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いつか今日が、遠い昔になっても

昔の写真や映像をみると、ずいぶん遠い昔のように感じることがある。ほんの、数年前なのに。

あの頃はこんなことしてたなぁ、ってそれがきっかけで芋づる式に記憶が蘇ってくる。

まぶしかったものはさらにキラキラが増して、
苦かったことはさらにドス黒くなって、あれってなんなんだろうね? 思い出フィルターってやつ?

当時はかなり本気でキメてたはずなのにさ、
今見ると「どうしてそうなっちゃったの?」って笑っちゃうこともよくある。

いつか、今日の私を「そんな日もあったね〜」って笑う日が来るのかな。

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リハーサルで、ついにYOASOBIと会った。目の前でikuraさんが歌ってる。隣にはAyaseさん。そしてバンドメンバー。去年の年末にTVで見た人たちだ。そんな人たちが、わたしの目の前にいる。嘘みたい。

夢にもでてこなかったような現実が目の前に広がってて、一年前のわたしが見たらなんて言うだろう。あの日々があったから今があるんだよ、って言ってあげたいかも。めっちゃ上から目線だけど。

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カメラがものすごい勢いで回っていく。わたし、youtubeで見たらどんな風に映るのかな。

今日のために美容室に行ったし、靴下も新しくしたんだ。こっそりサークルレンズにしたら、リハーサル中にズレて焦った。

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YOASOBIライブの演奏が決まったときは驚きすぎてマジ泣いた。ちょうど一年前、youtubeにアップした「夜に駆ける」のカバー動画を見てくれていたらしい。再生回数がめちゃくちゃ増えてたけど、まさか本人にまで届くとは思ってなかった。ネットってすごい。これが令和か。


今回演奏する曲は「ハルカ」と「群青」。とくに群青は、聴けば聴くほど自分たちのことを歌ったみたいな曲だと思った。

しかも会場はホールとかじゃなくて、ユニクロ有明本部内にある「UNIQLO CITY TOKYO」。前回のオンラインライブもすごい場所でやってたから覚悟はしてたけど、部室かホール以外の場所で演奏とか、まじで緊張する。

そう思ってたのはわたしだけじゃなかったみたい。大会前より緊張したし、みんな超練習してた。そりゃそうだ。何万人もの前で生配信されるんだもん。生だよ、生。

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その日から、毎日「ハルカ」と「群青」を聞きまくった。
死ぬほど練習した。直前は、ごはんを食べるのも忘れて練習して、ちょっとだけ痩せた。

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ふりかえればいくつもの
思い出がよみがえってくる

こうやってみんなで練習しまくった日も、いつか思い出になっちゃうのかなぁ。先生もおじいちゃんになっちゃうんだろうか。

本番当日が近づくほど、終わらないでって思う気持ちが強くなっていった。夏はまだ始まったばかりなのに、夏休みの終わりみたいな気分だ。

情報解禁後に中学の友だちにLINEしたら「は?マジで?」って信じてもらえなかった。自分でも信じられなかったよ。何度も家族に「夢じゃないよね?」って聞いちゃった。だってあのYOASOBIだよ?すごくない??

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本物はTVで見るよりめちゃくちゃかわいいし、かっこよかった。この人たちといっしょに作品をつくるんだって実感が湧いて、ずっと心臓バクバクしてた。

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「3.2.1…」

「三原色」の曲がはじまる。

私たちのひとつの区切りが始まった。すぐ近くでプロが歌ってるんだって思ったら手が震え出した。ここ図書館? って思うようなスタジオ。カッコいいのと緊張のダブルパンチだ。やばい。

「ハルジオン」がはじまったら、鳥肌も立ちはじめた。

あの日のあなたの言葉と
美しい時間と

ikuraさんの紡ぎ出す言葉と、バンドメンバーの奏でるメロディー。迫力と、みんなの緊張が伝わってくる。オンラインでしかライブやってないけど、この臨場感。背筋がゾクゾクする。美しい時間ってこういうことを言うのかな。

「もうすこしだけ」でなぜか涙が出てきた。

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ありふれた一日も
素敵な日になっていくような
そんな気がしたんだ

