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運動不足解消のために、めちゃくちゃ美術館に行った

2024年1月後半の日記です。


1月20日 日

天気が怪しかったけど、気分転換に外に出たほうがいいなと思ったので、埼玉県立近代美術館へ行く。

「イン・ビトウィーン」という展示で、ジョナス・メカスの日記のような、記録のような映像を眺める。
歴史に残らない人物の、ごくごく日常的な営みが繋げられた映像は、観ていて心地良かった。文脈も意味も何にもわからないから、何も考えずに眺めてられて楽しい。

常設のMOMASコレクションでは、鴫剛の『Collection-Recollection 3』という絵の存在感がすごかった。
作者は、1970年代初頭から写真を克明に描き出す手法によって制作を続けてきたらしい。この作品も、ある家の外観写真を白黒で精緻に描いている。
窓と室外機、そしてベランダに干された布団。そうした生活が、大きなキャンバスに十分な余白とともに映し出されている。

はじめは写真かと思って観ていたが、しばらく経つと、写真ではあり得ないマットでのっぺりした感じとか、直線が直線すぎる感じとか、白が白すぎる感じとかに違和感を覚える。なんだか不気味なのだ。
本能的に危険を察知してしまうような、けれど圧倒的に美しくて大きな絵に見惚れてしまった。

帰りはかつやに行って、また武蔵浦和から歩く。

ディズニープラスで『ムービング』を1話観た。面白いらしいけど、ちょっとグロいので多分観ない。もったいないのかな。

1月21日 月

なんとなくテレビで大相撲とちびまる子ちゃんを観てたら、意外とおもしろい。

大事な人に大事なことを伝えるときは、やっぱり直接会って話すのが良い。その日その場所の記憶がちゃんと残る。

毎日嫌なことも多いけど、そんなことも簡単に吹き飛ばしてしまうほどの幸福もある。

何かが辛くなったら、未来の幸せを想像して心を逃がしていく。

1月22日 火

不謹慎だけど、自分にとっては都合が良いお知らせが来て、複雑な気持ちになる。

一向に上達しないもの。目薬の差し方。
毎回真上を向いた状態で、目を瞑らないように手で押さえて、やっと差す。
3回に1回は外す。
手で目を押さえなくても、片手で差せる人に結構憧れている。

仕事終わりに自転車で映画館に行く。
『カラオケ行こ!』めっちゃ良かった。

1月23日 水

通勤中に本を読んでたら、あと残り6ページってところで会社の最寄り駅についてしまった。中途半端でもどかしい。

絶対ありえないけど、ダイタクの二人は同居していてほしいなあと思う。

1月24日 木

ラヴィットの通訳さん回をみた。めちゃくちゃ笑った。ヨギソダイブ!!!

電車の端の席で仕切りに寄りかかって座ってたら、立っている女性が仕切りの反対側に寄りかかってきた。
仕切りの板は透明なタイプで、板を挟んで身体が接触した状態でも何か誤解される恐れもありそうだったので、別の席に移動した。

いまの自分にぴったりだと思って『転職ばっかりうまくなる』を読み始めた。
いきなり100ページ以上読んでしまった。

1月25日 金

今日から6連休。

起きて洗濯しながら読書。『転職ばっかりうまくなる』を読み終わる。
とてもおもしろかったし、20代で6回転職した、著者のひらいめぐみさんの言葉に励まされもしたけれど、心のどこかで「でもなあ」と思う。

そのモヤモヤの正体は「こんなこと言ってても、ひらいめぐみさんは出版社の人の目に留まって、本を出版できる側の人だもんなあ」という妬みとすら言えないしょうもない感情である。

いくら社会や組織に馴染めなかった経験を書かれても、結局この方はフリーのライターとして仕事を依頼されるほどの文章を書ける人だし、ライターになる前から個人でnoteを書いてて、それがある企業の面接官に見つかって「この感じで書いてほしいんです」とオウンドメディア運営のポジションのオファーをもらうような人だし、中高生のときちゃんと本を読んできた人なんだ。

