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辺野古工事をめぐる裁判で沖縄県敗訴

沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設先となっている名護市辺野古での軟弱地盤の改良工事をめぐり、工事を承認しない県に対して国が行った「是正の指示」が違法かどうかが争われた裁判で、最高裁判所は 2023年9月4日「国の指示は適法だ」として上告を退ける判決を言い渡しました。

[NHK NEWS WEB 2023年9月4日 20時22分]

埋め立て区域北側の大浦湾に広大な軟弱地盤の存在が確認されており、特に水面下90mまで軟弱地盤が存在する「B27」地点で力学的試験を実施していないなどとして沖縄県は防衛省沖縄防衛局が申請した設計変更を不承認としていました。

沖縄防衛局のホームページに掲載されている普天間飛行場代替施設建設事業に係る技術検討会(第1回)の資料の中に地層断面図が掲載されています (資料3 第1回技術検討会資料 13ページ)。

[資料3 第1回技術検討会資料 13ページ]

https://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/Gijyutsukentoukai/kentoukai1/R1no1Siryo04.pdf

この図面には「B27」地点付近に谷埋堆積物の軟弱地盤が水面下90m付近まで分布していることが示されています。

現在の地盤改良技術では70mの深度までが限界とされているそうなので、仮に70mまでの地盤改良を施したとしてもどの程度の効果があるのか非常に不確実です。

地盤改良として改良径2メートル及び1.6 メートルの砂杭を、東側護岸の約1kmに約1万6千本打設することとなっており、その打込深度70m以上に対応可能な国内のサンド・コンパクション・パイル作業船3隻すべて使用し、しかもそのうち2隻は改造が前提となるなど、前例のない大規模かつ高度な地盤改良工事を実施するとのことで、沖縄県の危惧も当然と言えば当然だと言えると思います。

[沖縄県 辺野古新基地建設問題 Q&A]

辺野古の工事は本当に安全に完成できるのかどうか、どのぐらいの期間で完成できるのか、完成できなかったり完成が大幅に遅れたりした場合、その影響は沖縄県のみならず多大なものになると考えられます。

通常の公共工事であればそのような懸念やリスクは当然詳細に検討され、説明されつくさなければならない点だと思います。

今回の最高裁の判決では沖縄県の技術的側面に関する懸念についてはなんら議論されていません。

[琉球新報 【全文】辺野古訴訟 最高裁判決内容 2023年9月5日 13:47]

技術に携わってきたものとして、これら沖縄県の懸念に真摯に応えられない状態で工事を進めることはちょっと考えられません。一か八かで進めて良いものではないはずです。政府はこのようなリスクを詳細に検討したうえで、沖縄に真摯に向き合ってほしいと思います。

私たちは福島第一原発の事故など、政府から「安全だ、大丈夫だ」と説明されてきた施設での事故を経験してきたのですから、そこから学ぶべきことがあるはずです。

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