高校3年。もう少しで練習も、高校生活も終わっちゃうのかなっていきなり悲しくなってきた。

「たぶん」で涙腺崩壊した。

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僕らは何回だってきっと
そう何年だってきっと
さよならに続く道を歩くんだ

そんなこと言わないでよ、さよならなんて言わないでよ。気づいたら涙がぼろぼろ流れてきた。隣の子も泣いてたけど見てないフリした。ハンカチ忘れたことにこのとき気づいたけど、もう遅かった。カメラが回ってなくて本当によかった。

「怪物」で一気に場所が変わって、オフィスへ。ステージをふだん人が働いている場所にするって発想がめちゃくちゃクールだ。

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いつかどこかで見た、海外のドラマに出てきそうなオフィス。ライトに照らされたメンバーがめちゃくちゃカッコいい。ikuraさんがクシャってした、あの紙になりたい。涙がひっこんだくらいには圧倒されてた。

僕の中の僕を超える

この歌詞でハッとした。泣いてなんかいられない、やれることをやるだけだなって気分になってきた。よし、この調子。

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「Epilogue〜アンコール〜」ここで涙は止まった。間に合った。

明日世界は終わるんだって

もし本当にそうだとしても、今なら後悔しない気がする。それくらい今日のために、2曲のために駆け抜けてきたから。きっとみんなもそうだと思う。


「夜に駆ける」で、ピリッとした空気が漂う。じわじわ近づいてきて、ついに目の前までやってきた感じ。

沈むように溶けてゆくように 染み付いた霧が晴れる

英語の授業、いつもつまらないフリして聞いてる。恥ずかしいから学校ではわざと棒読みしてるけど、本当は帰国子女みたいな発音に憧れてる。海外に行ってみたい。そんなとき、「Into The Night」に出会った。ちゃんと歌えるようになりたいと思った。なんか不思議と、霧が晴れたような気分になった。

電車では繰り返し聴いて、家ではイヤホンのボリュームを下げて発音の練習してる。全部発音しようとするとリズムに追いつかない。この塩梅がむずかしい。いつか授業で指名されたら帰国子女ばりの発音でみんなをびっくりさせてやるんだ。

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そんなことを考えてたら、ついに私たちの出番がやってきた。

大丈夫、行こう、あとは楽しむだけだ

もう大丈夫、行こう、あとは楽しむだけだ

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気がついたら演奏が終わってた。ただただ、すごく楽しかった。

ikuraさんの声が、曲全体が、心なしか力強い。
ラストの曲でそうとう疲れてるはずなのに。なぜかみんな、いちばん楽しそうでキラキラしていた。

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チラチラこちらを見て歌ってくれている。
この曲は私たちへのメッセージなのだと、はじめて気づいた。それだけ覚えてる。

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明日や10年後のわたしが今日のわたしを「ダサいな〜」って思う日が来るかもしれない。それでもいいかなって。だってきっと、今日のわたしはこれまでの人生でいちばんキラキラしてたはずだから。

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好きなものと向き合うこと
今だって怖いことだけど
もう今はあの日の透明な僕じゃない


群青の、この歌詞が一番好きだ。

かわいいものを「かわいい」って言うのは簡単だけど、好きなものを「好き」って言うのは案外むずかしい。

でも。

向き合う準備はできたし、背中を押してもらえた。本気で向き合うことは、きっと恥ずかしいことじゃない。だからもう大丈夫。つぎの三者面談で、あのことをちゃんと言うんだ。

あの日と同じ様に
それぞれの日々に帰る

今日の気持ちを忘れないように、Tシャツを買った。YOASOBIといっしょに演奏できたことは、これからの私の誇りと自信だ。ずっと、これからも、いつか今日が遠い昔になっても。


それぞれの日々に帰っても、シワシワのヨレヨレになるまで、いつでもこの気持ちを纏っていられるように。そんな願いを込めた一枚にした。

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わたしのチャプター2は、これからはじまる。


※今回はUT×YOASOBI『SING YOUR WORLD』のライブレポート企画として、「もし自分が、ハルカと群青を演奏した大阪桐蔭高校の吹奏楽部だったら」という想定(妄想)で書いたフィクションです。

チームYOASOBIのみなさま、大阪桐蔭高校のみなさま、関係者のみなさま、すてきなLIVEをありがとうございました! 


#UTYOASOBIライブ

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