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KPI (重要業績評価指標) のコンフリクトにやられる

同じ石油会社が複数のアセット (資産) を持っている場合があります。この場合のアセットとは、ひとつの油田や油田グループなどを指します。アセットごとに契約やパートナーや財務条件などが違う場合が多いです。会社にはアセットごとに開発や生産を担当する部署が置かれることがあります。

アセットに属する油田は、それぞれその規模や油層の特徴、生産形態、生産レート、生産コストなどが違うため、アセット担当部署はそれぞれの油田に適した開発計画を立て、開発を進めていくことになります。

油田によっては開発が難しく、同じ井戸数でも生産レートが少ししか達成できない場合もあれば、油層性状の非常に良い油田では井戸数が少なくても高い生産レートを達成できる場合もあります。

それぞれのアセット担当部署はそれぞれ最適な生産方法を選択し、投資費用と回収のバランスの取れた生産を行おうと最適化を行っていきます。アセット担当部署は自分のアセットを最適化しようと試みますが、これは会社全体にとっては「部分最適化」ということになります。

一方、もし会社全体で見て、収益を上げる(コストを抑えて生産量を増やす)ことを考えれば、少ない投資で生産量が稼げる「優良油田」にリソースを割けば、会社としてのトータルの最適化がはかれることになりそうです。これが会社にとっては「全体最適化」ということになると思います。

しかしながら、アセットごとにステークホルダーが違うと、「優良油田」を優先して会社のリソースを割くことに対して、不公平感が生まれることになります。

そして、会社にはアセットに属さないコーポレート部門が存在します。たいていはアセットごとにリソースを持つよりも、すべてのアセットに必要な資材やリソースはまとめた方が安く効率が良いということで、施設のデザインや設計を担当するエンジニアリング部門や、掘削部門、HSE部門、ロジスティックス、人事・総務などがアセットに属さないコーポレート部門となっています。

アセット担当部署もコーポレート部門もそれぞれ KPI (Key Performance Indicator) と呼ばれる重要業績評価指標を設定します。アセット担当部門は、目標生産レートであったり、生産単価であったり比較的 KPI の設定はわかりやすいですが、コーポレート部門はどう KPI を設定するのが正しいのでしょうか?

たとえば生産量が無いコーポレート部門の一つである掘削部門では、会社の財務状況に貢献しようとすると、コスト削減が真っ先に KPI に上がってきます。そうすると全アセットを相手にした場合、掘削コストの安いアセットにウェートを置いたり、どのアセットに対しても過剰なコスト削減を目指してチャレンジしてくることになります。

アセット担当部門はコストを多少かけても生産量を増やすという手がありますから、KPI をコスト削減だけに絞る必要はありません。

このように石油会社の中ではコーポレート部門とアセット担当部署との KPI のコンフリクトがよく起こっているように見受けられます。

アセットごとにステークホルダーが違う中で、全体を調整するのは、全アセットのステークホルダーの代表からなる調整機関か、最大のシェアホルダーである南国政府が明確なガイドラインを示し、調整する必要があります。

そして特にコーポレート部門の KPI には、難しいことにチャレンジしたことに対する明確なインセンティブを付けてあげたいというのが私の気持ちです。弱小アセットにもコーポレート部門が力を入れたくなるような KPI を取り入れられれば、弱小アセットのストレスは多少減るかもと思うのです。

KPI をいかに調整し、設定するか、とても重要だと思います (弱小アセットの叫び)。

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