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埋蔵量の推定。モンテカルロシミュレーション

モンテカルロ。モナコ公国の4つの地区の1つであり、モナコの中心市街地。モナコ経済を支える観光業の中心地区。国営カジノであるモンテカルロカジノで有名です。

このカジノで有名な「モンテカルロ」の名前が付けられた、乱数を用いてシミュレーションや数値計算を行う数学的技法があります。モンテカルロ法とかモンテカルロシミュレーションなどと呼ばれています。

乱数を発生させて (サイコロを振って) 試行を繰り返すところから、カジノでの賭博をイメージさせる「モンテカルロ」の名前が付けられたのだと思います。確率分布に従って変数の値をランダムにピックアップして、それらの変数の組み合わせで表現される確率的事象をシミュレートすることから、多重確率シミュレーションなどとも呼ばれるようです。

石油開発業界でもこのモンテカルロシミュレーションという手法がいろいろなところで使われています。例えばある油田の埋蔵量の推定などで、確率的にどの程度の埋蔵量になりそうか推定する場合などに使われます。

埋蔵量と言ってもいろいろな定義がありますが、大きく以下の二つに大別されます。

原始埋蔵量 (original oil〈またはgas〉in place):
生産開始以前に存在していた油層、ガス層内の原油・ガスの総量を指します。

可採埋蔵量 (recoverable reserves):
油・ガス田を実際に開発している場合、適切な技術・経済条件において、今後採収可能な油・ガスの量を可採埋蔵量と言います。また、可採埋蔵量とその計算時点までの累計生産量を合わせて究極可採埋蔵量(ultimate recoverable reserves)または総可採埋蔵量(total recoverable reserves)と呼んでいます。

ちなみに、実際に地表に取り出せる油の量は、原始埋蔵量の数%ないし数 10 %にすぎません。これは技術によって、あるいは生産のためにどのくらいのコストをかけられるかによって変わってきます。

話がそれましたが、ある油田の原始埋蔵量 (IOIP) および可採埋蔵量 (Recoverable Reserves) はざっくりと以下のような計算式で表せます。原始埋蔵量や可採埋蔵量は通常地下での体積ではなく、地表条件での体積で表します。

IOIP=GRV×NGR×φ×So/Bo
Recoverable Reserves=RF×IOIP

ただし,
GRV: グロス・ロック・ボリューム、油田内の石油が存在する領域の (油水界面より上) 貯留岩全体の体積
NGR: 有効層厚比、孔隙率が小さい、水飽和率が高い、あるいは浸透率が小さいなどの理由で、油・ガスの採取の対象となり得ない部分を除いた(cut off した)層厚 (有効層厚, net thickness) と 総層厚 (gross thickness) との比(net-gross ratio, N/G 比)
φ: 平均孔隙率、貯留岩の有効部分の平均孔隙率 (岩石中の隙間の割合)
So: 平均油飽和率、貯留岩の有効部分の孔隙に占める油の割合の平均値
Bo: 油容積係数、地表条件における単位体積の原油または天然ガスが油層またはガス層で占める体積。
RF: 回収率

上記の埋蔵量計算の基礎となる各変数は, 常にある程度の不確実性を伴います。また、もし正確に測定できたとしても, それは抗井の位置における測定値であり、油田全体で見た場合、その油田の地質・油層の特性などにより、特定の様式を持つバリエーションを示すのが普通です。 したがって, 油田全体を見た場合, 各変数は, ある幅を持った確率分布として表現することが適当だと考えられます。

モンテカルロシミュレーションでは各変数に与えられた確率分布の中から、ランダムに一つの値を選び、そのように選ばれた変数の組み合わせにより埋蔵量を計算し、同じ操作を何度も繰り返し行って目的の埋蔵量を、ある幅をもった確率分布として求めます。

確率分布として求めるためにはある程度の試行を繰り返す必要があります。コンピューターの発達により数万回の試行も短時間で可能となりました。

各変数の確率分布は通常、正規分布 (Normal Distribution)、三角分布 (Triangular Distribution)、一様分布 (Uniform Distribution) などで与えられますが、下限値、最頻値、上限値で表現できる三角分布が地質屋の感覚としては与えやすい定義だと思います。実際にモンテカルロシミュレーションでよく使われています。

それにしても、モンテカルロシミュレーションという命名、すごいセンスだなと思います。
そしてモンテカルロと言えば、私が思い浮かべるのは庄野真代さんの「モンテカルロで乾杯」。1978年のヒット曲ですね。モンテカルロシミュレーションをコンピューターで流すときには、頭の中でリフレインしています。


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