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「人類よ、記録を取れ!」ポートフォリオ作成のすすめと3つのポイント

本記事は「mast Advent Calendar 2019」の17日目の記事です。筑波大学情報メディア創成学類(mast)の人々が毎日記事を投稿しています。
昨日16日目は2つ下の後輩Yamaura(@kzkymur)氏の「長ったらしい自己紹介」でした。たまたまWeb方面のことをやる人だったようで自分と技術的に被りがありますが、プロダクトも行動力もすっげえ……(語彙力)という気持ち……今後なにが出てくるのか楽しみです。

こんにちは!3年生になりました、mast17のいなだ(@nandenjinです。mastAdCへの参加も3回目となりました。昨年は記事を書かずに映像を作って投稿するという暴挙に出ましたが、今年はちゃんと文章を書きました。

普段はWeb、グラフィックデザイン、舞台などで作品を作っています。5月にあった学内展示企画「平砂アートムーヴメント」では底抜けに巨大なオブジェを作るバカをやりました。

今回の記事では「人類よ、記録を取れ!」ということで、作品制作や活動の記録の取りかた、ポートフォリオの作成にまつわる3つのポイントを書きます。

1. なんでも記録を残す。分量やクオリティには妥協しない。
2. 目的にあったメディアを選ぶ。特性を理解して効果的な見せ方をする。実際に何か作ってみるのが一番。
3. 再利用しやすいように保管する。見せるときのデザインとは分離して、すぐに作り直せるようにする。

mastの学生をはじめ、制作に関わるいろんな取り組みをやっている界隈に届くといいな、と思って企画しました。自分自身がこれまで散々手こずっており、思い入れ(怨念🔥)の深い分野です。何かの形で、素敵な作品を作っている人たちの助けになればと思います。

ポートフォリオとは

ポートフォリオ【portfolio】
② 写真家やデザイナーなどが自分の作品をまとめたもの。
出典 三省堂大辞林 第三版

芸術・制作系の界隈において、作家が自分の制作物をまとめた作品集のことを「ポートフォリオ」と呼びます。

ポートフォリオ実例あれこれ

百聞は一見にしかず、いくつか例を揃えました。

まずは最もよく見かけるオンラインのポートフォリオたち。個人だけではなく企業のポートフォリオも多く公開されています。

⭐️今年夏にインターンで個人的にお世話になったチームラボ株式会社のサイト。プロダクトが載っているサイトとアート作品が載っているサイトが完全に分離しており、ポートフォリオ性(?)を強く意識します。関係ないですが、作品いったいいくつあるんだろうな……

⭐️個人、学生のポートフォリオ。迷ったのですが、よく一緒にお仕事をする芸術専門学群のTakuto Okamoto(@TiME_SKiPPER_)のサイトがメンテが行き届いてて素敵です。彼の作品数は学生としては桁違いに多いため、すさまじい見た目になっています。

⭐️学生でもなく、かつもう少しエンジニア寄りの人のものとして、個人的に作品が好きなTakumi Hasegawaさんもご紹介します。Webデザイナー/エンジニア、特にCGが得意分野の方で、サイトもそれを存分に伝えるカラクリが入っています。見た方が早いので見て欲しい。すごい。

その一方で、ポートフォリオとは一般にWebサイトのことを言うのではありません。基本は当然ながら紙のカタログであり、特に芸術系の学生界隈では冊子型のクリアファイルにまとめた作品集を作ることが多いようです(恥ずかしながら最近知った)。もちろん、製本された冊子のポートフォリオを作る人もいます。

ほかにもPDFのような電子データで作ってるケースなんかもありそうです。

なにに使うの?

