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Z世代が聴く名盤 #24 Marvin Gaye「What's Going On」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

マーヴィン・ゲイ、13枚目のオリジナルアルバム。「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・ベストアルバム500」2020年版で1位を獲得している。

前置き

今作を知ったのはこのシリーズで取り上げた中でも結構最近なほうである。
音楽を掘り始めた中学生の頃でさえ出会わず、高校に上がってようやく名前を覚えたはいいものの、なんか黒人の人がメッセージを訴えた名盤らしい、みたいなふわっとした情報しか仕入れられていなかった

その意識が変わったのが大学に入ってから。ロックに関する講義を取るようになって、その授業で紹介された「What's Going On」がメッセージだとかそういうの抜きで純粋に良い曲だったので今作が本格的に気になりだして、いつものようにTSUTAYAの通販レンタルでCDを借りてきたという訳である。

ここしばらくは昔から聴いていて馴染み深い名盤を聴いてきたが、元々このシリーズは自分の音楽の教養を深めるために書き始めたもの。ちょうど年も明けたしここらで原点回帰して全く知らない今作を聴いてみようと思う。

感想

これまでこのシリーズで取り上げてきた洋楽の名盤はほとんどがトータルな印象で勝負しにかかってきており、今作もその例にもれずエース級の楽曲があちこちに点在しているというよりは全体的な雰囲気で聴かせに来るタイプの作品となっている。

今作がこれまで取り上げた名盤と違う所はなんといってもその統一感。まず曲がシームレスに繋がってるので作業をしながら聴いてたら曲が変わった事に気づかないアルバムが丸ごと一つの曲になっているようなイメージだ。

レコードのA面にあたる前半6曲は穏やかなソウルミュージックが続き、「What's Going On」が気に入ったらまず外さない仕上がりになっている。曲のインパクトは「What's Going On」が最強で後に続く5曲が霞んでしまう難点はあるけど、メドレー編成にすることで一曲一曲は小粒でもめくるめく超大作を聴いているような気分にさせられるため、聴き心地は非常に良い

B面にあたるラスト3曲は穏やかだったA面よりさらに穏やか、平たく言ってしまえば音数が少なくていかにもB面的で地味な曲が続く。「What's Going On」が引っ張っていたA面と比べて核となる曲がないので、どうにもつかみどころがないまま3曲とも過ぎ去ってしまった。

ここまであえて言及を避けてきたが、今作がここまでの大絶賛を受け今日におけるポジションを築けた一番の要因はやはり歌詞であるといえるだろう。ポップで優し気な「What's Going On」も戦争に反対する若者と警察の衝突を目の当たりにした事務所の作家が原形を考え、マーヴィン・ゲイが戦争に行った弟からの手紙にインスピレーションを得てまとめ上げた純粋な反戦歌らしいし、その他の曲も貧困や環境問題、ネグレクトなどへのメッセージが散りばめられた社会派な内容になっているようだ。

自分は例によって歌詞を一切見てないのでその辺の魅力はほとんど伝わってこなかったけど、タイトルの時点でSave The ChildrenとかThe Ecologyとか社会派な面がのぞく単語がちょいちょい登場してたのでなんとなくそんな事を歌ってたというのは理解できたし、その手の問題に対して怒りをぶつけるように激しい曲調でストレートに問題提起するミュージシャンは洋邦問わずあちこちで見てきたけど今作のようにあくまで穏やかに「何が起きてるの?(What's Going On?)」と社会に問うスタイルは今まで見たことのない姿勢で面白いと思った。このやり方のほうが皮肉が効いててスマートだと思う。

とはいえ先述したように、曲そのものは質の高いソウルミュージックばかりなので、そんな事情を知らずに聴いてもなお本作は名盤だと思えると思う。例えば何かの作業中にBGMとしてかけても全然邪魔にならないし、雨の日にカフェでパソコン開いて作業する意識高い系の人がイヤホンで今作を聴いている…みたいな画が浮かぶし、多分世界のどこかで誰かがそれやってる。

一番好きな曲:What's Going On
一番「…」な曲:Flyin' High (In The Friendly Sky)


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