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Z世代が聴く名盤 #10 Aphex Twin「Richard D. James Album」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

エイフェックス・ツイン、4枚目のオリジナルアルバム。タイトルのRichard D. Jamesとは彼の本名である。

前置き

エイフェックス・ツインというアーティスト名はいつの間にか知ってたし、上の気色悪い笑顔もどこかで見覚えはあった。しかし下の動画を見るまではその二つに関連があるというのは全く知らなかった

そんな訳でお察しの通り、エイフェックス・ツインの曲は一曲も知らない。今まで取り上げてきた人たちは、なんだかんだで知ってる曲が一つくらいはあったものだが今回に限ってはガチのマジで一曲も知らない。そもそもどういうジャンルに属する人なのかも知らないので、この文章を書いている時点では彼の音楽性を判断する材料は上に載せた気色悪い笑顔と曲名しかない

流石にここまでの無知加減ではナメた姿勢ととられかねないし、ここに書くことがなくなるので軽く下調べをしたところ、主にテクノの文脈で語られることが多く、その筋の人からは奇才と評されるような文献をよく目にした。言われてみれば、確かに気色悪い奇抜なアートワークや統一感がまるでない曲名群からはカリスマ性や天才肌を感じられる…気が…する…

テクノ系のアーティストというとYMOとかPerfumeみたいな超絶表層の人達はよく好んで聴いているけど、ここまでディープなところ(行き着いた人にはそこまでディープでもないんだろうけど)まで聴き込んだことはない。洋楽に関してはここまでのシリーズでは10%ぐらいの確率でしか気に入ったものを見つけられなかったけど、果たして今回は好きになれるかどうか…

感想

本作にボーカルはなく、10曲全てインストゥルメンタルで構成されている。今作はテクノのなかでもドラムンベースドリルンベースというジャンルに属するらしく、その名の通りドゥルルルルル、シュタタタタタッとドリルのようにドラムが高速で炸裂する曲が多く収録されている。そういうの興味ない人には本当にキツいと思うけど、個人的にはドラムの疾走感が結構ツボで、思ってたよりすんなり聴き通すことが出来た

あと、今作はテクノ畑の天才が作った名盤という事で何となく最新の機材を取り揃えて作った尖りまくりな曲が並んでいそうなイメージを持っていたのだが、4曲目の「Fingerbib」で特に顕著に表れているように、1970~80年代に使われていそうな温かみのあるレトロな音色が目立つ。実際、今作に使用されたシンセサイザーは全てアナログシンセ(1970~80年代に使われていた音を一から作っていくタイプの旧式のシンセサイザー)であり、調べたところ彼が新しいアナログシンセの設計に協力したとの記事まで見つかったので、こうした音使いは確信犯で、相当なこだわりをもって作られたと思われる。

曲自体も2~3分程度の短いものが多く、トータルで10曲30分強なのであまり肩肘張らずにするっと聴けるのも良い。音楽にあまり興味ない人にとってもボーカルがなくて雑念が入ってこないので気色悪いジャケットさえ乗り越えられれば勉強用・作業用BGMとして使えるんじゃないかと思う。個人的にもこれまでで聴いた洋楽ではイエスの「危機」に次ぐお気に入りになりそう。

一番好きな曲:4
一番「…」な曲:To Cure A Weakling Child

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