そう思って素直に受け取れない自分がいた。
当然この本に書いてある言葉に嘘なんてないのだろうけど。

映画『偶然と想像』のあるシーンを思い出した。
芥川賞を受賞した大学教授・瀬川が、ある悩みを吐露した生徒・奈緒に向かって言った言葉。

(瀬川)村山の人生にこれまでどんなことがあったか知りません。でも、もし周囲から自分のことを無価値だと思わされたなら抵抗してください。社会の物差しに自分を測らせることを拒んでください。村山さんは、自分だけが知っている自分の価値を抱きしめなくてはなりません。それを一人でするのはとてもつらいことです。それでもそれをしなくてはなりません。そうして守られた者だけが、思いもよらず誰かと繋がり、励ますことがあるからです。それは一生起こらないかもしれません。でも誰かがそれをしなくては、いつまでもそれは起こりません。

(奈緒)誰でもそれができるわけではないと思います。
先生は結局、社会に認められるだけの才能があった。
だからそう言えるんじゃないですか?

(瀬川)そうですね。だから、賞なんて取る前にこんなふうに村山さんとお話したかった。
でも、取らなければきっと話すこともなかった。

(奈緒)そうですね。すみません。私もっと早く先生の小説を読んでおくべきでした。

(瀬川)いえ、読むべきものは他にたくさんあります。

(奈緒)他のもそんなに読んではいません。

(瀬川)それはそれで、これから羨ましい。

『偶然と想像』

※『転職ばっかりうまくなる』は本当におもしろいですし、おすすめです。

14時頃に家を出て京橋へ。

アーティゾン美術館の『マリー・ローランサン 時代をうつす眼』に行った。
平日の美術館は人が少なくてゆっくり回れるから好き。

マリー・ローランサンが描く女性の顔は、黒い目と、ピンクの頬と唇だけで構成されている。それでもってとてもかわいい。不思議だ。

『ブルドッグを抱いた女』という絵の中のブルドッグはシワがなくてツルンとしていた。美肌に描かれて良かったねえ。

一緒に開催されていた石橋財団コレクション選を含めて、今日見て好きだった作品を挙げる。

『ポワレの服を着たモデルたち、1923年の競馬場』ラウル・デュフィ

活き活きとした筆の動きが作り出した渦に呑まれてしまいそうになる。
青々とした芝、馬のうねり、華やかに着飾った人間たち。
美術館で生で見ないと味わえない臨場感がある絵だ。

『森の中の若い女』カミーユ・コロー

漆黒の中に浮かび上がる女性の瞳の中に打った、小さな小さな白い点。
こんなに小さな一点を打つだけで、人物に力強さと希望を吹き込めるのかと驚いた。画家ってすごい。

『トルーヴィル近郊の浜』ウジェーヌ・ブーダン

とても美しい風景。低い位置に地平線を設定し、絵の3分の1以上空を描いているのがたまらない。
人間なんて、この美しい地球に生きているちっぽけな存在だってこと。
あくまでわたしたちは地球で生きてるんだってこと。
地球はそれ自体美しいってこと。
人間がいなくても地球は十分美しいこと。
その地球の中で人間は生きてるんだってこと。
この風景が味わわせてくれる感覚が、わたしの心を落ち着かせてくれた。

1月26日 土

週末に彼女と墨田区に行くことだけ決めていたけど、これといって行きたい場所もなかった。

LINEにて・・・

彼女「スカイツリー登る?」
わたし「うーん」
わたし(5分くらい考えて・・・)「隅田川の水上バスに乗るのは?」
彼女「めちゃいいね」
彼女「この時間のこのルートがちょうど良いかな」

