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【農と哲学の学校ツアー:番外編】新たな仲間に贈る言葉として

"それでも、学園生活は楽しいことばかりではありません。人に傷つけられることも、人を傷つけることももちろんあります___"

2019年2月に訪れて以来、何かと縁のある基督教独立学園という高校があります。

大袈裟に聞こえるかもしれないけど、この独立学園へ訪れたことは私に一つの豊かさをもたらせてくれました。

それは文通相手、という「豊かさ」でした。

私は今、学園生と手紙でのやり取りをしています。独立学園は全寮制の高校で、テレビ・スマホ・インターネットを使うことができません。唯一触れることのできるメディアは新聞のみ。

「あえて不便な生活をするため」に、洗濯も手洗い。お米や作物を育てたり、牛や豚などの家畜も育てて時給も行います。

「この時代にまだそんなことを?」と思わせる生活が、学園生を皆なそれぞれ豊かな哲学者に育て上げるのです。

学園の生活について興味を持ってくださった方は、私が二月に学園を訪問した際に書いたnoteをご覧ください。

私たちは月に大体一往復のやりとりを行なっています。先月、私の手元に届いた封筒の中には、彼女の手紙と別に添えてくれた文章がありました。

それは入学式の祝辞でした。

彼女は「この祝辞は一遍の学園生活が垣間見えると思って」と言って添えてくれました。読んでいて、きっとその通りだと思いました。

そして、私はこれをぜひ他の人にも読んで欲しいと願いました。だから先月のお返事には「あまりの美しい文章に感動しました、どうか私のブログで紹介しても良いでしょうか。もし紹介しても良い場合は名前は伏せた方が良いでしょうか。」と尋ねました。

そして一昨日きた返事の中にOKの旨と「ちゃんと自分の生きた2年間を"証"する場を与えられたな、と思っています」と書かれていました。

今回ここに、基督教独立学園在学生代表の三年生が新入生に贈った祝辞を紹介します。

* * * * *

四月九日 入学式祝辞 

新入生の皆さん、本日はご入学おめでとうございます。
また、これまで一番近くでお子様方を見守り、育ててこられた保護者の皆様にも重ねてお祝い申し上げます。

今日ここで皆さんと再会できることを嬉しく思います。私達在校生とおなじようにこの学園を選び、神様に導かれた皆さんを心から歓迎します。

この地で、先に2年間過ごした者として、私の考えられる精一杯の学園を提案します。

この場所で、夜空や夕日、朝日を見ましょう。裏山に登って叫んでみましょう。

お茶をしましょう。お菓子を食べながら、話をたくさんしましょう。

作業で汗を流しましょう。園芸の野菜、畜産の牛乳、実際に食べて感じてください。

学園の食事は美味しいです。炊事作業は大変ですが、ためになります。

学園の授業は独特です。ただ書いて覚えるというテストのための、受験のための勉強ではありません。最初はカルチャーショックがあるかもしれません。わからないところは、先生や同期、上期にどんどん訊いたください。きっとたくさんのことを学べます。

何でもいいので、本を読んでみましょう。自分の言葉を集めてみてください。

自分の意見を発信してみましょう。言葉を選んで話をみんなの前でしましょう。

音楽を楽しみましょう。大きく歌ってみましょう。とても気持ちいいはずです。

打ち込めることを見つけてください。ここではいろんなことを知っている人がいます。はまったものはとことんやってみましょう。

いっぱい表情を変えてみましょう。時には沈黙もあります。時にはいっぱい泣いてください。そして、それ以上にどんなときも大きな笑顔で笑ってみてください。

それでも、学園生活は楽しいことばかりではありません。人に傷つけられることも、人を傷つけることももちろんあります。

ですが、そこでまた助けてくれるのもここで共に過ごす人たちです。ぶつかることはたくさんあるけれど、助け合って生きていく毎日があります。そんな学園が私はとても大好きです。

それでも。どうにもならないことがあったなら、祈ってみてください。どんな言葉でもいいです。一言でいいです。神様を信じ、頼ってみてください。きっと良い方向に導いてもらえます。

感謝と愛を忘れずに、生きましょう。今日ここでこうして集えていることに感謝します。

これから共に生きるみなさんに。新たな仲間に贈る言葉として。

基督教独立学園へ、ようこそ。

これからの限りある日々が豊かで鮮やかな時間になることを祈って、祝辞とさせていただきます。

* * * * *

この文章を読んで、体験をしてもいない学園生活の情景が浮かびました。

以前書いたnoteにも書きましたが、独立学園は学校の先生全員の満場一致を得た生徒のみが入学できます。この「学園で3年間学ぶ」という導きのある生徒を、時間をかけて祈り求めて選びます。言い換えれば、入学してくる全ての生徒が、はじめから全ての先生に受け入れられているのです。

まだまだ興味の尽きない学校です。

そうそう、彼女が「読書」という授業で内村鑑三の『後世への最大の遺物』を読むそうです。私も次読む本はこれに決めました。彼女から学ぼうと思います。



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