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石油開発会社のライフセービングルール

石油・ガス開発業界は、坑井の掘削、生産施設あるいはパイプラインの工事や操業に伴い、多数の人的被害や油流出による環境汚染を伴う重大災害を何度も経験しています。

下図は International Association of Oil & Gas Producers (IOGP、国際石油・天然ガス生産者協会) がまとめたものです。2021年のレポートでは会員企業の59操業会社のうち50社からの報告をもとにしており、データは95か国をカバーしているとのことです。

Fatal Accident Rate (FAR) とは1億労働時間当たりの死亡者発生頻度のことです。これらのグラフを見ると年々死亡事故発生頻度は増減があるものの減少傾向が見られます。

引用:IOGP Safety performance indicators - 2021 data

その理由の一つとして、石油開発業界がHSEマネージメントシステムを構築し、その運用に努めてきたことも大きく関係があると思います。わたしが入社した当時に比べ、HSEに関する研修をはじめ様々な取り組みが行われるようになり、HSEに関する情報共有も徹底されるようになりました。

石油開発現場を持つ石油会社では、特に現場でのリスクの高い作業を安全に行うためにライフセービングルールというものが定められています。

現在出向中の南国操業会社にも10のライフセービングルールが定められています。これはIOGPの定める9つのライフセービングルールに有毒ガスを足したものになっています。

  1. Work with a valid permit when required: 必要な場合有効な許可証の取得

  2. Obtain authorization before entering a confined space: 閉鎖されたスペースに入る前に許可を得る

  3. Verify isolation and zero energy before work begins: 作業開始前にエネルギーの遮断、ゼロエナジーを確認

  4. Obtain authorization before overriding or disabling safety controls: 安全制御無効化の前に許可を得る

  5. Protect yourself against a fall when working at height: 高所作業の際の安全確保

  6. Plan lifting operations and control the area: リフティング作業の計画とエリア制御

  7. Follow the rules for working in toxic gas environments: 有毒ガスエリアで働くためのルール順守

  8. Follow safe driving rules: 安全運転ルール順守

  9. Keep yourself and others out the line of fire: 自分と他人をラインオブファイアから遠ざける

  10. Control flammables and ignition sources: 可燃物と発火源の制御

これらをみると、現場ではリスクの高いさまざまな作業が行われていることがわかります。

私も6年近く海上掘削現場での仕事の経験がありますが、その期間中も私が働いていた掘削リグや周辺のリグで重大事故のレポートが何件かありました。決して他人事とは思えず、掘削現場のリスクを肌で感じていました。

重大事故に至る前のニアミス報告や、重大事故のレポートを読むと、多くの場合、ルールに問題があるというよりも、ルールから逸脱した行動が原因になっていることが多いようです。

ルールを厳密に守ることで時間や手間がかかる場合もありますが、ショートカットは重大事故の原因になります。すべての時間読みやスケジューリングはルールを厳密に守ることを前提に立てること、そして、ルールを守って事故を減らすことが、結局はコスト削減にも、産業としての社会的受容にもつながることを強く認識すべきだと思います。

私たちは毎日、会社のエレベーターのドアの内側に貼り付けられたこのライフセービングルールのポスターを見ながら生活しています。

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