【自己・作品の紹介】 パッと見せられる形で自分の取り組みがまとまっていると便利です。自分自身や作品のことについていちいち説明しなくても、ポートフォリオを参照できるよう添えるだけで相手に伝えることができます。ポートフォリオ自体が作品になってる人もいます。素敵。

【就職・求人応募】 自己紹介の延長でもありますが、自分を採用してもらう際の材料として利用できます。デザイナー・エンジニアをはじめとする制作系職種は、提出を求められることが頻繁にあります。場合によっては大学の研究室とかでもあります😨

【コピペ集】 個人的にお気に入りの用途。ポートフォリオ自体が出せない環境でも、文面や画像のリソースが予めあれば毎回流用できます。「出すごとにコンセプトの表現の仕方が違う!」みたいな、表記揺れに似た事故も低減できます。

どの用途でもそうですが「まとまってる」というのはすごく重要です。一箇所たどり着けば自分で見て回れる、同じ様式で情報が得られるというのは、自分であれ他者であれ利用者の手間を減らします。また、綺麗にまとまった情報源を用意することは、それだけで信頼を得る材料になります。

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さんざん実利的なことを並べましたが、作品まとめがない人に出会ったときの本心は、「頑張って作品作ってるのにもったいない〜〜!!」という気持ちです。人に見つけてもらえないのは機会損失だと思うし、自分でも誰かに「こんな人いてね」って紹介できないのは歯痒いし、なによりオレはお前の作品をもっと見たい🌋

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ポートフォリオ作ろうな!ということで、長い前置きになってしまいましたが、個人的に勘所だと思ってるポートフォリオ制作のTipsを3つ書きたいと思います。

1. なんでも記録を残す

他人に見せられる形にまとめる前段として、まず「記録をとる」というステップがあります。作った物・やったことについて、写真映像やデータを全部残します。全体像・接写などのほかに、お客さんがいる・いない状態などを含むあらゆるパターン、会場の様子や外観なども忘れず残します。

個人的には、後々後悔しないよう、記録は可能な限りのコスト(時間・お金)をかけて取むべきだと思ってます。機材も減るものじゃなし、早めに揃えるべきです。
mastではデザインの授業で「親の首を絞めてでもちゃんとしたカメラを買ってもらいなさい」と指導されますが、実際に自分で使うと本当に段違いにクオリティが上がって、わりと正論なんだなあれ……と思いました。

自分の例ですが、冒頭で紹介した平砂アートムーヴメントの展示の際は、作品の巨大さゆえに二度と再展示しないことが確実だったので、必死に記録を取りました。写真だけでも数えたら1000枚近くあります。(あくまで一例なのでこの枚数が良いとかいうことではない)

スクリーンショット 2019-12-14 20.19.26

そのほか、制作期間中の写真やアイデアスケッチなども残しておくと良いです。採用ないしそれに準ずる用途の場合、こういうのがある方が信用してもらえる(≒ないと信用してもらえない)ことがある、らしい。

たぶん記録の作業が一番重要かつ大変なので、これをやった時点で作業は7割方完了です💥

余談ですが、いなだの所属するサークル「人形劇団NEU」(@tsukuba_neu)では、公演時には最終回の開場前など、実際の上演とは別に記録会をやっています。また、初公開作品の上演では、主要な部品を早めに製作し宣伝用の撮影をすることもあります。良質な記録を得るためには、こういう工夫も一手かなと思います。

2. 目的にあったメディアを選ぶ

取り終えた記録を、他の人に見せられる形に起こすステップです。

先に述べたようにまとめのやり方も様々な形態がありますが、ここで重要なのはメディアの特性と目的の間でバランスを取ることです。紙媒体にせよ、電子ファイルにせよ、オンラインにせよ、その特性から来る向き不向きが存在するので、それをうまく使いたいよなぁという気持ち。

学生レベルで最もあるあるなのはおそらく「オンラインに加えて紙媒体(があるかないか)」だと思います。オンラインでは直接のコストはほぼゼロ、(画面上のデザイン次第で)いくらでも情報を投入できます。誰にでも見て/見つけてもらえるのも魅力ですし、リンクを貼るだけですぐに見せることができます。

他方、紙媒体はその存在自体が圧倒的信頼感を持ちます。ストーリー性を持たせられる(見る人の動きをデザインしやすい)のも楽しいポイントです。その代わり、全体のデザイン、特に効果的な分量や配置についての技量がある程度求められます。ユースケースとしては就職・応募・対面での紹介など用に、ピックアップした作品を載せることが多そう。(あと、自分の作品が紙媒体になるとめちゃテンション上がって自己肯定感が高まる😼)

