憂鬱な夜と不満げに踊る僕
トラックから怠そうに荷物を下ろす音が聞こえて目が覚めた。怠そうに荷物を下ろしているが正反対に荷物が勢いよく重量に負けている為、ドスン。という鈍い音が夜中の住宅街に響き渡る。昨日ネット通販で注文した小さいテーブルが届いたのかと思った。
その時、ベランダの網戸の冊子が勢いよくシャっと開いた。僕は驚いたと共に体がびくとも動かないことに気づいた。それが金縛りと気づくまで十秒前後掛かった。その間、うつ伏せで寝ている僕は無策で体を動かそうとする。山の麓で小さなケージの罠にかかった瞬間の猪の様に。部屋に誰かが侵入する足音が聞こえた気がする。体を動かそうと必死だった為わからなかった。たまたま遭遇したひき逃げ事件の目撃者が警察官に供述す際、曖昧な記憶なのにあたかも事実の様に説明する気持ちに同情した。
僕は藁にも縋る思いで殺すと叫んだ。殺すと叫び始めた時から体は起き上がっていて夢、もしくは金縛りだったことに気がついていた。早く気がつくのは違う形の金縛りで体が動かなくなることがたまにあるからだ。スマホを開くと大きく20:36。今日も憂鬱な夜と不満げに踊る。
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