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日本の入管問題 〜難民・外国人を取り巻く諸問題〜

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難民・外国人を取り巻く諸問題について包括的にまとめた連載記事です。 なぜ日本人が難民・外国人労働者に対する様々な差別・人権侵害を自分事としてとらえる必要があるのかに迫ります。
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記事一覧

連載企画①難民とは誰か

まずは、難民・外国人を取り巻く諸問題について包括的にまとめた記事の連載を行います。 この問題が起きている背景を含めて知っていただければ、なぜ日本人が難民・外国人労働者に対する様々な差別・人権侵害を自分事としてとらえる必要があるのか、腹落ちしていただけると思います。 難民・外国人を取り巻く諸問題に係る連載記事一覧は以下のとおりです。 1)難民とは誰か 2)日本の難民受け入れ状況とその問題点 3)日本の外国人労働者受け入れ状況とその問題点 4-1)在留資格を持たない人々を取

連載企画②日本の難民受け入れ状況とその問題点

以下のグラフからもわかるとおり、日本は難民条約加入国であるにも関わらず、難民として庇護を求める申請をする人(以下、「難民申請者」という。)の数に対して、難民として正式に国から認められる人の数が異常に少ない状況が続いています。2016年以降は毎年1万人以上の人々が難民として庇護を求める申請をしていますが、日本で難民と認められる人々は毎年わずか数十人で、2019年においても認定率はわずか約0.4%です。 図1 日本における難民申請者数、認定数、及び認定率の推移 (出入国在留管理

連載企画③日本の外国人労働者受け入れ状況とその問題点

 外国人労働者の管理や難民受け入れなどの入管行政は1980年代半ば以降、労働行政に従属して行われてきました。この背景にあるのは、1980年代以降のバブル期に起きた深刻な労働力不足です。 1.深刻な労働力不足を補った非正規滞在者  1985年のプラザ合意(ドル安を容認する合意)後の円高不況を克服するため、日銀は低金利政策をとりました。その結果、市中に低金利のお金が溢れ、1986年から日本はバブル経済に突入しました。空前の好景気の中、いわゆる3K(キツイ、キタナイ、キケン)と呼

連載企画④差し迫った危機:収容送還専門部会の提言とそれに対するBONDの立場

入管は、出入国管理政策懇談会の中の「収容・送還に関する専門部会」が2020年6月発表した「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に基づいて法案を準備・閣議決定し、国会への法案提出しようとしています。 提言の趣旨は「罰則を設けることで送還を促進しよう」というもので、具体的には送還忌避者に罰則を設けること、難民申請中でも送還できるようにすること、仮放免者の逃亡に罰則を設けることなどを勧めています。 しかし思い出してください。これまでの記事で解説したとおり、入管のいう送還忌避

連載企画⑤在留資格を持たない人々を取り巻く状況 – 退去強制・収容

   難民を含む外国人が入管法に違反(不法入国、不法滞在、刑事事件を起こす等)すると、退去強制の対象となり、全国の入管センターもしくは地方入管(例:茨城の牛久、東京の品川、長崎の大村)にある外国人収容施設に収容され、退去を迫られます。ここで帰国できる外国人は帰国しますが、難民、家族が日本にいる、長年日本に住んでいる等の帰国できない事情のある外国人は、事実上無期限で収容されます。また、入管の業務のひとつは、この退去強制令書が発付された外国人を速やかに送還することであるため、特に

連載企画⑥在留資格を持たない人々を取り巻く状況 - 仮放免

 仮放免とは、退去強制という行政処分を受けて入管の外国人収容施設に収容されている人に病気その他やむを得ない事情がある場合、一時的に収容を停止し一定の条件を付して,例外的に身柄の拘束を解く制度です。仮放免となっている外国人(以下、「仮放免者」という。)は2018年時点で3641人います。また、仮放免されている期間も長期化する傾向にあります。  上記のグラフからわかるとおり、長い人だと仮放免期間は10年以上になります。しかしさらに驚きなのは、この仮放免期間中、仮放者は就労権なし