メディアごとにこういった特性を理解して、自分の必要とする用途・目的に合致した物を用意すると良いと思います。

方法を事細かに述べるのが本義ではないのですが、一度実際にやってみるのが一番だと思うので、いくつか手がかりを置いておきます。

オンラインツールは最近は無料ツールがわんさか出ててすごいです。誰かにおすすめを聞かれたときにはAdobe Portfolioを推しています。何もしなくても綺麗なサイトができるので、Web開発者としては寿命が縮む思いです。

紙媒体は、印刷通販のラクスルがA4・A5の冊子をお試し価格で提供しています。執筆現在、1冊発注でも通常500円のところ、キャンペーンなのか50ページを超えるものまで1冊100円です。価格表が何かの手違いにしか見えません。おそろしい。他社も含め、印刷物も思ってるよりは手軽に作れます。

スクリーンショット 2019-12-14 22.22.10

Webはともかく紙のコンテンツデザインについてはなかなか参考品を見る機会がないと思います。芸術専門学群17のかーぎ氏(Rin Takagi / @kaaagi_tkb)のお仕事が編集者としてもデザイナーとしても素晴らしいので、興味のある人は覗いてみたり、質問箱を投げてみたりするといいと思います。(すごく勝手な紹介と丸投げ🙇‍♂️)

なお、作品をまとめるときに、単なる作品記録の集合体ではなく、そのまとめから自分が考えていること、目指すことが透けて見えるようにできると素敵です。この辺の話は(就職にまつわる物が多いですが)オンラインでいろいろ知識が得られるので、余力のある人は読んでみてください。
自分も十分にはできてないと思うので精進します。

3. 再利用しやすいように保管する

あまり言われることはないですが、地味に大切だと思っています。そのポートフォリオ、すぐに再利用・再製作できるようになってますか?

記録を取るのは1回でも、それを利用するのは先々に渡ってずっとなので、「保管する最終形態が完成したポートフォリオそのもの」というのはリスキー💥です。

紙のポートフォリオはいくらでも改稿があるでしょうし、Webのそれであっても、公開してるサービスが終了するとか、Webのテクノロジーが変わったり(Ex: PCよりもスマホが普及した)とかで突然作り直さなければいけなくなる危険に晒されています。というか誰だって、完成品を眺めてたらいずれ全体のデザイン修正したくなるでしょ……ならない……?

要するに、コンテンツはデザインと分離して、廃れない・劣化しない方法で置いておくべき、ということです。プレーンテキストでもWordでもExcelでも、突然使えなくなる危険が当面なさそうな媒体であればなんでもいいと思います。バックアップも忘れずに。

いなだは全ての作品データをMarkdownという形式で記述し、代表的な写真と一緒にバージョン管理システムに載せて保管しています。ポートフォリオのWebサイトはここから自動生成されており、万が一サイトごと丸っと乗り換える必要が生じた時にも、中核となるコンテンツはそのまま使えるように設計しています。また、作品の紹介文が必要になった時も大抵はここからコピペしています。

自分の例がノンエンジニア向けにしてはいささか極端で微妙な気持ち()なのですが、なにもここまでやらなくても、入れ物に依存しない形になっていれば目的を十分達していると思います。伝われ〜〜

すごい人たちのポートフォリオを散々紹介した後に自分のを貼るの、やだな……気に入らないところが山ほどあるのでじわじわ修正しています……(言い訳)

まとめ

本記事では、作品集としてのポートフォリオを中心に、活動や制作物の記録の取り方、見せ方について述べました。特に、以下の3点について取り上げました。

1. なんでも記録を残す。分量やクオリティには妥協しない。
2. 目的にあったメディアを選ぶ。特性を理解して効果的な見せ方をする。実際に何か作ってみるのが一番。
3. 再利用しやすいように保管する。見せるときのデザインとは分離して、すぐに作り直せるようにする。

最後まで読んでいただきありがとうございました!ご意見ご感想などありましたら @nandenjin までお寄せください。また、記事下部のボタンから作品制作を支援していただけるととても喜びます。

明日18日はakch氏の投稿の番です!明日以降のmast Advent Calendarもどうぞよろしくお願いいたします。

活動に興味を持っていただいた方、よろしければご支援をお願いします!作品を作るにあたって応援していただける、不安なく作業が進められることほど嬉しいものはなく、本当に喜びます。作品のテクノロジーや裏側などを、不定期ではありますがnoteで公開します。