担当作をめぐる、社内政治問題

1つの出版社で、1ヶ月に何冊の本が刊行されるかご存じでしょうか。

出版社の規模にもよりますが、2、3冊〜数十冊まで、さまざま。大手であればあるほど刊行点数は増えるのですが、営業で力を入れて売るものは数点。さらに、新聞広告やPRのための予算を割いてもらえるのは、売れている本だけです。

つまり、実績のない若手編集者のつくった、売れるか売れないかわからない本は、まず取り上げてもらえません。それでも取次が全国の書店へ新刊を流通させてくれるので、書店に置かれることは置かれます。

(が、営業が何のケアもしなければ、書店へ配本されても箱に入ったまま、店頭に並ばない本も当然相当数あるでしょう。)

よく著者さんから、「どこそこの書店へ行ったけれど置いていなかった」「amazonの在庫が切れている」というクレームが届きますが、売れていない本はすぐに店頭から下げられてしまうので、そのケアに時間を割けないことや、増刷しても売れる見込みがないので在庫が品薄でもそのままにしておく、ということがあります。もちろんそんなことは著者さんには口が裂けても言いません。

もちろん編集者は、どんな人でも、自分がつくった本は売れてほしいと思っています。そこで「担当作をめぐる社内政治問題」が浮上してくるわけです。

少しでも売れそうな兆候があれば、よい営業部であれば、それを見て取ってすぐに対策を打ちます。兆候があるのにそれを見送られてしまう書籍の場合、単純に営業部が見落としているのでなければ、担当編集者と営業担当者、著者と営業担当者の関係が良くないことがあります。また、代表が方針として「こういったカラーのものにのみ広告をうつ。力を入れる」と指示しているとか、編集者に実績がない場合は信頼がなく放置されることもあります。

いずれにせよ、私のように実績がない編集者が出した本で、でも自分で「売れる!」と信じているものに関しては、「どこどこのお店に置いてきてください」と言いに行ったり、ポップやパネルといった、書店における販促用の拡材をつくって渡したり、書店員さんに売り込みやすいキャッチコピーをさりげなく営業マンに伝えたりします。

編集者の仕事は、クリエイティブのように思われることも多いのですが、いい本をつくるということだけでなく、このような社内政治で大事な企画を勝たせなければなりません。

それができないと、せっかく売れる本なのにほどほどの売れに収まってしまうこともあります。

少し話が逸れてしまいましたが、本もひとつの商材である以上、ひとつの会社の中でも優遇される本と、そうではない本があります。もし作家志望の人がいたら、出版社を選ぶ場合は、出版社の得意としているジャンルを見極めた上で、誠意を持って企画を守ってくれる編集者をうまく見極めてください。

編集者志望の人は、「クリエイティブな仕事」という思い込みだけで編集職を選ぶのはやめましょう。どちらかというと、人の人の仕事の調整をすることが多いので、相手の嫌な面を見ることも多い仕事です。

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