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5. ファイザー社ワクチンの副作用、心筋炎は何人にひとり?


ファイザー社のワクチン接種を受けた後に、発熱・頭痛・倦怠感などの副反応が出る場合があることは、多くの方が経験しているかと思います。
 
 最近、それより重篤な、心筋炎(心臓の筋肉の炎症)などの副作用(有害作用)の報告が出ています。どのくらいの頻度で生じるのか。ワクチン先進国イスラエルからの報告を紹介します(ニューイングランド医学誌2021年8月25日オンライン公開)。

Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting

 
 イスラエルで集団接種を受けたワクチン群約88万人と、性別・年齢・基礎疾患などの特性をそろえた同人数のワクチン未接種群(比較群)で、ワクチン接種後42日後までの、25種類の病気の発生率を比べました。
 
その結果です。
・ワクチン群の頻度が比較群より高かったのは4つ。心筋炎(3.24倍)・リンパ節腫脹(2.43倍)・帯状疱疹(1.43倍)・虫垂炎(1.40倍)、でした。
・10万人あたりの心筋炎の頻度は、ワクチン群が2.24人、比較群が0.64人でした。
 
 ワクチン群の心筋炎は、およそ5万人に1人。
 この数字は、はたして多いのか、少ないのか?
 
 その判断の参考のために研究グループは、コロナに感染した約17万人(感染群)と、特性をそろえた同人数の未感染群で、おなじ25種類の病気の発生率を比べました。
 
さて、その結果です。
・感染群が未感染群より高かったのは15。急性腎障害(14.83倍)・貧血(1.77倍)・不整脈(3.83倍)・脳卒中(2.12倍)・深部静脈血栓(3.78倍)・頭蓋内出血(6.89倍)・リンパ球減少症(9.84倍)・心筋梗塞(4.47倍)・心筋炎(18.28倍)・好中球減少症(2.24倍)・その他の血栓症(4.97倍)・心膜炎(5.39倍)・肺塞栓(12.14倍)・失神(2.09倍)・血小板減少症(4.24倍)、でした。
・10万人あたりの心筋炎の頻度は、感染群が10.34人、未感染群は0.34人でした。
 
 なにが分かるでしょうか?
・ワクチンを受けた場合の心筋炎は、およそ5万人に1人。
・コロナに感染した場合、合併症として生ずる心筋炎はおよそ1万人に1人。ワクチンを受けた場合の約5倍。
・コロナに感染した場合、感染しない場合と比べて、より重篤で致命的な脳卒中・頭蓋内出血・心筋梗塞・肺塞栓など多数の病気のリスクが上がる。
 
 心筋炎など、ワクチンの有害作用は心配です。
 いっぽう、その影響を考えるときには、コロナに感染した場合の合併症のリスクと、いっしょに合わせて考える必要がありそうです。それを数値で示した点が、今回の論文の意義でしょう。
 
 さいごまでご覧いただき、ありがとうございました!
 
(10万人あたりの発生率は、論文の表の数値をもとに、独自に計算しました。)

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