べる組織」が重視されています。企業の採用面接でも、困難な課題に取り組んで成功しなかったが大きな学びを得たこと、はよく聞かれるテーマです。ビジネススクールのケーススタディでも、美しい成功事例よりも、悩ましい失敗事例から学べることは少なくありません。

特に歴史小説は、過去の失敗事例を数多く提示しています。
過去の成功事例から学ぶだけでなく、失敗事例からのリカバリー方法も学ぶことができるわけです。しかも、成功や失敗に至る過程を物語仕立てで、分かりやすく教えてくれます。

「教養としての歴史小説」今村翔吾著 p43

図書分類法で「小説」は、歴史・地理・社会科学・自然科学などの事実中心の分類とは別の、「文学」に含まれ、出版ビジネスでは「文芸」ジャンルになります。歴史小説は、フィクションでしょうか、あるいはノンフィクションなのでしょうか。

簡潔にいうと、歴史小説とは「歴史的な事件や人物をテーマにして、史実をもとに書かれた小説」のことです。

「教養としての歴史小説」今村翔吾著 p50

第六章「歴史小説 創作の舞台裏」では、どのように歴史小説を企画して作っていくのか、『塞王の楯』の事例を中心に紹介しています。歴史から現代へのヒントを得ることが歴史小説の魅力のひとつとして、今村先生は「普遍性のあるテーマ」を大切にされています。歴史小説は、「歴史的な事件や人物」を舞台や登場人物として「普遍性のあるテーマ」をリアルに伝える、ものなのですね。

歴史を描くから過去だけを見ればいいのではありません。歴史小説は現代に通じるテーマを意識することが一つの鍵なのです。

「教養としての歴史小説」今村翔吾著 p192

ビジネスストーリーは、過去の実例をテーマをもって再現して、読者の未来につなげていくもの、と想いを深めました。

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