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連載企画④差し迫った危機:収容送還専門部会の提言とそれに対するBONDの立場

入管は、出入国管理政策懇談会の中の「収容・送還に関する専門部会」が2020年6月発表した「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」に基づいて法案を準備・閣議決定し、国会への法案提出しようとしています。
提言の趣旨は「罰則を設けることで送還を促進しよう」というもので、具体的には送還忌避者に罰則を設けること、難民申請中でも送還できるようにすること、仮放免者の逃亡に罰則を設けることなどを勧めています。

しかし思い出してください。これまでの記事で解説したとおり、入管のいう送還忌避者は、実際は難民、家族が日本にいる、長年日本に住んでいる等帰国できない事情のある人ばかりです。彼らに対して刑事罰を科したところで、いったい何が解決するというのでしょうか?

「入管での収容」→「送還忌避」→「刑事罰による刑務所での収容」→「入管での収容」→「送還忌避」→「刑事罰による刑務所での収容」…

この非人道的極まりないループを永遠に回すことになるだけではないでしょうか?入管の言う送還忌避・長期収容問題は解決しないばかりか、自国に帰るに帰れない人々の人生はさらにめちゃくちゃになります。再び自殺者や餓死者が出かねません。また、そもそも退去強制処分となっても帰国を拒否する人たちが増大しているのは、入管がこの間、国際基準に基づいた難民受け入れや、各外国人の事情に配慮した在留特別許可(不法滞在等で退去強制事由に該当し、本来であれば日本から退去強制させなければならない人を様々な事情を考慮して例外的に日本での在留を認める措置)を行ってこなかったからです。

私たちは、入管の進めようとしている「送還一本やり」の強硬方針では全く問題の解決にならないと考えています。状況を悪化させるだけの法律を政府に作らせて良いのでしょうか?もっとずっとまともな方法があります。

それは、送還忌避・長期収容者が増えている根本的な原因の除去、送還忌避をする人たちが増大する原因の除去、つまり①国際基準に基づく難民受け入れと②在留特別許可を与える基準の大幅な緩和です。これらを行えば、難民として日本に庇護を求めてきた方は難民として正式に認められ、帰国の恐怖におびえることなく安心して日本で暮らせるようになります。日本に家族が要る方や長年日本に住み働いてきた方は、再び仕事に就いて収入を得て家族を支え、安心して暮らすことができます。

【参考】8・22集会 基調報告&声明文

http://try-together.com/report/kicho_0822.pdf

http://try-together.com/report/seimei_0822.pdf

BONDは引き続き団体コンセプト「入管からの救出、在留資格の獲得を支援し、外国人との共生社会を目指す」のもと、政府の外国人政策を正すべく、活動を続けていきます。

読者の皆様におかれましては、是非この問題に注目いただき、一緒に当事者の立場に立って、現状を見て、正しい解決に向けて、多くの方にも関わっていただきたいと考えています。