気が乗らないなら代案を出して、代案をもらった側はプラスアルファの情報を調べて教える。こういうのがお互い自然とできるので居心地が良い。

上野の国立西洋美術館に行く。
もはや運動不足解消のために美術館に来ている。

キュビズムの企画展は入場料が2,200円もした。軽く展示内容を調べてみるが、キュビズムを理解する自信もないので、500円で入れる常設展のチケットを買った。

おばちゃん3人組が『悲しみの聖母』という絵を見て「シワがないわ。これは30代よ。はあ羨ましい」とか言って盛り上がってた。そんな視点はなかった。楽しそうだ。混ぜてほしい。

今日見て好きだった作品を挙げる。

『ガブリエル・コットの肖像』ウィリアム・アドルフ・ブーグロー

美しい以外の言葉が出てこない。
こんな綺麗な目で見つめられたら、そこから動けなくなってしまう。
瞼と唇の質感が柔らかく、特に下唇の真ん中の線が精緻で感動した。
情けないが、この美しさはどんなに考えても文章で表せなかった。

『小川のほとり』ウィリアム・アドルフ・ブーグロー

昨日観たカミーユ・コローの『森の中の若い女』と同様、少女の瞳の奥の光に吸い込まれそうになる。

『カジノのホール』キース・ヴァン・ドンゲン

男性のシャツの襟を、白い絵の具のぷっくりとした盛り上がりで描いていて、とてもかわいい。家に飾りたい絵。

『モーツァルト』ラウル・デュフィ

青いうねりのなかで演奏している右側の人たちが、必死にくらいついているように見えてとてもかわいい。ふるい落とされてしまいそうなスピード感が感じ取れる。
筆の動き感じが好みだと思ってたら、昨日見た『ポワレの服を着たモデルたち、1923年の競馬場』と同じ作者だった。こういう一致はうれしい。

『トルーヴィルの浜』ウジェーヌ・ブーダン

好きだなあと思って観てたら、これも昨日の『トルーヴィル近郊の浜』と同じ作者だった。(というか作品名もほぼ同じだ)トルーヴィルに惹かれがちだ。行ってみたくなった。女性のスカートの赤い裾が良い。

マッチングアプリみたいな感じで絵をスワイプして、AIに自分の好みを学習してもらい、好きそうな絵をレコメンドしてくれるサービスがあればなあ・・・と美術館に来るたびに思う。需要あるんじゃなかろうか。

でも、機械にレコメンドされて絵と出会っても、感動は半減してしまいそうだ。
絵や写真への感動や愛着には、ある種の偶然性も重要な要素な気がする。

夜は、よく行く新宿のとんかつ屋へ。カウンター席に案内される。店内がとても空いてたから、テーブル席に案内してくれればいいのに・・・。
カウンターの椅子は背もたれがあってないようなタイプの椅子で、腰が痛くなった。

シネマカリテで『違う惑星の変な恋人たち』を観る。会話がめちゃくちゃおもしろかった。まだ終わらないでくれ〜と思うくらい、心地が良い作品でした。おすすめです。

後ろに脚本が全部載ってる映画パンフが大好きだ。読みながらもう一度作品に浸れるし、文字で読むと台詞がまた印象が違って見えたりする。
『違う惑星の変な恋人たち』のパンフはそれで最高だった。かわいいし。

1月27日 日

午前中は小川洋子の『約束された移動』を読む。

今日は松濤美術館に行く。
『「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容』という展示。

よくわからない写真も多かったけど、大辻清司さんの写真は個人的にとても好きだった。

なかでも『写真の見せ方』という作品は、良き時代に生きた人びとの表情が記録されてて良かった。
1枚の写真の中には、スーツ着た男女12人くらい(会社の同僚だろうか)が写真スタジオで楽しそうに喋っている。
対をなすもう1枚の写真の中には、男女グループの向かいに立つカメラマンの姿が映されていた。彼もとても楽しそう。

