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Duolingo 雀語

朝方、登ってきた太陽の光が私のすっぴんを照らし、空を青紫に染めていた。
太陽の周りだけが白っぽく見えて、目を窄めたのを覚えている。
そこは建設現場の直ぐ側で、鉄パイプの柵、あるいは足場の周りをひらひら蝶々みたいに飛んでいた。
本当はもっともっと早いはずなのに、羽ばたきに見とれて一度一度の羽のひらめきがよく見えた。
鱗粉なんてないのに何故かとてもきらめいて見えて。
近づいても逃げることはなく。
人馴れしていたのだろうか、近づいてくる様子さえ有った。
私が手を伸ばすと、妖精のようにきらめきを身にまとい、歩道すれすれを飛んでいった。
何をしていたのかな、と思うことも、ある。
出勤の最中、足元1mに雀をみつけた。

私が出勤しようとしていたその時、雀の「すずめ」に仕事はない。
きっと私のようなしがらみはなくて、人生ならぬ雀生のしがらみがあるのだろうと思う。

さて。
ウィキペディア曰く、雀とは
スズメ、すずめ、学名 Passer montanus )は、スズメ目スズメ科スズメ属に分類される鳥類の1種。人家の近くに生息する小である。
とのことだ。
スズメ目スズメ科スズメ属
どうだろう。
最高に自立していると言えるのではないか?
自立、という言葉が正しいのかは知らないが。
独立、という意味で言うならば自立と言えるだろう。
一つの生物分類上において、一種の頭を貼るだけのことが果たして人間にあるだろうか。

我々人類は自分のことをどう分類しているかあなたは知っているか?
「ホモ・サピエンス」と言うのは甘い。
それは雀に当たるPasser montanus、であってHomo sapiensはそう、学名である。
聞いたことはあるかもしれないが霊長類、という分類があるがそれとも違う。
前例に習うならば人間は霊長目ヒト科ヒト属に当たる。
そう、霊長目であってヒト目ではない。
もっというと霊長目とはサルと人間を含めたもので、便宜上人間以外をサル目と呼称する際もあるようだが、人間自体に於いてヒト目と呼称することはない。
すなわち我々人類は万物の霊長に有って分類がけを行って、その他の猿と同じ存在であり、対して雀はその分類において遥かに他の鳥類とは一線を画した存在だということだ。

人間社会では、特に日本において昨今は自立、だの多様性、だのという言葉が多く見受けられるようになったと感じる。
しかしてその本質とはなんだろうか。
雀に一例をもっていうに、きっとそれはすずめのことなのではないか。
私が出会った雀が「すずめ」でなくて、「じゅん」だったなら。
きっと一歩踏み出した私のに驚いて逃げて行ったかもしれない。
あるいは私と目を合わせて来たかもしれない。
しかし私が出会ったのはすずめであった。
彼、あるいは彼女は自分のことを特に主張するわけでもなく、ただ自由にしているだけで雀からすずめ足り得た。
真に多様性とはそのようなものではないだろうか。

自己主張ではなく漫然とした様子そのものに於いて自己と他を区別するものこそが多様性というのではないか。
しかしこれにはまだ要素が必要である。
そう、雀がすずめたり得たのはすずめの力ではないのだ。
すずめがすずめが足り得たのは私がすずめと出会い、私が彼、あるいは彼女に見とれたからに過ぎない。
そしてこうしてnoteで私が彼、あるいは彼女をすずめと呼んだからこそ、すずめは雀の中の多様性から飛び出て、雀の一匹ではなくてすずめとして存在しているのだろうと思う。
すなわち多様性とは自分だけでは成り立たず、他者が自分を観測した際に観測者が観察対象に対して想起する感情、あるいは個体識別のために用いる情念と定義することができるだろう。

私が今このようにnoteを書いていることもそう。
私が私に多様性を感じるために必要なことなのかもしれない。
私は以前までのnoteを書かなかった自分とは違う。
行動しなかった自分とは違う。
そう思いながらこの文章を書くことが、この文章を読んだあなたが私を認識し、その他の人間と区別することが多様性なのだ。
私は果たして貴方をみとれさせることができるだろうか。
貴方は私に通りがかるだろうか。
貴方は今日この日出勤するか?
人生は毎日が選択の連続だというが、実際には違うのだと思う。
選択をして人生を送るのではなく、選択を選択とせず、漫然とある日々において、それぞれを独立させるための工夫を凝らすことが人生なのではないだろうか。

ああ、すずめよ
私は雀語を覚えたいと思う。
きっと雀語にも方言やら人間の及びもつかない名詞があったり何かしらの様々が有って、それはそれはとても面白いと思うのだが。
ああ、すずめよ
今日も明日もきっといつかも出会わない、出会ってもわからない雀のすずめ。
私は君があのとき日本語を話しても驚かなかったろう。
君が立って歩いても驚かなかったろう。
どうか、君の前で雀語を使って。
驚かれないような人間になりたいと思うよ。
私目私科私属、などとは言わない。
霊長目ヒト科ヒト属のわたしとして、君の目に止まっていたら。
君は雀語でnoteを書いていたか?

ちゅん、と一人部屋で鳴く
こんにちは、と一人木の上で呟く。

さて、さて。

なんななど

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