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石油開発で利益を上げるための企業努力とは

石油開発で利益を上げるためにどういう部分で企業努力が発揮できるのでしょうか?ここでいう石油とは天然ガスも含みます。

石油を発見し、石油開発に参加・契約した後ではコントロールが難しい部分として、石油の品質・性状、油田の地理的条件 (海上・陸上、気候、消費地への距離等)、参加・契約条件 (ロイヤリティ、税金等を含む) などが挙げられます。

したがって、これらをうまくマネージするためには、石油開発会社の探鉱ストラテジー、探鉱知見、探鉱・開発対象地域や国などとの関係、リスク分析などが重要になります。。

探鉱に参加するかどうかの決定には石油の存在可能性だけではなく、上記を含めて経済性や技術的・経済的リスクの検討を行います。石油開発で儲けることができることができるかどうか、まず石油探鉱・開発に参加を決める前に十分検討する必要があります。

石油は石油の品質・性状によって価格が変わります。特に原油に含まれる各留分の割合と硫黄含有率は石油価格に大きく影響を与えます。留分は原油を分別蒸留したときに得られる各成分のことで、石油ガス留分 (LPガス)、ガソリン・ナフサ留分 (ガソリン・ナフサ)・灯油留分 (灯油・ジェット燃料)・軽油留分 (軽油)、残油留分 (重油・アスファルト) などがあります。

硫黄分の多い製品は、灯油では悪臭の原因に、重油では大気汚染の原因となります。その他、金属腐食の原因となったり、冶金用などでは製品の品質低下をきたしたりします。したがって精製の過程で硫黄分の除去 (脱硫) が必要で、硫黄分が多ければそれだけ脱硫コストがかかるため、一般に硫黄分の多い石油は油価の点で不利になります。

いずれにしろ、現在のところ油価を石油開発会社自身がコントロールするのは非常に難しいです。

油田の地理的条件は、石油の探鉱・開発・生産コストや輸送コストなどに大きく影響を与えます。

産油国によって、参加・契約形態や条件が変わってきます。政情リスクなども変わります。十分儲かるスキームが確保できるのかどうか、フレキシビリティーがあるのかどうか見極める必要があります。参加・契約条件は、場合によっては見直しの機会があるかもしれません。ここは石油開発会社の経営努力・交渉能力がものを言う可能性もありそうです。

油層性状や油田の規模・埋蔵量なども、石油を発見した後で石油開発会社の努力や意志で変えられるものではありません。ただし、これらはいかに正確に評価することができるか、そして、その油層性状や油田規模・埋蔵量に見合った適切な開発・生産計画を立てることができるかによって儲けをコントロールすることができます。これらを含めて石油を見つけた後に企業努力でどうにかなる部分はどのようなことがあるのでしょうか?

大きく分けると次の2点に集約できるのではないかと思います。

  • 油の生産レートを増やす

  • 開発生産コストを下げる

[石油の生産レートを増やす]
井戸数を増やす。井戸の長さを増やし、仕上方法に新技術を起用して生産流体自体のレートを増やすとともに、生産流体の中の油の比率を増やす。2次回収、3次回収など原油増進回収法を適用し、油生産レートを上げるとともに油層内の取り残しを減らす。油と水を分離施設などの生産施設を増強する。井戸や施設のメインテナンスをしっかり行い、稼働率を上げる。国ごとに割り当てられたOPEC生産制限のなかで、関連油田・油層の割り当て分を上げてもらう等。

[開発・生産コストを下げる]
井戸数を減らす。井戸仕上コストを削減する。コストのかかる原油増進回収法をあきらめる。生産施設にコストをかけず、メインテナンスも最低限にする。コントラクターとの契約を工夫したり、コスト重視で契約する。産油国などとの契約条件の見直し等。

他にもいろいろあるとは思いますが、ご覧の通り、実は生産レートを上げることと開発・生産コストを下げることはトレードオフの関係にあることが多いです。

無駄な投資や過剰投資は避ける必要があります。一方、過剰なコスト削減は生産レートの減少ばかりではなく、安全や環境に悪影響を与える可能性があります。生産レートとコストのバランス、最適化 (optimization) が非常に重要になります。

私は地質屋ですので、地下の油層開発の点で、油層エンジニアや掘削エンジニアなどと協力しながら最適化を考えています。石油開発会社としては技術ももちろんですが、産油国、パートナー、コントラクターなどとの交渉能力も問われる部分だと思います。

ところで、最終的な油の油層からの回収率向上は必ずしも石油開発会社の利益にはつながらない場合もあります。しかし、回収率を上げることは産油国の強い意向であり、石油開発会社にとっては無視できない重要な課題です。

回収率向上はコストとのトレードオフでもあり、また、生産期間が長くなると、需要や石油価格変動のリスクも大きくなります。実際はむやみやたらに回収率を上げようとするのではなく、その時の技術レベルとコストに見合った回収率レベルがあるのだと思います。

石油開発会社は儲けだけではなく、生産を継続するために産油国との良好な関係、産油国の意向の尊重も重要です。そのような点からも、産油国との意思疎通、交渉が重要になってきます。

実はこのほかに石油開発会社が儲けを増やす方法として、生産する時点での石油の品質や性状に付加価値を付けることができないか (例えば野菜の生産で高品質の野菜を生産し付加価値を付けるような感じ)とか、石油の需要をふやすことはできないかとか、いろいろ妄想しています。ただし、限りある資源ですし、環境問題もありますので、どんな形でも無理に需要を増やすのは時代の流れに合っていないですね。

世界の石油開発会社は石油だけでは今後生き残れないと考えていると思います。カーボンニュートラルの模索はもちろん、再生可能エネルギーなども含め総合エネルギー会社にシフトしようとしている会社が多いのではないでしょうか。

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