あと、白井晟一デザインの螺旋階段が素晴らしかった。
壁面には、多面体の透明なガラスに光を閉じ込めたような照明。

華美な装飾は必要なく、光こそ芸術なのだと感じるような美しさだった。
ガラスからは6本の直線的な影が伸びている。
人間の暮らしの証である光が、こんなにも優しく空間を灯してくれるのだ。
渋谷の喧騒から完全に隔離された静かな階段に佇んでいると、なんだか別世界の豪邸に住む小さな男の子になったような気分になる。

夜は高校の同級生のH本くんと飲む。
登壇したセミナーのことや、来月に控えてる海外出張について楽しそうに話していた。仕事に打ち込んでいる姿が眩しい。すごいなあ。

当然辛いことや面倒なことだってあるだろうに、それを乗り越え続けているのだ。社会人として逃げずに真っ当に生きている。

自分も頑張ろう。

1月28日 月

21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『もじ イメージ Graphic 展』に行く。

影が美しい文字ってなんだろうか。

葛飾出身さんの日記がとてもおもしろくて30分くらい観ていた。

帰って『キリン解剖記』を読み始める。

1月29日 火

カネコアヤノのライブチケットの争奪戦。先着制だったのでPC前で待機して、12時ちょうどにリロードしてなんとか14列目の席が取れた。(頑張ったのになぜ最前列取れないんだ!)こういうのの必勝法が知りたい。
会場は神奈川県立音楽堂だから楽しみ。

この度は音響システムを使用しない、完全生音での演奏となり、生音本体の魅力を楽しんでいただく事を目的としております。通常のLiveのような音量、音圧ではないことをご了承ください。

とのことでさらに楽しみ。

映画『哀れなるものたち』を観た。

この世界の醜いものに蓋をせず可視化したら、こんなに滑稽な光景になる。わたしたちが生きてる世界はこんなにもしょうもない。 それならば、世界に満ちている理不尽に、心身を削られる必要もない。

そういうふうに思える作品だった。

映画が終わってTwitterを開いたら『セクシー田中さん』原作者の訃報が。ほんとこの世界はしょうもない。

本屋に行ったら、ジャンプしても棚の一番上の段にある本に手が届かなくて困ってる小学生の男の子がいた。声をかけて本を取ってあげた。
久々に純粋に良いことをした。けど誰かに報告できるほどのレベルのことではないので、ここに書かせてください。

1月30日 水

今日は午後ずっと図書館にいた。

夜はモスバーガー。平日夜は店内が結構静かで、考え事するには良い場所。

帰って『キリン解剖記』を読む。文系の自分には遠い分野の話だと思ってたけど、めちゃくちゃおもしろかった。

先行研究と、先行研究が示唆する仮説と、それまで自分が解剖し観察してきた断片的な事実を合わせて、さらに仮説を立てる。 その検証という目的のうえに、新たな視点を持ち、毎回最適なアプローチ方法を考えて解剖を進めていく。 そういうプロセスを垣間見ることができた。あらゆる”謎”を前に、研究者だって手探りなのだ。

また、解剖は遺体の破壊行為でもあるがゆえに「今回の解剖を知識の向上に役立てなければならない」というプレッシャーもあるそうだ。 冷静に淡々と研究を進めているのかな、みたいに勝手なイメージを持っていたが、言われてみれば当たり前だ。きっとこの本に書かれていない苦しみもたくさんあるだろう。

解剖学に興味が持てたし、研究者の仕事も見てみたいと思った。

1月31日 木

とりあえず貯金のために昇給を目指して仕事を頑張ろう。

『アイシールド21』の21周年記念の特別読み切り号のジャンプを買った。人生のバイブル。

noteにアップするために1月の日記を読み返してると、「あの日の俺、こんな小さなこともちゃんと書き残してくれててありがとう」と思う箇所がいくつかある。耳の中にシャンプーの泡が残ってたこととか。

日記書いててよかった。

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