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梅ジュースは夏の季語だね

この初夏、初めてひとりで梅ジュースを作った。これは私が初めて梅ジュースを作るまでのおぼえがき。

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幼い頃から、夏になると母が作った梅ジュースを何十年も慣れ親しんで飲んできた。時にはヘタを取るのを手伝ったり、毎日保存瓶をフリフリして混ぜたりしたりしながら、毎年出来上がるのを心待ちにしていた。


琥珀色の瓶を眺める自分は、毎年、幼い頃の自分に戻っていく。どこか懐かしく、優しい記憶に連れて行ってくれる梅ジュース。
夏が来た!という感覚を毎年思い出させてくれる、私の心をつかさどる大事なエッセンスになっている。
だから、梅ジュースを飲まない夏があるものか、(いや、ない)と思って数十年生きてきた。



でも、そんな私は去年から実家を離れて暮らしている。去年は、母が保存瓶まるまる一個分の梅ジュースを車で届けに来てくれた。でも今年はこのご時世もあるから、それがかなり難しそうだった。

そんな中スーパーの一角には、青々とした梅と、角砂糖が多く陳列されている。それを見るたびに、梅ジュースを飲んだ時のあの感覚が恋しく蘇る。氷を入れて、お水を入れて…綺麗に透き通るあのジュース…
今年も飲みたいなあ…

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梅の時期も後半になり、梅がスーパーから無くなってもおかしくない頃。
実は連日梅ジュースの作り方をYouTubeやネットで調べまくっていた。ただ、梅や保存瓶が少し高いことが気になっていた。梅は1キロ800円〜1000円くらいするし、保存瓶は1500円くらい…(多分高いものはもっとする)、砂糖も買わなきゃだし。そんなわけで結構躊躇してしまっている自分がいた。

しかし、そんな私の優柔不断を跳ね除ける梅ちゃんを見つけた日があった。その日は、正午に散歩をしていたのだが、暑くて暑くて、休憩のために偶然見つけたスーパーに、クールダウンしに入った。体を冷やしながら、ぐるっと売り場を一周して見ている中、端の方に目をやると、一部少し黄色くなった半額の梅があった。それを見た瞬間、私はこれだ!と思った。

「半額…!これなら安いし、これを逃したら、次にスーパーに行くときには梅が無くなっているかもしれないもんな…!」
そう考えながら自分が作った梅ジュースをワクワクしながら作って飲んでいる姿が浮かんできた。そして私は、誰にも奪われないよう即座に梅を手に取り、ニコニコしながらレジに持っていっていた。散歩から帰宅するまで、ジュースを作ることで頭がいっぱいだった。帰宅後すぐに、Amazonで保存瓶をお急ぎ便で購入し、梅のヘタを取って冷凍した。

今思えば、スーパー行ってからの流れが俊敏で笑えてくる。笑 もっと早く作ればよかったな笑

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母に作り方をめちゃくちゃ詳しく聞いて、その日は床についた。ネットで調べた情報によると、カビが生えたとか、発酵してしまったとか、いちいち不安を煽るようなことが書いてあったから、上手くできるかかなり心配だった。

でも、私が小さい頃から梅ジュースを作っている数十年のプロの母に聞いたのは正解だった。心配したようなトラブルも起きずに、どんどん砂糖が溶けてエキスが出てきてくれたから。母には、作り方から経過まで、事細かく連絡していた。母が欠かさず夏に作ってくれた梅ジュースを、私が作ると聞いて、メール越しだけど母が嬉しそうだった気がする。


せっかくなので、梅ジュースの経過を記しておこう。

初日↓
一番上の梅は、しっかり砂糖が被さるようにしておきなね、と教えてくれたので、後で慌てて砂糖を上から追加。

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何週間か後↓
エキスが出て美味しそう〜!
毎日容器を振るのと、香りを吸い込むのが日課になっていた。

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果汁が出た梅は、ジャムにしてみた!
これは私オリジナル。母に自慢してみた笑
甘酸っぱくて美味しい…毎年作りたい!


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売り物もいいけど、自分で手をかけて作ったものはやっぱり何倍も美味しい。そして、年に一回の旬の食べ物のありがたみ、美味しさを噛み締める感覚も大切にしていきたい。

そして、実家を離れて名字が変わっても、味覚や食べ物を通した思い出で家族と繋がってるんだな、と感じる。母が私に繋いできてくれた味も、私が知らない先祖から、少しずつ変化をしながら繋がってきているのかもしれない。


将来もし私に子供ができた時、そんな味が作れるかな。子供が独り立ちしたとき、ふと、「お母さんが作ってくれたあれ、自分も作ってみたいな」、なんて思ってくれたらいいな、そんなことを考えて、未来が楽しみになった。

何度も経験する夏。だけどその年その年によって、こんな風に自分の中に新たな考えが生まれてる。来年の夏は何を考えるかな、楽しみだね。


#エッセイ  #料理 #梅ジュース

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