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油層モデルに役立つ貯留岩のグルーピング (ロックタイピング)

以前、炭酸塩岩の分類法について簡単な記事を書きました。

この分類法の特徴は、岩石の枠組み (framework) と、基質 (mud) と粒子 (grain) の量比や支持関係を重視していることです。他の分類法に比べると比較的簡便な分類法であり、現場での肉眼、ルーペなどでの記載が比較的容易に行えること、堆積環境もある程度反映していること、貯留岩としての性状 (孔隙率や浸透率など) もある程度反映していることなどから、石油開発業界では主流の分類法となっています。

しかし油層モデル、特に油層シミュレーションモデル (油層ダイナミックモデル) の中では最終的にこのような分類はそのまま使われることはありません。

油層シミュレーションにおいては岩石の性状を物性値として数値で表現しなければならず、反対に必要な物性値に変換されていなければ油層シミュレーションでは扱えないということです。

油層シミュレーションで扱われる貯留岩の物性値としては次のようなものがあります。

[単相流動特性]
孔隙率 (Porosity)
絶対浸透率 (Absolute Permeability)

[多層流動特性]
濡れ特性 (Wettability)
毛細管圧力 (Capillary Pressure)
相対浸透率 (Relative Permeability)

毛細管圧力は孔隙径と関係しており、濡れ特性とともに生産前の初期水飽和率 (Initial Water Saturation)とも密接な関係がある重要なパラメータです。

最終的にはこのような物性値を分布させてモデルを作るわけですから、このような物性値をいきなり分布させればよいのではないかと思われます。しかし、物性値としていきなり分布させようとすると、以前記事にしたように、地質コンセプトに基づいて分布をコントロールすることが難しくなります。

そのため、油層シミュレーションモデルで意味のあるような物性値のレンジの違いを持ち、なおかつ、地質学的に意味のある 特徴 (特に分布やその連続性をある程度推定できる地質学的特徴) をもつような貯留岩のグルーピングを行うことを「ロックタイピング」と呼びます。そして定義された「ロックタイプ」をまず地質コンセプトに従って分布させたうえで、そのロックタイプが持つ物性のレンジ内で、物性を分布させるということが行われます。

貯留岩のロックタイピングにおいては、物性も流体挙動の特徴をよく表すあるレンジで定義し、しかも地質学的にも分布や連続性を推定できる特徴でグルーピングするというのが理想的なのですが、このロックタイプを、油田ごと、油層ごとにいかにうまく定義するかが、油層モデリングの難しさの一つです。

ロックタイピングは試行錯誤の連続です。


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