短評:花火のように散ってゆく人狼たち 〜 新藤兼人 監督「狼」

ラピュタ阿佐ヶ谷「狼」1955年、新藤兼人 監督。

終戦後、さまざまな理由で食い詰めた人たちが保険外交員の募集を受ける。成績が良ければ正社員登用というフレコミだが、実際は消耗部隊のコマとして使い潰されるだけである。後がなくなった男女5人は郵便局の輸送車を襲い、現金を強奪する。

消耗品として人を集める保険会社の遣り口 説明会の都度都度、玉子丼を用意して「まあ、食べてください」。

「狼」になった5人がそれぞれ背負っている重荷がきちんと描かれるのであるが、それぞれ、花火のように散ってゆく。ひとりひとり、立ち去って行くのがさみしい。

最初は黒澤「天国と地獄」を思い出したが、8年ほど先んじている。当然、アメリカンニューシネマはずっと後。アリと芋虫のイントロは「ワイルドバンチ」みたいだがこれもずっと後になる。

伊福部昭のテーマ曲はゴジラ的、というか、ストラヴィンスキー「春の祭典」に近い味わいがある。

この記事が参加している募集

コンテンツ会議