短評:母子のつながりの再構築を、繊細な語り口で描いた作品 〜 にしだかな 「階段下の猫」

「階段下の猫」(にしだかな著、少年画報社)を読む。「おとなのねこぱんち」に連載された作品で、完成度の高い一作。

古い集合住宅に父母とともに住む姉妹。そのもとに、実の母親が帰ってくるところから物語は始まる。

姉妹の父母は、ほんとうは祖父母であり、実の父親は借金問題でトラブルを起こし離婚してしまい、母親は子どもを祖父母に預けていたらしいことが、少しずつ分かってくる。

母親と姉妹の母子のつながりが再構築されてゆく、その流れが、隣人たちや半分ノラ状態で集合住宅に飼われている猫との交流をまじえて描かれてゆく。

語り口は繊細かつ巧みである。姉妹の家族背景は直接説明されるのではなく、登場人物の会話の端々から少しずつ垣間見えてくるしかけになっている。

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