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インスタント桃源郷


【あらすじ】

人類にとって良くない物質をまとっているとされる、小さな彗星が落ちた東京を舞台に、
9つの物語が炸裂し、共鳴し、交差する。
40km離れた実家へ徒歩で帰ろうとする女子学生。人のいなくなった街を蹂躙する野良猫。
誰も聞いていないラジオを、アパートの一室から配信し続ける男。
なんでもない人たちの、とりとめのない断片を、カップラーメンを待つくらいの時間でお届けする連作短編ラジオドラマ。


脚本・演出:こんにち博士 コメント


桃源郷という言葉は良いです。浪漫があって、サイケデリックで、なにより「とーげんきょー」という響きが、どうしても口に出したくなってしまいます。
今回の作品は、昨今の情勢により、自宅に籠もるようになってから書き始めた作品です。誰とも会わず、部屋から出ず、刻々と過ぎる毎日の中で「いまこの感覚を残さなくては。」と、突き動かされるようにパソコンに向かったのが、今作が生まれたきっかけです。
9人が紡ぐ物語には、それぞれにとっての桃源郷が出てきます。手が届かず恋い焦がれるような桃源郷があれば、当たり前すぎて今そこにあることすら気づかない桃源郷も、あることでしょう。
今回のラジオドラマが、皆様にとっての桃源郷になれば幸いです。たとえそれが、小さくか細いものであったとしても。


エピソード(全9話)


#0 おーい彗星、何億光年?
声・ユガミノーマル

【あらすじ】
 死んだ夫が遺してくれた、望遠鏡。夫の夢は、新しい星を見つけることだった。アンタの夢を叶えたくて、毎晩毎晩、望遠鏡をのぞいてるんよ。今日こそは、見つかるんかなぁ。


#1 クロールひと掻き、息継ぎは苦手
声・瀬安勇志

【あらすじ】
マッチングアプリで知り合った、ひとつ年下の女の子。顔も知らないその子のことを、こんなにも好きになるなんて。だから突然電話が繋がらなくなって、不安になることは、仕方のないことだと思う。


#2 回送電車は桃源郷ゆき
声・古田絵夢

【あらすじ】
どうやら私は、遭難してしまったようです。
落下した彗星の影響で、電車もバスもずっと運行休止。では歩いて実家へ帰ろうと思ったのが、運のツキ。もう二度と、私はどこにも行けないのでしょうか。


#3 好物は鮭、名前はまだ無い
声・こんにち博士

【あらすじ】
私は、東京駅を住みかとする猫である。人間のいない日が、こんなにも続くことは初めてだ。そんな中、仲間たちは何かを企んでいる様子であった。
ひとつ、汽笛が鳴る。それが私の、小さな旅の始まりだった。


#4 左手に瓜、右手に砲丸
声・瑠香

【あらすじ】
高校最後の春休み。インターハイが中止になる、らしい。終わっちゃったね、私の夏。さよなら、陸上ライフ。でもどうして、ホッとしているんだろう。
東京のはずれにある私の家。今日もいつもの日常のはずだった。


#5 馬鹿で、のろまで、夕日も見ないで、
声・和久井千尋

【あらすじ】
非常事態宣言が出され、皆が家に籠るようになったけど、引きこもりの俺からしたら、ただの日常だ。
今日もラジオを聴くためにチューニングを合わせる。SNSを荒らす。誰か俺に、気付いてほしくて。


#6 退屈曜日はあくびも出ないし
声・九條えり花

【あらすじ】
深夜のコンビニで働くフリーター。26歳。恋人もいないし、夢もない。社会情勢?興味もない。ちょっと焦ってはいるが。
けれど、私は出会ってしまった。万華鏡みたいな、たんぽぽみたいな、あの球体は、なんなのだろう。


#7 我慢はできるか、テレパシーさえ
声・TGW-1996

【あらすじ】
彗星は、突如として総理の実家に直撃した。つまりは、私の家である。そこに現れたのは、巨大なケガニ。私の飼っている「花子」にそっくりだった。
駆除か、捕獲か。私史上最大の戦いが、始まるのだった。


#8 ひかりの速さでうなるタコ部屋
声・井上耕輔

【あらすじ】
東京の片隅。アパートの一室から、誰も聴いていないラジオを配信する男がひとり。そんな男の元に、一通の手紙が届く。
おい、聞いてんだろ。お前に言ってるんだよ。俺の、ラジオを。なあ、聞けよ。


#9 梅雨前線 追い越して蟹
声・ユガミノーマル、瀬安勇志、古田絵夢、こんにち博士
  瑠香、和久井千尋、九條えり花、TGW-1996、井上耕輔

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【あらすじ】
1つの彗星と9つの桃源郷、そして無数のピースサイン。それらは時に、炸裂し、交差し、共鳴する。
隣の人間には私とは違う物語があって……だけど私たちはこれで、世界と繋がることが出来る。

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