Z世代が聴く名盤 #18 宇多田ヒカル「First Love」
ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。
そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。
筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。
作品情報
宇多田ヒカル、初のオリジナル・アルバム。現在日本で最も売れたアルバムとされている。
前置き
宇多田ヒカル、知ってる曲はそこそこあるし馴染みがないとまではいかないけど、個人的には割と微妙な立ち位置にいる。
デビュー当時には生まれてなかったし、エヴァンゲリオンも見ないので最近の曲もよく分からないし、物心ついた頃に「ぼくはくま」が発売されたのでその曲だけドンピシャで幼児の頃の思い出として残っている程度。
今回取り上げる「First Love」も大昔に図書館で借りてきて一応ちゃんと全部聴いたんだけどイマイチ記憶がはっきりしていない。断片的な記憶はあるんだけど全体的な印象がどうだったとか特にどの曲が良かったとか振り返ると全然覚えてない。
そういう事情もあって今回は構えて聴く訳でもないし、気負わず聴く訳でもない不思議な心持で作品を聴くことになるのでいつも以上にとりとめのない感想文になりそうな予感がするがそこはご容赦を…
感想
前回が世界一売れた名盤の感想だったので今回は日本一売れた名盤だ!との理由だけで選んだ今作だが、ただ売れただけでなく当時のJ-POP界隈にR&Bという新ジャンルを提示したという意味でちゃんと音楽的にも意義がある。
R&Bが日本に浸透した象徴的な作品というだけあって、それまでのヒット作とは明らかに毛色が違うリズム重視のクールな曲がメイン。「Automatic」の路線を期待すればまずもって外さないであろう作風だ。その一方で「First Love」のようなバラードも入ってたりするので一本調子では終わらない。
また、初期の宇多田ヒカルを語る上で「15歳でこの曲作ったの!?」と誰もが衝撃を受けた(らしい)エピソードがあるけど自分が15歳前後だった頃は正直あんまピンと来てなかったのが、そこから5年ほど経った今になって改めて今作を聴くとなるほどこれは凄いな…となんとなくそのヤバさが理解できてきた。確かに自分より遥かに年下の中高生がこういう曲書いてきたらそりゃビックリするだろうな、と。
ただシングルになった曲を超えるアルバム曲というのはどうも見当たらず、この頃の宇多田ヒカルはシングルアーティストという印象が根強く残る。「In My Room」なんかはシングルに挟まれて完全に埋もれてしまってるし、前半でシングルを出し尽くすので前半と後半で印象に格差が生じるし、このあたりのバランス感覚はまだ伸びる余地を存分に感じる。
あと今作で一番謎なのがラストの「Automatic (Johnny Vicious Remix)」。ボーナストラックのつもりだったのか何なのか知らないけどここに至るまでの流れを完全に断ち切ってアゲアゲなリミックスで幕を閉じるというのは…ちょっと意図がよく分からない。
一番好きな曲:time will tell
一番「」な曲:Another Chance
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