短評:「姿なき目撃者」日高繁明 監督、1955年

シネマヴェーラ 「姿なき目撃者」日高繁明 監督、1955年。越路吹雪の演じる女中が、久慈あさみの演じる勤め先の奥方が自分の元恋人と不倫していることを知り、隣家の少年に隠し撮りさせる。ところが不倫が発覚してしまい、旦那はひょんなことで不倫相手を死なせてしまい、もみ消しに走るというミステリー。

前半はレディスコミック的なミステリだが、後半は少年が追われるサスペンスになる。全年齢層向けというか、家族で観に行ってもどこかしら楽しめる造りになっているようだ。TVがなかった時代に家族娯楽として提供された映画であるゆえか。手堅い佳作。

少年が追われて逃げこむ風鈴小屋のシーンなど、ハッとする演出が見ものである。カメラは戦死した父親の形見であるが、ミステリの狂言回しでもある。

原作は渡辺啓助、知らなかったが日本ミステリの草分けとか。音楽はなんと三木鶏郎。フラメンコのような印象深い曲調である。三木鶏郎、データベースをみると映画音楽はコメディや時代劇が多く、こういったミステリ作品の担当は珍しい、というか、ほぼ唯一の作品のようだ。