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小澤征爾さんの海外武者修行の話

海外で仕事をするようになって、特に現場で、自分よりも年上で百戦錬磨の、口の達者なコントラクターたちを相手に現場作業を進めていかなければならなかったとき、なぜか思い出したのが、おそらく小学生か中学生の頃の道徳の教科書で読んだ、指揮者の小澤征爾さんの自伝でした。

小澤さんが若いころ武者修行のために単身ヨーロッパへ渡り、指揮者コンクールで優勝したときの話です。

私はこの話を読んだとき、気後れしないで、自分の力を信じて単身海外に飛び出していく勇気と、小澤さんの飄々とした語り口に魅了されました。道徳の教科書で唯一と言っていいくらい心に残っている話です。

コントラクターと意見を戦わさなければならないとき、まわりの反対を押し切って自分の考えで作業を進めなければならないとき、苦しい決断をしなければいけないとき、オイルカンパニー側からただ一人のレップとして孤軍奮闘、孤立無援で仕事をしていたとき、ときどき小澤さんの話を思い出しては勇気をもらっていました。

小澤さんはきっと、この話では語られていない様々な困難を乗り越えて、世界で認められる指揮者になられたのだと思います。そんな小澤さんが、若いころから世界に飛び出していって、気後れしないで頑張っていたことを思い出して、私もこんなことでへこたれている場合ではないなと思ったものです。

そして同じ日本人として、小澤さんのように実力で世界で勝負したいというプライドみたいなものも感じていました。

言うことを聞かないコントラクターに「何やってんだよ」と悪態をつきたくなったり、まわりじゅうからお前の解釈は間違っていると言われる中、「なにくそ」と思いながら自分の信じる方針を貫いたり説得したり、説得中に熱くなった上司に電話をたたき切られたり、反対に電話をたたき切りそうになったり。。。

常に時間に追われて忙しい現場では、感情のコントロールが難しいところもありました。そんなとき小澤征爾さんの海外武者修行の話を思い出しては、自分も飄々と頑張ってみようと思いなおすことができました。

現場の良いところは、どんなに口論になっても激論を戦わせても、最後に何とか仕事をなしとげたときに、「お互いよくがんばったね」と互いの労をねぎらって、次の現場に頭を切り替えていけるところです。

実際の現場の仕事では、本当に四面楚歌のような中で仕事をしなければならないこともありましたが、つらいことばかりではなく、多くの人に助けられて一緒に困難を乗り切ったという喜びを感じることも多々ありました。

そしてだんだん歳を重ねるにつれて、ある程度自分自身も熱くならず冷静に対処できるようになりました。コントラクターに「あいつはどんな時も常に冷静で的確だ」と言わせてみせることが目標になり、プライドになりました。まあ打率は5割ぐらいだったかもしれませんが。。。


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