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点と点の間の情報を推定する (地質コンセプトは役に立つか?)

中学生の時、理科の授業で、NHKラジオの気象通報を聞きながら天気図を描きました。

読み上げられる各地の天気、風力、気圧などの情報を地図上に記入し、低気圧や高気圧の中心気圧と位置、前線の位置などを書き入れて、最後に気圧の等高線 (等圧線) を矛盾の無いようにそれらしく描いて天気図を完成させます。

読み上げられる気圧の情報は測定地点での点の情報でしかないのに、等圧線を書き入れることによって、点と点の間の気圧の変化を予想しているわけです。通常は点と点の間は、スムーズに気圧が変化しているものと予想します。また、前線がある場合にはそこで気圧が急激に変わるので、前線と交差するときには等圧線を屈曲させて、それらしい天気図に仕上げます。

貯留層の情報・物性なども、通常は井戸データしかありませんので、井戸位置での情報を地図上におとして、井戸と井戸との間はいろいろな仮定をもとに推定していくことになります。

気圧の等圧線と同じように井戸と井戸の間をスムーズに補完して推定するのも一つの方法です。

いくつも井戸があるときには、それらの井戸データを使って、統計学的に井戸のない場所の値を推定することがあります。これを特に地球科学の分野では「地球統計学」とか「地質推計学」などと呼んでいます。

物性は物性として、今現在測定される物性データだけを使って統計学的手法で推定することも行われていますが、値がどのような性質のもので、どのような要因によって変化するものなのかをよく理解しておくことは重要です。

多くの場合、地層や岩石の物性は地質的要因に基づいてその値が変化していると考えられます。堆積環境や続成作用などを考慮して、井戸と井戸の間はスムーズに変化していると考えてよいのか、あるいはシャープな境界線で急激に値が変化するのかなど、その物性をコントロールしている地質的要因と関連づけて、地質コンセプトをもとに井戸と井戸の間の値を推定していくことが重要です。

新しい井戸データが入手できたとき、地質コンセプトのない推定方法では、ただそのデータが追加されたエリア付近の数値分布が変わるだけで、どうしてそうなるのか原因を考慮できません。

新しいデータが入手できたとき、地質コンセプトからその物性分布の説明ができるのか検証し、必要があれば地質コンセプトを更新する。アップデートされた地質コンセプトをもとに、新しく入手できたエリア以外の場所も含めて、分布を再検討できる可能性も出てきます。

私は地質屋なので、地下の物性の分布を考えるときに、地質的要因と関連づけて考えたくなります。地質学は役に立つ学問だと考えています。

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