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Z世代が聴く名盤 #27 くるり「TEAM ROCK」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

くるり、3枚目のオリジナル・アルバム。次回作制作中に新メンバー・大村達身が加入した為、結成時の編成で発売された最後のアルバムとなった。

前置き

以前この記事にも書いた事があるが、自分の高校時代はくるりと共にあったと言っても過言ではない。このころ彼らに出会ったことで、それまでの自分だったら出会えなかったであろう新しいタイプの友達を作ることができたしアルバム単位で語れるほどのめり込んでいったミュージシャンも今のところは彼らが最後だ。

そんなくるりに出会った最初の作品がこれ。元々小学校低学年の頃にORANGE RANGEにハマってて、彼らの楽曲「以心電信」のイントロが今作の収録曲「ワンダーフォーゲル」のイントロに似ていると話題になっていて、当時あった検証動画から試しに聴いてみたのが出会いだった。

ただ、当時は「良いな」とは思いつつ「もっと聴いてみたい」というレベルまでは惹かれなくて、本格的にハマっていったのはそれからさらに10年近く後になる高校生時代であった。

当時導入したばかりだったSpotifyで「せっかくだから色んな人の曲を聴いてみよう」となり、ふと「ワンダーフォーゲル」のイントロが良かったことを思い出し、「ワンダーフォーゲル」「ばらの花」を続けて聴いて一発(二発?)で沼に引きずり込まれたのを覚えている。

個人的には今作をきっかけにくるりに傾倒していき、同じくくるりが好きな同級生からフジファブリックを教えてもらってこれまたハマり、同じ時期に導入したSpotifyでその周辺の音楽を聴き漁るようになり、自分の聴く音楽の幅が大きく広がったため「全ての始まりの一作」と呼んでも過言ではない

今回は、そこまで言っときながら最近ご無沙汰だったこの作品を改めて聴き思ったことをつらつらと書き連ねていく

感想

今作はそれまでのくるりの作風とは打って変わって打ち込みを多用した楽曲が一気に増え全体的にデジタルな空気感が漂っている。ただ「カレーの歌」「トレイン・ロック・フェスティバル」などあんまりデジタルじゃない曲も存在感を発揮しているのであくまで「漂っている」レベルに留まっている。

しかし「全ての始まり」とまで表現しておきながら、実は今作にはそこまで良い印象は持っていなかったりする。シングル3曲をはじめ、大好きな曲は沢山入っているのだが、アルバムとしての今作はどうにも今一つ…というか無難な感じが否めない

くるりはとことん奇抜な曲をアルバム毎に1~2曲入れており、そういう所が彼らの魅力みたいな評価もよく聞く話だが今作でのアルバム曲はどこか遠慮しているような、いつもみたいに奇抜さが突き抜けていないように思える。「愛なき世界」「C'mon C'mon」とかは現在でもお気に入りでよく聴き返すけど、2曲とも別に変な曲というわけではないし…

かといって今作がとびきりポップかというとそうでもない印象で、「永遠」「迷路ゲーム」などサウンドメイキングに凝りすぎて正直とっつきにくい曲も散見される。シングル級に強いアルバム曲や、ライブの定番になる等してファンから重要視されるようになった曲なんかも特にない

なのでくるりのアルバムの人気投票などで「アンテナ」や「ワルツを踊れ」など特定のジャンルに振り切った作品が人気を博している一方で今作の人気がそこまで高くないのも仕方ないのかなと思う。結成20周年時にそれまでの活動を振り返った著書「くるりのこと」で岸田繫本人が語っているように、同時期に発売されたが未収録になった「春風」やこの頃に作られたがボツになった「ハローグッバイ」などポップな曲がたくさん出来ていた時期だけに売れ線な方面に一気に振り切ってほしかった。「ワンダーフォーゲル」も「ばらの花」もそういう作風の方がよりおさまりが良かった気がする。

一番好きな曲:ばらの花
一番「…」な曲:迷路ゲーム

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