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Z世代が聴く名盤 #4 Yes「危機 (Close to the Edge)」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

イエス、5枚目のオリジナルアルバム。ドラム担当のビル・ブルフォードの最終参加作でもある。「アルバム」と称されているが収録曲はわずか3曲で(ただし3曲とも超長尺なのでトータルで37分強はある)、Spotify基準ではEP扱いされてしまうためか、4曲のボーナストラックを収録したデラックスエディションとして配信されている。

前置き

イエスとの出会いは2019年頃ネット上で流行った「To Be Continued」ネタでBGMに使われていた「Roundabout」のイントロだった。

ネタの良し悪しはさておいて、このイントロのハーモニクス奏法(たぶん)に惹かれて曲そのものをよくSpotifyで聴くようになり、他の曲も漁ろうと人気曲ランキングを覗いて「Owner of a Lonely Heart」を見つけ、その2曲だけ知っている状態がしばらく続き、紆余曲折あって今に至る。

なので、一般的に「プログレッシブ・ロック」と聞くとピンク・フロイドやキング・クリムゾンが浮かぶらしいけど自分の場合は真っ先にイエスを連想する。というかプログレというジャンルが存在すると知ったきっかけもまたイエスだったり…

だが結局イエスの知ってる曲は上記の2曲とひょんなことから知った「Does It Really Happen?」の3曲だけであり、本格的なイエスのプログレというのは聴いたことがなかった。そこで今回はイエスの代表作であり、「プログレの金字塔」とも評される今作を聴いてみようと思ったわけである。

感想

一聴した感じでは、自分でも驚くほどにすんなり聴き通せた
基本的にこの手の難解そうな名盤は理解できるクチではないのだが、表題曲「Close to the Edge」は一発で耳に残ったこんなことは初めてだ。

その「Close to the Edge」だが序盤と終盤はプログレと聞いて思い浮かべる要素が全部詰まってて答え合わせをしているようで楽しかったし、中盤のキーボードをバックにボーカルとコーラスが掛け合いをする箇所は「美しい」以外の言葉が見つからないくらいの緻密な構成で一番気に入ったし、何より全体的に演奏に聴きごたえがあり、18分の長尺ながら全く飽きずに最後まで聴ける。難しすぎて印象に残らない…とかそういうのも一切なく、ある程度キャッチーさは保ちつつ確かな演奏技術を堪能できる、なかなかに凄まじい曲だった。

残りの2曲もそれぞれ良いとは思うけど、「Close to the Edge」が強すぎて添え物的な印象がぬぐえなかった。コンセプトアルバムと称しているので、歌詞カードや解説を見たら曲同士の繋がりとかが見えてくるのかもしれないけど、音だけ聴いた感じではアルバムというよりは「Close to the Edge」に2曲のC/Wを加えた長めのシングルと考えた方がしっくり来る(少なくとも10曲以上は入っているJ-POPのアルバムばっかり聴いてきたから、3~4曲で終わる作品を「アルバム」と呼ぶのに違和感があるというのもある)。

今作を最後に脱退したビル・ブルフォードは「Roundabout」にも参加していたドラマー。次回作「海洋地形学の物語」からはアラン・ホワイトという別のドラマーが加わることになるが、この人は「Does It Really Happen?」と「Owner of Lonely Heart」に参加している。演者ごとの演奏スタイルの違いというのは余程方向性が違わない限り自分にはちんぷんかんぷんなんだけど改めてこの3曲と「Close to the Edge」を聴き比べるとなんとなくビルの方が繊細なプレイで、その代わりアランはダイナミック…かも…みたいな印象を受けた。尺を稼ぐために専門外のことに手を出すなんてするもんじゃない

それにしても我ながら予想外の感想になってしまった。前々回でストーンズに打ちのめされて挫折してからはやっぱり昔の名盤って自分には分からない物なのか…と諦めていただけに余計に強くそう思う。単純にブルース方面に耐性がなくて、こういう複雑な音楽を好む体質なんだと思うけど。

一番好きな曲:Close to the Edge
一番「…」な曲:特にないけど敢えて選ぶならAnd You and I

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