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(南海沿線のいいしごと#3)大阪府堺市:FactorISMより

10月21日~24日に開催されたオープンファクトリー「FactorISM2021」。今回はイベントを開催した堺市の企業9社から、小泉製作所、角野晒染、馬場刃物製作所の3社を紹介します。

【オープンファクトリーとは】
近隣のものづくりの作り手等が主体となって同じ日に工場を公開し、お客さまに見学やワークショップを体験してもらうイベントです。全国各地で開催されており、大阪においても堺市や八尾市など広域で連携した「FactorISM」の他、2021年11月には「貝塚オープンファクトリー2021」等が開催されます。

(小泉製作所)小泉製作所は常にオープンファクトリー! 作れるものはなんでも作ります!

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最初は、七道で金属加工の工場を営む小泉製作所から紹介します。社長の小泉 達哉(こいずみ たつや)さんから、ものづくりやオープンファクトリ―に対する熱い想いを語っていただきました。

「うちの会社は常にオープンファクトリ―をしています。いつでも工場を開いていて、いろんな人がフラッと立ち寄ってものづくりの相談に来れるようにしています。小泉製作所は、『ものづくりの学校』とも言えます。求められたものを私たちが作ることだけでなく、実際に工場を訪れた方に技術を教えてあげることもあります。」

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(小泉製作所)ゴールはお客さまの“ものづくりの困りごと”を解決する事。

「自社製品を推したいわけではなく、こうやったら作れる、とみんなに教えてあげたい。小泉製作所のゴールは、ものづくりに関して困っている事を解決することなんです。だから、小泉製作所で提供できなければ、別の業者を紹介します。そんな風に相談に乗っていたら、色々な人が来てくれるようになりました。業者と業者をつなぐことも私たちの役割の1つなのかもしれいないですね。」

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(小泉製作所)入社2日目の社員を案内役に任命!?その意図や効果は?

「オープンファクトリーを開催することについて、新入社員に対しては事業内容の理解、元々いた社員の方々に対しては仕事のモチベーションアップを図る意図がありました。新入社員の方は案内の練習をする中で、一通りの工程を勉強してくれましたし、元々いた社員に対して熱心に質問し、新入社員が純粋に感動してくれることで、新入社員と元々の社員の両方のモチベーションを上げる意図がありました。いわば、『勝手に社内オープンファクトリー』をしたんです。」

【実際に入社2日目で案内を担当した松原さんから】
「正直、なにも分からないまま案内役を任されたのですが、先輩方がお客さまに説明しているのを見て、自分も学ぶことができました。自分の担当以外の業務工程を見る機会は、オープンファクトリーの日以外にはなかなか無いと思うので、ホント良い勉強になりましたね。」

小泉製作所では、常に工場を開放し「見せ方」を研究しているからこそ、どんな会社のどんな要望にも応えられるようになったとお話ししていました。実際に、事務所のいたるところに様々な形の加工された金属や製作された商品のサンプルが並んでいて「なんでも作ります!」という想いが伝わってきました。

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(角野晒染)晒から製造までを担う角野晒染の歴史

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続いては津久野町に和晒の工場を構える角野晒染です。こちらでは4代目社長、角野 孝二(かどの こうじさん)が取材に応じてくれました。

「角野晒染は、堺の伝統産業である「注染和晒(ちゅうぜんわざらし)」の技法を使った手ぬぐいの会社です。注染和晒とは手ぬぐいを作る技法のことで、「注染」と「和晒」に分けられます。「注染」とは布の上に染料を注いで着色する多色染めの技法、「和晒」とは原反(生なり)の脂分や不純物を除去・漂白し布の品質を均一にする技法のことです。」

「角野晒染は、和晒の工程を専門に、昭和6年の創業から現在まで90年以上、営業を続けています。周囲のほとんどの会社が注染のみ・和晒のみを本業とする中、角野晒染では自社製品の製造まで行っています」

(角野晒染)楽しかった仕事を辞め、4代目アトツギとして角野晒染に入社。
社長に就任後、和晒のブランドを立ち上げ!

「私はドラッグストアの卸売の会社に就職した後、27歳の時に先代から『継がないなら角野晒染はたたむ』と話があって角野晒染に入社、5年間の修業を経て社長に就任しました。」

「毎月新しい商品がでてくるドラッグストア業界とは違い、あまり変化の無い手ぬぐいを扱うのは最初は退屈でした。手ぬぐい自体の需要も減ってきていましたしね。そこで、和晒で製品を作り、ブランド化しようと思い立ち、若い世代に訴求するためにアパレルブランド『MUSUBI』を立ち上げました。」

(角野晒染)「てぬぐいフェス」の開催から「雪花絞り染め体験工房」のオープンへ!

