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御社じゃなければいけない理由なんてありません。という話

ちょっと前に、

就職の面接で、
「弊社でなければいけない理由を教えてください」
という質問をされるけれど、そんなものはない!

というようなXの投稿が話題になった。

僕もそう思う。

唯一無二の企業なんて、本当に一握りだ。
ほとんどの企業への志望理由なんて、

“自分が受かりそうなレベルで、待遇もそれなりだったから”
とか、
“比較的向いてそうな職種を片っ端から受けているだけ”
とか、そんなもんだろう。

それを馬鹿正直に答えたら落とされるもんだから、みんな取り繕った返答をしているだけだ。

企業側も、応募者が取り繕っていることはわかっていながら、それを聞くのである。

とても、実りがあるとは言い難いやり取りだ。


これについて、マツコ・デラックスさんがこんなことを言っていた。

「面接で何を質問されるかというのは、あまり重要じゃないわ。どれだけおしゃれに返答できるかを見ているんでしょ」

この発言もネットで話題になった。

確かに、それも一理ある。

どれだけ機転を利かせた回答ができるか。
応募した側は、それくらいの気持ちで面接に臨んでもいいのかもしれない。

ここまでは別にいい。
問題はこの後である。

この発言に対して、管理職や人事担当を名乗る複数のアカウントまで、

「本当それ」
「さすがマツコ。深いわぁ」

と、賛同をしていたのである。


いやいやいや。
お前らは違うだろう。

これは、個人事業主である芸能人が、第三者の立場で言っているから通用する言葉である。

管理職や人事担当のお前らは、
採用をするうえで重要な質問を考えろ
そして、
自社に合う人材を見極めるための最善の方策を考えろ。

「さぁて、どれだけおしゃれに回答できるかな?」

と、あえてその質問をしているわけではないだろう。
もしそうだとしたら、品位を疑う。

お前らは、的を得た質問ができていないことを、もっと恥じなければならないのだ。

そして、こういうやつらに限って、

「今年の新人外れだわ」

と文句を言ったり、

「面接の時間だけで、どんな人材かを見極めるのは無理だな」

と言ったりしているのである。


そりゃ見極められないだろう。

だって、クリティカルな質問すら考えられず、応募者の「おしゃれさ」とか「機転」とやらに依存しているんだもん。

だいたい、面接で判断するのが無理なら、面接にこだわる必要すらないのだ。

“採用者を決める方法は面接でなければならない”
なんて法律はない。
面接以外の方法を探ってみればいいだけなのである。

なのに、毎年のように

  • 馬鹿の一つ覚えみたいに面接をして、

  • そこで同じような質問をして、

  • 同じような選考基準で選抜して、

  • 「今年の新人は外れだ」「面接だけじゃ限度がある」「最近の人はわからん」と文句を言う

のである。

わからん選抜方法を継続してやっているんだから、わからんままに決まっているだろうが。

そして、人事担当の30代、40代くらいのやつらがこう言うのである。

「最近の若い子は本当にダメ」
「Z世代は難しい」

おいおい、お前らが入社してから、せいぜい数年か十数年しか経っていないだろう。

何が「最近の」だ。
そんなに目まぐるしく変わるはずがないだろう。

そんでもって、
「最近の若者は」みたいな言葉、もういい加減に止めにしろよ。

「今の60代が新人の頃の新聞にも『最近の若者は…』という言葉が載っていた」
「古代の壁画にも書いてあった」

みたいな話を聞いたことがあるだろう。
さすがに、こういう情報に触れる機会がある今になってもなお、その言葉を使ってしまうのはもうダサいって。

「理解できない」だけのことを、「ダメ」という言葉でまとめることこそ、全然おしゃれじゃない。
ちょっとは機転を利かせてみなさいよ。

あと、
“弊社でなければいけない理由を教えてください”
を、新卒の面接だけでなく、
中年の転職の面接
でも聞く極悪企業があるけれど、尚更あるわけがないだろうが。

そこじゃなきゃいけないなら、もっと若い段階で行くに決まっている。

今働いている会社よりもマシっぽいところが募集してたから応募したんだよ。わかるだろう。

とにかく、日本は短期離職への風当たりが厳しい世の中なんだから、お互いのミスマッチを防ぐためにも、採用の判断はもっとしっかりやった方がいい。

「たくさん採用しておいて、その中から少し生き残ればいいや」

と、カエルやマンボウの産卵みたいなことをするんじゃないよ。

もとを辿れば、
“採用する側の勘違い”
が元凶なのだ。

面接を受ける人間というのは、好印象を持ってもらおうと低姿勢でやってくる。
人事担当や、面接官となる管理職などは、それだけ「低姿勢の人間」に多く接する機会があるということだ。

そして、それによって、

「自分が優れた人間である」

と勘違いしてしまいしがちだ。

実際は、ただ「採用にかかわる仕事をして給料をもらっている」というだけなのに。
ただの役割分担でそれをやっているだけなのに。

別に偉いわけでもなく、優れているわけでもない。
ただのサラリーマンなのである。

この勘違いから生まれる潜在的な上から目線こそが、
“弊社じゃなければいけない理由”
みたいなセンスゼロの質問をしてしまう大きな要因なのではないだろうか。

そもそも、募集側と応募側、立場は対等だ。

企業「人を雇いたいと思いますが、働きたい人いますか?」
応募者「働きたいです」
企業「全員雇うわけにはいかないので、うちに合いそうな方を選ばせていただきますね」

これだけの話なのである。

だから面接を受ける時も、必要以上に委縮する必要はない。
立場は対等だし、何なら相手だって、
ちょっと前に採用された元応募者
なのだ。

面接に臨むときというのは、何とかして受かろうと必死になってしまう。

でも、上から目線だったり、おかしな質問をしてきたりするようであれば、入社をお断りするくらいの姿勢で臨んだ方がよいのかもしれない。

就職や転職が決まらないことはキツいかもしれないが、もっとキツいのは、合わないところで働き続けた挙げ句に、潰しが効かなくなってしまうことなのだから。

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