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【遺跡探訪83】48.5mのマハーバーラタ(アンコールワット第一回廊)

先日、アンコールワット第一回廊のレリーフだけを解説するという本をお借りする機会がありました。写真も非常に美しく、東西南北全てのレリーフに詳細な解説があります。
どうやったらこんなに綺麗にレリーフの写真が撮れるのだろうと思ったら、最後のページに種明かしがあり、レールや足場を組んで照明もかなり強く当て、個人では不可能な撮影方法でした。研究向けのようでした。

今まで第一回廊を訪れると、わかりやすいテーマの(ヒンドゥー教創世記である)乳海攪拌、(死後の世界を表した)天国と地獄、またポストアンコールの時代に加えられたアユタヤの影響のあるレリーフ等を中心に見ていました。

実はメインである、正門(西門)から入ってすぐの左右にある、マハーバーラタ(右)とラーマーヤナ(左)は複雑そうなのでいつもサッと通るだけだったのです。

マハーバーラタ予習

ですが、先日の帰国で、ついに「マハーバーラタ入門」を購入しました。

これが、入門の割にはとんでもなく内容が詰まっていて、メモを取ると一日3ページくらいしか進みません。なのですが、もう世界観がぶっ飛びすぎていて楽しいです。

映画やアニメの奇想天外物語は、案外この辺りが元になっていたりするんじゃないかと思ってきました。

例えばこの百人の息子の誕生物語…

ガーンダーリーは、自分の腹を強く打った。すると一つの肉の塊が生まれた。彼女がそれを捨てようとすると、ヴィヤーサがやってきて、その肉塊に冷水を注いで百個に分け、それぞれをギー(精製したバター)に満ちた瓶の中に入れ、注意深く見守った。
-中略-
時が満ちて、長子のドゥルヨーダナをはじめとする百人の息子(カウラヴァと総称される)が誕生した。

マハーバーラタ入門

この百人の息子(カウラヴァ)と、従兄弟の五人の息子(パーンダヴァ)が18日間戦う話が、「マハーバーラタ」なのだそうです。

ガイドブックと突き合わせて予習してみました。
入門書はまだ全然読めていないのですが、気になったこのタイミングでレリーフ見に行ってきます!

雨季の明け方、空が美しいです

4:20頃に家を出て、アンコールワットには5:00ちょうどに着きました。

7月に入った今日、ちょうど西洋圏の夏休みのようで家族連れが結構多かったです。環濠の外からも水に映るアンコールワットが綺麗に見えました。こんな空と環濠は初めてみました。毎回変わる表情に驚かされます。

昨日の夕方が豪雨だったので、まだ水たまりが残っています。

雨季のアンコールワット本当に好きです。雨が降る可能性もあるので賭けですが、上手くいくと、このような雨の直後のしっとり濡れた参道と、表情のある空が美しいです。

第一回廊西面、マハーバーラタ

さて、いきなりのマハーバーラタ。6:00am前に入場できました。かなり暗いので目を凝らして見ます。

圧巻です、48.5mの長さのマハーバーラタ。中央の入り口に近い方(写真手前側)が百人兄弟カウラヴァ側、写真奥の方が五人兄弟パーンダヴァ側なのだそうです。

左:カウラヴァ側(百人兄弟)

王位継承問題での18日戦争を描いています。
マハーバーラタは世界で一番長い物語なのだそうです。入門書を読むだけで3ヶ月くらいかかりそうな雰囲気です。48.5mものレリーフも、長〜い話の一場面なのでしょう。

下の写真は、敵陣カウラヴァ側にてビーシュマが千本の矢に倒れ、パーンダヴァが勝てるように自らを犠牲にしている様子です。

ちょっと引いて見ると、ものすごい密度で彫刻されているのがわかります。上部に千本の矢が刺さっているビーシュマが見えます。

中央:戦闘の場面

48.5mのレリーフの中央(18本ある柱のちょうど9本目と10本目の間)にカウラヴァパーンダヴァが激しく闘う場面があります。

とはいえ、一人一人の動きや装飾品の完成度が高く、闘うというより踊っているような印象さえ受けました。

右:パーンダヴァ側(五人兄弟)

こちら右側のパーンダヴァの楽隊です。銅鑼のようなものを鳴らしています。

まだ今のところ、読んだのは「マハーバーラタ入門」のさわりだけなので何とも言えませんが、お隣のレリーフの「ラーマーヤナ」が勧善懲悪の物語なのに比べると、マハーバーラタは両者ともグレーで人間的な弱さを持った存在なのだそうです。

それよりもこの世に最初から完全な善や完全な悪はいないと受け止めた方がより「マハーバーラタ」の核心に近いだろう。

Filmsagar | マハーバーラタ 

これは、迷いも見切りも経験したアラフィフに刺さります。引き続き読み進めて、ラーマーヤナとの比較もしてみたいと思います。

南西角のパビリオン

さて、マハーバーラタが終わると、最後に美しいデヴァターがお迎えしてくれます。奥にもいらっしゃいます。アンコールワットには、何と千体以上のデヴァターがいらっしゃるようです。

一体一体、すべて表情や動きや装飾が違うようです。

下の写真は南西角のパビリオンの下部にあった彫刻です。有名な「カイラシュ山を揺らすラーヴァナ」像や「カーマを灰にしたシヴァ」像は上部にあり、まだ暗い時間帯の中で写真に収めることができませんでした。

こちら「お母さんたちと子供たち」とガイドブックに書いてありました。微笑ましいです。

涼しいうちに帰ることにしました。アンコールワットを出たのが7:00am前です。

雨も大丈夫でした!

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