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「手ぬぐいと浴衣が堺の地場産業なのに知名度は無かったので、2017年に『てぬぐいフェス』を開催しました。手ぬぐいの技法を紹介したり、ブランドのデザインコンテストや浴衣のファッションショーをしたりしたのですが、中でも絞り染め体験は行列ができるのほど人気でした!これ程に人気なら、もしかしたら事業化できるかも、と考えて2021年に『雪花絞り染めの体験工房』をオープンしました。」

「工房はとても好調で、8月には15稼働日で約130名のお客さまに来ていただきました。コロナが収まれば、目途の立つ事業として成り立ちそうです。また、この工房は収益化と同時に、発信の機能も果たせると考えています。人気が出ればメディアに取り上げてもらえ、和晒や手ぬぐいの知名度も上がるからです。今では、この工房がうまくいったことから、小学校等への出張ワークショップも考えています!」

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実は、ライターも取材中に体験をさせてもらいました!素人が作ったのですが、完成品だけではなく、作る工程もとっても綺麗です!体験工房、おススメですよ!

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(馬場刃物製作所)スペシャリストになるために刃物業界へ!

馬場さん

最後に訪問したのは、七道駅より少し東側、阪堺線の神明町駅の近くに工場を構える馬場刃物製作所です。ここでは、4代目のアトツギである馬場 崇史(ばば たかし)さんに、刃物づくりやオープンファクトリ―に対する想いをお話しいただきました。

「馬場刃物製作所に入社して今年で14年目になります。元々は雑貨の販売業をしていて、いろいろな商品を売っていましたが、ずっと『一つのもののスペシャリストになりたい』という想いがありました。そのタイミングで社長である父に誘われて入社することになりました。」

(馬場刃物製作所)全てを手作りで行う堺の刃物

「堺は、日本の三大刃物産地の一つと言われています。特に、堺の刃物は手作りにこだわっております。刃付け・研ぎの工程では、鍛冶屋さんから鍛造された刃物の原型のゆがみ・ひずみを取る工程である「ひずみ取り」が優れていると言われています」

取材中にもこの工程を見せていただきましたが、素人には違いが分からないほどの小さなひずみを、何度も何度も根気よく直していました。

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(馬場刃物製作所)堺の刃物、海外ファンも増加中!

「堺の刃物は、日本国内だけでなく海外ファンも増えてきていて、馬場刃物製作所ではドイツやフランスから来日した技術者の方に働いてもらっています。」

「馬場刃物製作所は元々知名度がそこまで高くなかったのですが、ニューヨークのレストランショーに出展したこと等もあり、嬉しい事に受注が追い付かない状態にまでなりました。もちろん、少しでも早くお客さまに届くように、毎日職人さんたちと頑張っています。」

(馬場刃物製作所)FactorISMは今まではできなかった「個人のお客さまに向けた発信の場」

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「元々、馬場刃物製作所は新しいことに挑戦するタイプの会社ではありませんでした。しかし、いつかは卸しだけでなく個人のお客さまにも販路を開拓したいという想いがあり、そこに向けて刃物づくりを発信するためFactorISMへの参加を決めました。実際に研ぐ工程などを見たお客さまが感動して『職人さんってすごい!』と喜んでくださるととても嬉しいです。今すぐに効果が出るとは考えていませんが、続けていこうと思っています。」

腕の良い職人さんがだんだん減ってきてしまっている刃物業界ですが、実は日本国内だけでなく、海外からも注目されています。刃物作りの現場はなかなか見学できないですが、FactorISM等で機会を設けて、新しい風を吹かせようと奮闘を続けておられます。

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あとがき

南海電鉄では、沿線で働く人を増やすことを目的に沿線企業と一緒に成長していくプロジェクト『#BIZ TAG NANKAI(沿線企業魅力共創プロジェクト)』の一貫でオープンファクトリーを支援しています。FactorISMに協力会社として参加する中、まち工場へ直接伺い、リアルで見たり聞いたりしていて、そのバイタリティーには驚かされっぱなしでした!今回、ご紹介させていただいた小泉さん・角野さん・馬場さん、そして紹介できなかった方々も含め、多くの方がアトツギとして家業を継ぐだけでなく、それぞれの業界・地域の魅力を発信するために新しいことに挑戦されている姿にはとても感動しています!FactorISM2021は終わりましたが、来年のFactorISMに向けて、既に動き始めている会社もあります!そして、今週末には貝塚オープンファクトリーも開催されます。

私たちが出会った近くにあるけど知らなかったまち工場の想いと技術の高さ、足を運んでみてはいかがでしょうか?


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